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小説 創世記 16章

16章

その頃、一雄とその妻ヒメの間に子はなかった。

その頃、イブキが蘇土村の女性と結婚した。
その名を空(ソラ)と言った。
結婚式は蘇土村、吾村、河南町の三つの村が集まって、盛大に行われた。

そしてその一年後、ソラは子どもを身籠った。
そのことでヒメは心を痛めた。
神の一雄にした約束を知っていたからだ。
自分がその約束にふさわしくない者であるように感じた。
そのヒメを見て、一雄は心を痛めた。

ある日、川のほとりにソラはいた。
そこに白い衣を着た人が立っていた。

「イブキの妻、ソラ。
 あなたはどこから来て、どこへ行くのか」
その人は優しい声をしていた。

気がつくとソラはひざまづいて、
「主よ。わたしの神よ」と言っていた。

「お前たちの家族もまた、星のように多くなる。
 あなたのところに生まれる男の子を祈る人と書いてキトと名付けなさい。
 神があなたの祈りを聞き、その子の祈りを聞くという約束の印である。
 その子の一生には大きな苦しみがある。
 しかし、その家族と地は祝福される」

ソラの心は踊った。
その人が神で、神の遣いであることがわかった。

そして、神が自分を見てくださる方だと知った。

家に帰ってイブキにすべてを話した。
イブキもまた、心から喜んだ。

そして、時満ちて、男の子が生まれた。
二人は祈人(キト)と名付けた。

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