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ドイツで撮った4530枚の写真から40枚を選びました。
10月18日から10月20日まで、はじめてドイツのフランクフルトブックフェアに参加しました。世界最大のブックフェアで、今年は「130カ国から10万5000人のトレードビジター、11万人のプライベートビジターが集まった」そうです(yahoo!ニュース「フランクフルト・ブックフェア2023レポート」より)。ぼくの所属する部署からドイツへ行ける枠はひとり。「行きたいです」と手を挙げて、運よく行かせていただけることになりました。
ブックフェアが終わったあと、ぼくはそのまま1週間の休みをもらってドイツを旅行することにしました。10年ぶりのドイツ。写真をはじめてから、はじめて行く海外。とにかく写真をたくさん撮ろうと決めていました。
11月15日に発売する幡野広志さんの新刊『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』の中に「3%の偶然」という章があります。そこで幡野さんはたくさん写真を撮ることの大切さを説明しています。たとえば使い捨てカメラ「写ルンです」で36枚撮りフィルムを1本撮れば、どんなに写真が苦手な人でも1枚はいい写真があるそうなんです。1/36で、約3%。だから「3%の偶然」ということです。そして、多くの人は写真を撮る枚数が圧倒的に少ないのだそうです。
写真がダメな人って決定的に撮る枚数が少ない。
— 幡野 広志 (@hatanohiroshi) November 6, 2023
「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」なんて言葉があるけど、鉄砲を撃ってた身からすると、当たらないとたのしくないです。鉄砲も写真も。
たのしくなったらあとは勝手に上達していく。https://t.co/SD0aQC6JPE
11月15日発売。予約受付中。 pic.twitter.com/CsQ4EdeJ8I
写真がどんなにダメな人でも30枚撮れば1枚はいい感じの写真が出るのに、苦手意識から20枚……10枚と撮る枚数がどんどん減っていく。打率が低いのにバットを振る回数まで減らせばヒットが出るわけないでしょう。1枚撮って終わりみたいなことをしててもヒットは出ません。ヒットが出ないから写真がおもしろくなりません。だから決定的な原因は撮る枚数が少ないこと。
(中略)
写真は玉子焼きと一緒だ。誰だってはじめて玉子焼きを作ったときは失敗するんだけど、次に作るときはちょっと上手になる。はじめての玉子焼きと101回目の玉子焼きの出来上がりは違う。
ということで、ドイツではたくさん写真を撮りました。家でデータの整理をしつつ、撮った写真の枚数を数えたら、ドイツ滞在中に4530枚の写真を撮っていました。ぼくとしてはたくさん撮ったと言える枚数です。この中から40枚の写真を選んでnoteに載せることにしました。(この作業がいろんな意味でたいへんで、気づいたこともありました。このセレクト作業については後日noteにまとめます。)写真は撮った順番に載せました。
10月17日(火)、朝5時20分にフランフルト空港に到着しました。直行便(5回目のドイツにしてはじめて!)だったので、フライト時間は体感としてはあっという間。時差ぼけもなく元気です。この日は出版社っぽいことをしようと、同僚2人といっしょにマインツのグーテンベルク博物館へ。「グーテンベルク42行聖書」という150部だけ刷られて、現存するのは49部しかない聖書のうちの2部がこの博物館にありました(ぼくの英語理解が間違っていなければ)。慶應の図書館にも1部あるとゼミの先生が言っていたことを思い出しました。
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ブックフェアには世界中からほんとうにたくさんの出版関係者が参加していました。そこで外国の本の出版の権利を売ったり買ったりします(実際はミーティングで直接会って様子を聞いて、資料をもらって検討。自国に戻って判断、という感じです)。出版は元気がないなんて言うけれど、この様子を見ると本にはなんてすごいパワーがあるんだろう、と思います。規模は違いますが、神保町ブックフェスティバルや文学フリマでも同じようなことを感じた方も少なくないはずです。本ってすごいよ。
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海外ではじめて写真を撮ってみて感じたのは、人にカメラを向けやすいということです。日本では躊躇するようなタイミングや距離でもさささっと写真を撮れました。幡野さんはよく「写真を撮るのが恥ずかしいと思う人は、渋谷のスクランブル交差点にいる外国人のように写真を撮るといい」と言います。まさにぼくは外国人。恥ずかしさはぜんぜんない。海外にいる高揚感もあいまって、どんどん写真を撮れました。一方で、こうして人にカメラを向ける抵抗感がなくなっているぼくの、被写体への敬意について考える機会にもなりました。
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フランクフルトブックフェアが終わってから、ひとりでストラスブールに行きました。2010年の冬、会社に入る前に行ったトミー・ウンゲラーの博物館にまた行きたかったからです。ショップは小さいのですがめちゃくちゃかっこいいTシャツがありました。よっしゃと思ってレジにもっていったらキャミソールでした。企画展でやっていたAnna Heifischさんという方の展示もめちゃくちゃかっこよかった。ファンになりました。美術館では間違ってフランス語版の著作を買ってしまったので、ベルリンの本屋でドイツ語版を買い直しました。
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妻と合流して、フランクフルトからベルリンへ。日曜日はちょうど蚤の市が開かれる日です。前からほしかった西ドイツの花瓶と、幡野さんにお願いされていたものを買えたらいいなと思いながら向かいます。けっきょく幡野さんへのお土産は見つからず。ぼくがほしかった花瓶はばっちり買えました(ここで2つ、フランクフルトで2つ買いました)。
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晴れたり曇ったりの一日で、曇りのときに撮った写真はモノクロで現像しました。「いい写真は誰でも撮れる」のワークショップでも、幡野さんはたまに曇りの日に撮った写真のモノクロ現像を見せてくれます。幡野さんがよく言う「逃げのモノクロ」というやつですね(笑)。ぼくはモノクロ写真が好きかもしれない。経験値をどんどん増やして、もっと現像がうまくなりたいです。
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ベルリンの次は南へ向かってデッサウへ。デッサウにはバウハウスの本校舎と博物館があります。バウハウスのことはぜんぜん詳しくありません。でもベルリンとワイマールのバウハウス博物館に行ったことがあって、うっすらと知っていて、ばくぜんと好きでした。今回は本校舎のキャンパス内にあるゲストハウスに泊まるというのをやってみました。ゲストハウスはザ・ドイツの学生寮という趣。たのしい体験でした。
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デッサウからさらに南に向かって、ぼくが1年間留学していたハレへ。マルチン・ルター大学というところに通っていました。ヘンデルの出身地で、町の中心にヘンデル像が建っています。ハチ公前みたいにヘンデル前が待ち合わせの定番です。あんまり使いたくないけど、エモいとしか言いようがない。もう来ることはないだろうと思っていたのでなおさらです。
感謝してもしきれない友達のこと。フットサルでぼくにぜんぜんパスが回ってこなかったこと。飲み屋で机を倒してビール瓶を割ってめちゃくちゃ恥ずかしかったこと。当時のいろんなことがどんどん思い出されました。
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旅行の最後はハレから西へ電車で4時間半、エッセンへ。ツェルフォライン炭鉱業遺跡群にいちど行ってみたかったんです。見どころは3か所あるそうですが、時間がなくてその中の1か所だけしか見られませんでした。それでも「工場感」はしっかり感じられて、建物の外も中もめちゃくちゃかっこいい。電灯は最小限で日光だけの場所が多かったので、きれいな光で写真が撮れました。
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エッセンで1泊してから、フランクフルトへ戻ります。最終日です。今回の旅行の移動はすべて電車。距離としては決して効率はよくなかったけど、行きたいところへ行けて、やりたいことをやれました。
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ぼくのさびつきまくっていたドイツ語も、レストランやお土産屋さん、ホテルのレセプション、駅の窓口、切符チェックの人などにはぎりぎりセーフで通用しました。ちょっとしゃべれるだけでも相手の対応がやわらかくなったりしますよね。外国語の楽しさもあらためて思い出しました。
今回のドイツ旅行は飲み会で話せるような失敗も事件もありませんでした。フランクフルトの売店でおつりを1ユーロ、場内市場のソーセージ屋でおつりを50セント、それぞれちょろまかされたことは地味に腹が立ちましたけど。無難と言えばそうですが、それでも充実した旅行になりました。来年も行けるだろうか。
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