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小説 詩篇 9篇

9

「心を尽くして、
 心を尽くして感謝します!
 あなたのことを語り伝えます!
 あなたを喜び、誇ります!
 いと高き方!あなたの名を誉め歌います!!」

そんな祈りと共にキャンプは終わった。
感動して感動して、そんな大胆な祈りを心からしたのだ。

そしてまた、元の生活に戻っていった。

一人の部屋に戻ると孤独が襲ってきた。
孤独は不安を呼んだ。
不安は恥を生み出した。
恥は虚しさとなった。

キャンプで燃え上がった心は、
一転、急激にしぼんでいくのを感じた。

「あぁ、助けてくれ、、、
 あの時の自分は嘘だったのか。
 あの感動はまやかしなのか。
 僕はイエス様に出会ったんじゃないのか。
 じゃあ、なんだこの虚しさは、、、」

と、その時だった。

バーン!とドアが開いて
「よー!!」と大きな声が響いた。
ビクッとなって、ベッドから跳ね起きてみると、
ジョージがニコニコしてそこに立ってて、
後ろで困ったように詩織ちゃんがいた。

なんて常識のない人なんだ。
あと品も。。。

「よし、飲もう」
と、宴会が始まった。

寂しさは吹っ飛んだ。
虚しさは喜びに、涙は笑い声に代わった。

「いや、キャンプの後って寂しいねん。
 おれ知ってんねん。みんなそうやろ?
 だからはしゃぎにきてん。その方が楽しいやん?」
最高だ。。。

神が与えた助けだと、その時わかった。

「敵は誰や。
 敵はなんや。
 敵はな、虚しさやぞ。
 おれらの心に湧き上がってくる虚しさが敵や」
そうだ。それだ。それなんだ。
そしてそれはあんたの笑い声で消し去られたんだ。

あぁ神よ。
僕の正直な訴えを、あなたは聞いてくれた。
あなたこそ、正義だ。
もう虚しかったことを思い出すことさえできないほどに、敵は消え失せたのだ。

そして、今回のキャンプの話になった。
僕は二人に、あの二日目の感動の話をした。
話しながらまた泣いてしまった。
二人も泣いてくれた。

「神の国ってよ、神の支配とも訳せるらしいねん」
唐突にジョージが語り出した。
いつも話が飛ぶけど、結局繋がってるんだよなこの人。

「いやつまりな、クリスチャンの人生は、神の支配がこの体の中に広がっていくイメージやってことやと思うねん。
 神に支配される領域、”神にゆだね力”がどんどん大きくなっていく感じ。
 それは不安から、虚しさからどんどん解放されていくってことなんやと思うねん。
 それが自由やと思うねん」
なるほど。
「それでな、なんでゆだねれるようになっていくかっていうと、
 そら内側で聖霊が働いてなんやかんやでってことなんかもしれんけど、
 それは神がいかに揺らがへん王かってこと、
 いかに正しく、公平で、弱きを助けてくれるかが、
 わかっていくからやと思うねん」
なるほど。
「正しいってのは優しいってことや。
 甘いとは違う。でも愛があるってことや。
 さばきってのは、明らかにされるってことや。
 明らかにするのは、悔い改めさせるためや」
ん、、、ギリギリなるほど。。。

「いや、言いたかったのはな、
 今、お前の中に神の国が広がっていってるんやってことよ。
 それが寂しい時、惨めな時、苦しい時の砦やねん。
 神は、誰が神なのか知っている者を、神に求める者を、
 絶対に見捨てへんから。
 神に頼れるってことはそういうことやねん。
 もう出会ってるってことやねん」
ああ、なるほど、、、!
それならわかる。今日起きた奇跡のことだ!

詩織ちゃんを二人で家まで送る道で、
やっぱり酔っ払い二人、聖歌を歌いながら肩を組んで歩いた。
「ほめよー、うたえー、我らの主にー!
 うたえー、シオンにいます主にー!
 そのー、みわざをもろもろのー、国民に宣べ伝えよー!」

『血に報いる方は、それを心に留め、
 貧しいものの叫びを忘れない』
詩織ちゃんの家のドアの前、三人でこの御言葉を読んでから祈った。
「主よ、憐れんでください。
 あなたは死から私たちを引き上げてくださる方です。
 私たちには苦しみがあります。私たちを苦しめるものがいます。
 あなたはなんと素晴らしい、偉大な、正しい方でしょう。
 あなたの救いを心底、喜びます。
 どうか、あなたが私たちを導いてください。
 あなたに私の不安のすべてをゆだねます」
その後、ジョージの不思議な祈りが続いた。
「国々は自分で作った穴に陥り、
 自分で隠した網に足を取られる。
 主はご自身を知らしめ、裁きを行われた。
 悪しき者は自分の手で作った罠にかかった」
長い沈黙。
「悪しき者は地獄に帰っていく。
 神を忘れるあらゆる国々も。
 貧しい者は決して忘れられることがなく、
 苦しむ者の望みは永遠に失せることはない。

 立ち上がれ、、、!
 主よ!
 人が勝ち誇らないようにして!!
 あなたの前で国々をさばきたまえ!!
 行かせよ、、、!
 主よ!
 恐れの中へ!!
 国々が知るように、
 人間に過ぎないことを」

祈りは終わった。

「ジョージ、最後の祈りはどういうこと?」
聞いてみた。
「んー。ようわからんけど、思いついたら祈るようにしてんねん」
ジョージは堂々としていた。

そこで別れて別々の帰路についた。

月と少ない星の下、
寂しさはなかった。
あの不思議な祈りにも意味があるんだろう。
戦争が起こるのだろうか。
それを止められたのだろうか。
しかし、震えた。
本当に世界を治める方なんだな。
少なくともジョージはそう思っているんだな。

何を祈ったか覚えていないが、祈りながら帰った。

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