小説箴言 9章
9章
「浅はかな者よ!ここに来い!」
僕(悟)はまた夢を見た。
俺(龍)はまた夢を見た。
夢の中でその人は家を建てている。
建てあげて、石の柱を7本切り出した。
家畜から肉の料理を並べ、
ぶどう酒を注ぎ、
食卓を整えた。
そして周りにいた女性たちに何かをことづけた。
その人たちが小高い丘の上に駆け上り、この言葉を届けた。
「浅はかな者よ!ここに来い!」
僕は「行きます」と叫んだ。
俺は「行きます」と叫んだ。
食卓についた時、彼は言った。
「さぁ、わたしのパンを食べなさい。
わたしが注いだぶどう酒を飲みなさい。
捨てよ。浅はかさを。そして生きよ。
そして進め。悟る道を」
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俺(龍)は生まれ変わったような気持ちで目が覚めた。
あのパンを食べた時の感覚、
ぶどう酒を飲んだ時の感覚が、
今もまだ口の中に残っている。
自信が湧いてきた。
進め、進め、胸を張って生きよと言われている気がした。
歩く時、背筋が自然と伸びた。
自由時間で、
物陰でいじめを見た。
一人を何人かが囲んで、嘲りながら殴っている。
その一人はよく教官にも殴られているバカのタカシだ。
普段の俺なら見逃すが、
この日の俺は違った。
静かに近づいていき、
「おい」と声をかけた。
「やめとけよ。
そんなダサいことすんな」
言いながら、後悔していた。
案の定、派手に笑われた。
そして今度は俺が的になった。
戦ったが、何発かもらってしまい、
最後にはタカシと一緒にボコボコに殴られた。
「お前、調子乗んなよ。またやるからな」
自由時間が終わるころ、そう言い捨ててそいつらは去っていった。
「おい、タカシ。いたた、、、
なんでこんなことになってたんだよ。」
「んー。わからん」
「はぁ?なんだそれ?わからんと殴られてたのか?」
「ははは。あいつらの機嫌が悪いとこうなるんだよ」
「おい!ふざけんなよ!!抵抗せえよ!」
「え、、」
「いや、わかった。これからは俺と一緒におれ!離れんな!
わかったな!!お前はもう殴られんな!!」
なんでそんなことを言ったのかわからなかった。
わからぬまま叱りつけてしまった。
その日からタカシは俺についてきた。
その日の昼食の時、タカシが隣に座って、
自分のパンをちぎって俺に差し出した。
俺は泣けてしまった。
タカシの中にあの人を見たのだ。
泣いてる俺をタカシは隠してくれた。
その後の作業を終えて、また自由時間があった。
タカシには全てを話した。
自分の犯した罪の話、夢の話、さっきの涙のわけ。
元ヤクザ牧師の話と今読んでる聖書の話もした。
タカシはよく頷いていた。
「俺とお前は上下関係じゃないぞ。
お前がパンを渡してくれた時からもう友達だ。わかったな」
タカシは嬉しそうに頷いた。
夜寝る前に少し怖くなった。
あの人は本当に俺を見ているんだな。
タカシの中にもいて、俺の中にもいる。
どんだけすげえんだ。。。
あのパンを実際に掴んだ時の確かさは、
知恵であるというあの人がいるという確かさだった。
あの時、これがあの人だと、瞬時に理解することができた。
それも怖かった。
夢の中でまたあの人が語った。
大きく響く声だ。
「お前はわたしによって長く生かされる。
お前の得た知恵はお前のための知恵だ。
嘲るなら、お前が苦しむことになる」
その後には騒がしい女が出てきた。
わめき散らし、浅はかで、何も知らない女。
彼女は自分の家の前に座り、
道ゆく人々に呼びかけて言う。
「浅はかな者よ。ここに来てください」
そして彼女の家に入っていく男に囁いた。
「盗んだ水は甘く、ひそかに食べるパンは美味しいのよ」
その家の中には深い闇が見え、
苦しむ男の声が聞こえた。
起き上がった時、大量の汗をかいていた。
そして俺は、神に祈りはじめた。
(参考:「箴言の第九章について」)