小説 創世記 15章
15章
激動の数日間が終わった夜、
一雄の上に神の言葉が響いた。
一雄は幻を見ていた。
その声に、心は躍った。
「恐れるな。
わたしがお前の盾だ。
お前は大きなものを得る」
一雄の目の前には大きな光があった。
光に向かって叫んだ。
神との対話は初めてのことだった。
「神よ!あなたは何をくださるのですか!
この財産はなんのためにあるのですか!
わたしの子が後を継ぐのでしょうか!
それではわたしは何をしたというのでしょうか!」
神は答えた。
「あなたから生まれるものが、あなたの後を継ぐ」
続いた。
「外へ行け」
すぐに外に出た。
声が広い夜空に響いた。
「さぁ、天を見上げなさい。
そして、星を数えてみよ」
「おまえの家族はこのようになる」
一雄は、信じた。
信頼に値することはもう知っていた。
この神に我が道をゆだねることを決心し、またそうできるように求めた。
それで神は、一雄に言った。
「お前はわたしの子。
お前はわたしの、正しいものとして世に遣わされる」
一雄の目に夜空は明るかった。
また神は言った。
「わたしはこの地一帯をお前に与える。
わたしが今日ここまで、お前を導いたのだ」
言われたことを理解せぬまま、一雄は口を開いていた。
「主(しゅ)よ、我が主(あるじ)よ。
そのことを、それが実現することを、わたしにわからせてください」
すると神は言った。
「ここに3歳の雌牛と、3歳の雌やぎと、3歳の雄羊と、山鳩と、鳩のひなを持ってきなさい」
彼はその通りにして、殺し、真っ二つに切り裂き、その半分を互い合わせにした。
鳥はしなかった。
すべて神の指示に従った。
カラスが死体の上に来たが追い払った。
そのまま朝になった。
ヒメが起きてきて、血を纏う一雄と死体を見て驚いた。
それでも一雄はじっと神の答えを待った。
日が沈みかけた頃、深い眠りが一雄を襲った。
そしてその時、暗闇が近づいてくることに恐怖を感じた。
その中で神の言葉が響いた。
「後の世で、あなたの子孫と家族は、ここではないところに住むことになり、
奴隷のように苦しめられる。
しかし彼らもまた、わたしが救い導く。
苦しめるものたちを、わたしは裁く。
しかし、あなたの一生は平安で満ちる。
幸せなままで死ぬだろう。
そして4代あとでここに帰ってくる。
それはその時の裁きまで、咎が満ちることがないからである」
完全に日が沈み、辺りが暗くなった時、
石に火が灯り、動き始め、
切り裂かれた死体の間を通りすぎた。
その日、神は一雄と約束を結んだのだ。
「お前とお前の家族にわたしは、
この一帯の土地を与える。
紀ノ川から淀川までの土地、和歌山から大阪を」