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提案制度で費用対効果より大事なもの

弊社では、改善活動の促進に向けて、2020年12月に提案制度をリニューアルしました。他社事例を参考に、提出用紙から結果のフィードバックまで、あらゆる内容を見直しました。

そこから1年。提案件数は大幅に増えました

なかでも、採否問わず提案1件につき褒賞金を支給する新ルールは好評です。少額のインセンティブでも、モチベーションアップになることがわかりました。

一方で、このような取り組みを始めると、必ず費用対効果が話題にあがります。要するに、「褒賞金の支給額に見合うだけの収益効果はあったのか」ということです。

で、結論から話すと、費用対効果は恐らく見合っていません

褒賞金の平均支給額は提案1件につき約2,000円です。平均すると、大したことのない金額に見えるかもしれません。ただ、このなかには不採用提案も数多く含まれています。

また提案の多くは、日々のちょっとした工夫です。収益効果の大きな提案はめったにありません。

しかし、誤解を恐れず言うと、費用対効果はそこまで重要視していません。大きければなおよしの考えです。

というのも、提案制度で大事なことは、費用対効果より「承認・称賛し合う文化をつくること」と考えているからです。

前職時代の経験

こんな考えを持つようになったのは、前職時代の経験が影響しています。

僕は新卒で金融機関に4年間勤めた後、前職のITベンチャー企業に転職しました。

1社目の金融機関は、明確な役割分担と仕組みのなかで、成果だけを求められる世界。一方で、転職先のITベンチャーは、一人二役三役が当たり前で、仕組みもゼロから作らなければならない世界。転職直後は求められる役割の違いに驚きました。

しかし、1番驚いたことは「文化の違い」でした。

というのも、ITベンチャーでは、

自分の考えを伝えると、「それいい!」「ありがとう!」
案件が進捗するたびに、「おめでとう!」「さすが!」
挑戦が失敗しても、「ナイスチャレンジ!」「どんまい!」

といった感じで、成果だけではなく、「行動」を承認・称賛し合う文化が日常的にありました。

経験したことがないポジティブな言葉の連続に、最初は戸惑いました。けど、自分も人間です。褒められ、認められると期待に応えたくなります。時間の経過と共に、主体性はどんどん高まりました

主体性が高まったことで、インプットも格段に増えました。漫画しか読まなかった自分が、業務時間外にビジネス書を読み漁る毎日。徐々に成果も出始めました。

”仕事が楽しくてしかたない”

入社半年で仕事に対する価値観と姿勢が180度変わりました。とにかくチャンスがあれば手を挙げる。職能はどんどん広がりました。

最終的には年商10億円規模の事業責任者をつとめました。限られた期間でしたが、経営の一端を担えた経験は現職で大いに役立っています。

在籍していた7年間は、噓偽りなく「仕事の報酬は仕事」と思えた時間でした。

提案制度は「承認・称賛し合う文化」の第一歩

この経験があったからこそ、僕は家業でも承認・称賛し合う文化をつくりたいと強く願っています。

家業はオーナー経営によくあるトップダウン型の組織です。このため、入社当初より承認・称賛の少なさが気になっていました。

この雰囲気を変えるきっかけを探していたところ、形骸化していた提案制度を発見。チャンスを逃すまいと、提案制度の見直し時は承認・称賛の仕組化に取り組みました。

具体的には褒賞金の支給以外に、

・小さな提案を承認するための「提案ハードル引き下げ」
・提案に対する承認・称賛を早くするための「審査回数増加」
・頑張った人をしっかり称賛するための「表彰方法変更」

などを実施。

会社の雰囲気がいきなり変わることは無理でも、変わるきっかけになれば。当時はそんな想いでした。

そこから1年が経ちました。

正直、承認・称賛し合う文化の実現にはまだ程遠いです。やはり一筋縄ではいきません。

ただ、提案制度によって、一歩ずつ着実に前進しています。

例えば、提案制度を通じて、これまで知らなかった各部署・各個人の頑張りが見える化されてきました。今では表彰をモチベーションに、毎月必ず提案を出す従業員もいます。

他にも、提案制度をきっかけに、部署横断のチームで業務改善に取り組むケースが増えました。共通の問題意識を持った従業員同士が集まり、それぞれの視点で意見を出し合う。そんなサイクルが徐々に生まれています。

自分の仕事は「環境をつくること」

最後に、愛読書「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」の一節を紹介させてください。

 マネージャーはどうやって部下にやる気を起こさせるか。一般的に、このことばには、何かを他人にさせるというような含みがある。だが、私にはそういうことができるとは思えない。モチベーションなるものは人間の内部から発するものだからである。したがって、マネージャーにできることは、もともと動機づけのある人が活躍できる環境をつくることだけとなる。

僕は経営者の1人として、環境をつくることしかできません。ただ言い換えると、環境をつくることが何よりも求められていることだと思っています。

2021年の流れを止めず、2022年も承認・称賛し合う文化づくりに取り組んでいきます。

(最後までご覧いただき、ありがとうございました!)

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