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中小企業で提案を通すコツ

僕は家業の中小メーカーに入社後、社員の提案が経営陣に届かない場面を、何度もみてきました。

検討が不十分だったり、意図が正しく伝わらなかったりと、理由はさまざまです。

一方で、僕は入社してから、比較的多くの提案を受け入れてもらっています

もちろん、後継者という立場上のアドバンテージはあります。しかし、一番の要因は、3つの異なる業界(金融・IT・製造業)で培った経験やノウハウだと感じています。

そこで今回は、「中小企業で提案を通すコツ」をまとめてみました。


提案書を作成する

まず僕は、投資金額の大小に関わらず、提案書を作成します。承認者の意思決定に必要な論点を明確にするためです。

家業に入って驚いたことの1つは、社員が見積書片手に口頭説明のみで投資予算(数千万円単位)の承認を得ようとしていたことです。当時はそれが当たり前でした。

だから、初めて提案書を出したときは、それだけで一目置かれました。

もちろんなかには、作成する手間を理由に嫌がる人もいます。「余計に時間がかかる」と。

しかし、提案書によって、説明や質疑応答などのコミュニケーションコストは確実に減ります。結果、口頭でやり取りするよりも、承認までの時間を短縮できると考えています。

提案書作成のポイントについて、もう少し掘り下げてみます。

構成要素

作成にあたり、抑えるべき構成要素は6つです。

ポイントは①→⑥の順に検討すること。解決策やコスト(予算)を先に考えると、目的から逸れた提案になりやすいです。

① 現状の問題点
② 目的
③ 解決策
④ 得られるメリット(新たに生まれるデメリット)
⑤ コスト
⑥ スケジュール

書き方

書き方のポイントは3つです。承認者と提案者の間には、情報格差があることを前提に書くよう心がけています。

①特定の人しかわからない専門用語はなるべく使わない
②相手が聞きたいことを簡潔にまとめる
③数字や実績などのファクトを盛り込む

使用するツール

作成ツールはWordです。表やグラフの作成でExcelも活用します。

社内向けの提案書に、過剰なデザインは必要ありません。最低限の体裁が整っていれば問題ないと思っています。

事前にキーマンの合意を得る

提案書完成後は、いきなり会議には出さず、事前にキーマンの合意を得るよう動きます。要するに根回しです(笑)

特に、「何を言ったか」より「誰が言ったか」が優先される会社は大事だと思っています。

正直、時間はかかるし、めんどくさいです。しかし、この手間ひまをかけることで、承認される確率は大きく上がります。

ポイントは提案するのではなく、相談すること。キーマンが気にしている点を探り、フィードバックを取り入れることで、会議での意見の対立を避けます。

提案者が実行主体を担う

提案する際は、自分が実行主体を担うことを約束します。

弊社のような中小企業の場合、人員に余裕がある部署はほとんどありません。このため、提案者と実行者が異なる提案は強い抵抗を受けます。 

思っている以上に、「誰がやるか」は重要なんです。

自分を例に挙げると、新工場建設プロジェクトでは完成後に常駐することを約束し、提案制度のリニューアル時は事務局を担当することを申し出ました。

提案内容が軌道に乗るまでは、最前線で取り組むほうがいいと思っています。

小さく始める

承認者にとって一番の心配ごとは、「この投資をして、本当に効果はあるのか?」ということです。特に、中小企業は予算も限られるため、確実なものにしか投資できません。

なので、可能な限り、小さく始めて実績をつくることを意識しています。
 
例えば、ITツールの導入提案は、無料トライアルを必要最小人数で利用し、提案前に効果検証を必ず行います。もし事前に明確な効果がわかれば、承認される確率は大幅に上がります。

提案前に効果検証できないものも、小さく始めることに変わりはありません。対象範囲を限定する、検証期間を短くするなどの工夫を行い、提案が承認されやすい形をつくります。

宿題は迅速に対応する

上述の取り組みをすべて行い、万全の準備を持って会議に臨んでも、提案が即決されないことはよくあります

そのときは無理に粘らず、会議で出た宿題を迅速に対応することに切り替えます

承認者は日々多岐にわたる意思決定を行うため、提案の詳細をいつまでも覚えていません。宿題への対応が遅くなると、またいちから説明を求められたり、最悪の場合、検討が取りやめになる可能性もあります。

少なくとも、「宿題が出る=提案を進める気持ちはある」ということなので、熱が冷めないうちに対応することが大事です。

最後に

というわけで、提案を通すコツについてまとめてみました。

色々書きましたが、提案を通すためにいちばん必要なのは、提案者自身の強い意志だと思います。何度も何度も検討を重ね、「絶対に通したい!」という気持ちになっているかどうか、これは非常に大切です。

新しく何かを始める際は、モノやお金だけでなく、多くの人が動きます。「通るといいなぁ」と思う程度なら、間違いなくやらないほうがいい

強い意志とやる意味(論理)がセットになることで、納得感の高い提案につながるのではないでしょうか。

個人的な経験をもとにしたノウハウを共有しましたが、少しでもお役に立てたなら幸いです。

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