小説箴言 8章
8章
僕(悟)は夢を見た。
俺(龍)は夢を見た。
何かが叫んでいる夢だ。
人の形をしている。
丘の上で、街の中で、家の前で、
必死に何かを叫んでいる。
僕に向かって。
俺に向かって。
「お前だ!お前に言っている!
お前に届くよう声を枯らしている!
浅はかな者よ!悟れ!
愚かな者よ!知恵を得よ!」
その必死さに、言葉とは逆に、愛のようなものを感じた。
「聞け!これは支配する者の言葉だ。
これは正しい。
真実で、偽りはない。
真っ直ぐで悪とは逆のものだ。
悟る者には当然で、見出す者にとっては良いこと。
金よりも価値があり、金銀財宝よりも役に立つ。
この知恵はどんな宝石にもまさる!
どんな喜びもこれには比べられない!」
一つ一つの言葉が、単語が、身体中に響いていく。
「聞け。
知恵とは私だ。
そこに悟りがあり、知識と焦らぬ心がある。
恐れよ。神を恐れよ。
そして悪を憎め。
高ぶりと、驕りと、悪の道、曲がった言葉を憎め。
それはどこにある。それはお前の中にあるのではないか。
わたしが導く。
わたしが判断を与える。
わたしが悟らせる。
わたしに力がある。
わたしが王たちに地を支配させる。
わたしが良い法に導く。
わたしが義、正義だ。
本当に良いこと、平等なこと、正しいこと、それはわたしにある」
体が震えていることに気づく。
怖い。力の大きさが伝わってくる。
「わたしは愛している。
それはわたしを愛する者。
わたしを熱心に探し求める者に
わたしは出会う」
この言葉に心が震えた。
大きな安堵が訪れた。
「これらを求める必要はない。
富と名声は、わたしにある!
朽ちない財宝と正しさがわたしにはある!
わたしが与える果実は黄金よりも良い。
生み出すものは精銀よりも良い。
安心しなさい。わたしは正義の道をゆく。
その真ん中をゆくから。
わたしを愛する者を満たし、豊かに与えるだろう」
長い長い夢の中、
それが自分に語られていることがはっきりとわかった。
この人は僕を愛している。
この人は俺を愛している。
この人についていきたい。
小さかったその形は、
自分の前に大きく立ちはだかっていた。
降参はもうとっくにしている。
その時、その人はにっこりと笑った気がした。
そして静かな声で話し始めた。
「この世界ができていく時に、神の隣にいたのはわたしだ。
大昔、世界の初め、谷底も水もなかったとき、
山よりも丘よりも、地よりも野よりも先に、
わたしは生まれた。
宇宙が造られていく時、そこにいた。
海の上に大空が広がった時、そこにいた。
海と陸の境目を定め、それを越えないようにし、陸の土台を定めた時、そこにいた。
わたしがこれらを組み立てたんだ。神の隣で。
神と共に働く毎日は、わたしの喜びだった。
いつもそれを楽しんでいた。
神が治めるこの地を、この世界を楽しみ、
わたしが神の形に造った人の子らを喜んでいた。
何が言いたいのか、わかるか。
世界を造ったわたしが、
わたしがお前を造ったんだ。
お前は、わたしの、大切な子ども、なんだ。
だから、今、わたしの言葉を聞けよ。
わたしがお前を幸せにする。
わたしの道を守れ。これは知恵だ。大切にしなさい」
僕は今、すごい人に出会ったんだ。
俺は今、すごい人を目の前にしているんだ。
この人の子どもなのか。
この人を父と呼べるのか。
この人が愛してくれるのか。
静かで優しい声が響いた。
「日々、わたしをじっと見つめなさい。
わたしから心を逸らさないでいなさい。
わたしの言葉を聞きなさい。
わたしがお前を幸せにするから。
それが生きるということだよ。
そこに豊かなたくさんの実が生まれていく。
それを喜べ。楽しめ。
胸を張って生きよ!」
「しかし周りに、自分自身を痛めつけるものがいるだろう。
死を愛するものがいるだろう。
お前が本当に生きるものとなった時、そのものたちを救い出せ。
その者たちはわたしに背を向けているのだ。
わたしを憎んでいるのだ。
それは悲しいことだ。
そこにお前を遣わす。
わたしは彼らも愛している」
不思議なことに、夢の中の言葉をすべて覚えていた。
同じ夢が三日続いた後、
僕はノートに書き留めた。
俺はノートに書き留めた。
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