「ほぐしばい~実話怪談編~」のつくりかた
みなさんこんにちは!俳優の辻村優子です。とはいっても俳優だけじゃ食べていけないのでリラクゼーションチェーン店でセラピストとしてアルバイトをしています。その中で得た「もみほぐしと演技ってなんか似てる」という直感から、演技ともみほぐしの相互関係について探求を始め、気づけばかれこれ4年目。
最初は、施術のセオリーとセリフ劇の演技のセオリーにはどんな共通点があるかを言語化、レクチャーの後にお客さんに実際施術を受けていただく「パフォーマンスもまれ処」を松井周の標本室で発表(2021年)
その後、同じような形式ではありつつ、今度は料金は一律1000円で、施術分数をお客さんが10~40分の間で選ぶことができる「乗る場のもまれ処」を円盤に乗る場活動報告会で発表(2022年)
そして今年の2月~3月にかけて、リラクゼーションサロンの形態をとった上演作品「サロン乗る場」を展開しました。noteにその創作プロセスを公開していますので、読んでいただけたらうれしいです!
そろそろもまずに演ろうよ。
そう、内心ずっと思ってました。私、いつまで揉んでるんだろうって。
早く(見た目に)演技っぽいことしないといけないんじゃないのか。
そもそも「パフォーマンスもまれ処」から一貫してきたのは、傍目にはもみほぐしに見えますが、これは演技です。という強弁。
いや、自分にとっては強弁でもないんですが。
しかし私自身が本当に目指しているのはセラピストとしての手技の完成度ではなくあくまで俳優としてそれをせりふ劇の演技に還元する事。
探究を続ける中でうっかり言葉になってしまった「見ているだけで体がほぐれる演技ができる俳優になりたい」という新たな人生の目標。
見ているだけでほぐれる演技を「ほぐしばい」と勝手に呼ぶことにし、今度はその「ほぐしばい」の実践に手を伸ばしていこう!と勇気を出しました。
なにせ、「ほぐしばい」なんてまだ誰も見たことないわけです。
自分も見たことないものを、感じたことを頼りに手繰り寄せていくしかない!勇気!
こんな順番で組み立ててみた
わたし、やっぱりせりふが喋りたい。そこに向かう演技と思うとやはり上演テキストの存在は欠かせない。しかし、私は一体何を発話すべきなのか。
できれば体にクるテキストがいい。
そう考えたときに思いついたのが「実話怪談」でした。
さかのぼる事約一年前の円盤に乗る場活動報告会でのこと。会社員で文筆家の柿内正午さんが実話怪談のトークイベントをされていたのを拝見しました。おぐセンターの二階で開催されたこのイベントにはゲストに実話怪談作家の高田公太さんと蛙坂須美さんがいらっしゃいました。その際、髙田さんのご著書である「煙鳥怪奇録」から「あの日 三題」という短編を髙田さんが音読なさったのです。会場にhumnusの上演のために福島の景色の写真が貼られていた事も手伝ってか、その時間なんとも言えず空間がワっと広がって懐かしいのとゾッとするのと、文章に閉じ込められていた音やにおいが立ち現れたように感じたのでした。その時のゾッとする、でも気持ちいい、という体感は初めての体験でした。
そもそもゾッとするって感情というより体感と言った方が近い。
…怪談、いいんじゃないか?体にクるジャンルなのでは?
そんな風に考え始めた私は、さっそく柿内さんにご相談を持ち掛けたのでした。
誰に、どんなことを?
柿内さんとお話をする内に、辻村が乗る場メンバーに取材をしたエピソードを柿内さんに上演テキストに仕上げていただく方向に。
ここからわたしは乗る場メンバーに会うたび会うたびエピソードを取材しようとする、エピソード乞食になり、メンバーの協力と柿内さんの信じられないスピード感で上演テキストは立ち上がりました。
で、いよいよ上演の稽古です。
まだ誰も見たことのない「ほぐしばい」なるものを立ち上げるのに、自分ではなく演出協力という形で複数の人に関わっていただけないか。
それも、それぞれ言葉と体の事に取り組みながらも、違う立場の方々に。
今回は、
俳優の浅倉洋介さん
歌手の田上碧さん
散策者の主宰であり演出家の中尾幸志郎さん
短歌を詠むダンサーの涌田悠さん
の四名にお声がけして一緒に作ってもらう事にしました。
稽古はオンラインミーティングを含めた3回ずつ。計12回の稽古で私はほぐしばいを立ち上げきれるのか。
これを書いている現在もザワついています。
「ほぐしばい~実話怪談編~」が見られるのはNEO表現まつり!
とは言っても、心強い上演テキストと演出協力!クレジットの豪華さでもう大手柄という気分です。
詳細とチケットはこちらのリンクから!
【ほぐしばい〜実話怪談編〜】
★同じ回には散策者の『西尾久を散策した』がご覧いただけます。NEO表現のおまつり、ぜひこの機会に色んなNEO表現と出会っていただけたら!
■6/23 13:00〜
■6/25 13:00〜
■6/25 18:00〜
@おぐセンター2階
チケット¥3,000
こちらが最後の通し稽古のランタイム!
ほぐしばいは30分『西尾久を散策した』は52分だそうです!
さて、今回も前回の「サロン乗る場」同様、創作プロセスをnoteでレポートしていきます。本番間近ではありますが、こつこつと。
みなさんとのやりとりを通して行ってきた、演技でほぐすとは?という問いへのチャレンジ。
まずはぜひ、6/23から始まるNEO表現まつりに足をお運びいただけたら!