信頼する人からのほめ言葉ほど勇気になるものはない。
これは先日の幡野広志さんのツイートです。
幡野さんは息子さんに限らず、よく人をほめます。
たとえば今年1月から実施していて、ぼくもすこしお手伝いしている写真のワークショップ「いい写真は誰でも撮れる」でも、参加者の方々の写真を見ながら「写真うまいですね」とか「いい写真ですね」と、けっこうほめる。
ほめられた人は、なんともうれしそうです。写真を教えてもらう人に(というか写真家・幡野広志に)写真をほめられるのですから、そりゃうれしいですよね。その人にとって、幡野さんの一言がどれだけ心強いか。どれだけ心の支えになるか。
『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』には幡野さんと古賀史健さんの対談が収録されています。その対談の様子は幡野さんのワークショップやラジオ「#写真家のひとりごと」のお手伝いをしているナイスガイ、狩野智彦さんに撮影していただきました。
対談が終わった後、「今日の撮り方なかなかよかったよ」と幡野さんは狩野さんにさらっと声をかけていました。幡野さんが何事もないかのようにかけたこの一言にも、狩野さんはずしずしっと勇気をもらったと思います。(この対談の写真、めちゃくちゃかっこいいし、しぜんな表情が撮れているので、ぜひ『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』対談ページを見てみていただけるとうれしいです)
ぼくもそんな声をかけていただいたことがあります。これがめちゃくちゃうれしいんですね。まじでうれしい。うれしいから、どの写真を、どんな風にほめられたかずっと覚えてる。
ほめられたら、またそういう写真を撮ってみようと思います。写真を撮りたい気持ちが高まるし、写真を撮る枚数も増えていきます。
これはうれしかった。このときも、またこういう写真を撮ってみようと思って撮ります。いろんな角度から、何枚も撮ってみます。
写真のワークショップ中に、幡野さんがぼくのパソコンをのぞき込んで「こういう写真いいですよね」と言ってくださってから、会社のエレベーターで写真を撮るのがほぼ日課になっています。
信頼している人からのポジティブな一言はとても勇気になります。こうしてぼくはどんどん写真が好きになっています。
過去をふりかえっても、ぼくがなにかに熱中するきっかけは「ほめられること」「認められること」だったように思います。
小学校4年生で少年野球チームに入りました。そこでコーチにバントをほめられました。バントをほめられるってめちゃくちゃ地味ですけど、ぼくはすごくうれしかった。ほめられたら、自分がうまいんだと思い込む。それが自信になってもっともっとのめりこむ。中学校でも高校でも、ぼくはあんまり打てるバッターじゃなかったので、バントが得意なことがちょっとした心の支えになっていました。送りバントもセーフティバントもチームでいちばん決めてた。これがぼくのできることだ、という自覚がありました。(でも高3のとき、失敗しちゃダメだと思いすぎて、「バントが得意」ということが呪いのようになったこともありましたが笑)
会社に入ってから、先輩に誘われて10キロのマラソン大会に出ました。高校の部活以外で10キロも走ったのはこのときがはじめて。走り終わったあと、フルマラソンをやっている先輩に「辻くんならもっと走れるよ」と言われて、週末に15キロ走るようになりました。その先輩に「15キロ走りましたよ」と話したら、「15キロそのペースなら20キロ余裕じゃん!」と言われてからは20キロ走るようになりました。(調子にのって走りつづけていたら、いちど膝を壊しました笑。いまはちょっとサボっています)
仕事で「辻、営業向いてるよ」と言われてその気になったこともあるし、「辻さん企画のセンスある」と言われたらやっぱり編集が天職だ! なんて思う。なんと単純なヤツでしょうか。でもほめられることが確実に生活の、仕事の、エネルギーになっていました。
人はみんなほめてほしいはずです。趣味でも仕事でも勉強でも、ほめられたらそのことが好きになったり、もっとのめりこんだりする。インタビューでもお答えになっていますが、幡野さんはその「ほめる効能」をわかっていて、自覚的にほめていらっしゃるのだと思います。
ダ・ヴィンチwebのインタビューでも幡野さんは「ほめる効能」について話していました。
まさにこういうことが幡野さんのまわりでは起きているように思います。さらに、インタビューは続きます。
こういう考え方で、子どもとも、同僚や後輩社員・部下とも、コミュニケーションをとっていく。そうしてそれぞれの自己肯定感が高い状態を連鎖させていくことが大事なのだなあと、このインタビューをあらためて読みながら、このnoteを書きながら、しみじみ思いました。(正直、ぼくも耳が痛い……)
2年前に、イラストレーターのわかるさんと『疲れたあなたをほめる本』という本を作りました。
この本はかなり日常的なレベルでの「ほめる」をあつかった本ですが、読み返してみて、「ほめるとか、ほめられるってまじで重要だよなあ」と家の本棚の前でひとりつぶやいてしまいました。
ぼくが一般書の編集になってはじめてつくった本です。わかるさんのイラストがすごくかわいい。佐藤亜沙美さんのデザインもやっぱりいい。カバーも本文もピンクがめちゃくちゃ効いてる。読んでて元気になる。しかもAmazonレビュー85件で★4.5ってけっこうすばらしいじゃん!!!
ここぞとばかりに自画自賛。でもこれが大事。
いまのめり込んでいる写真も、自分で自分をほめながら、幡野さんからもらった言葉をエネルギーにしながら続けていきます。
(わかるさんとぼくの対談です。よろしければお読みください)
【お知らせ】
★幡野広志さんのエッセイ『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』が8月23日に出ました!
家族のこと、病気のこと、写真のこと、旅行のこと……1枚の写真とともに綴る、日常に寄り添った51のエッセイ。古賀史健さんとのロング対談も収録。
★幡野広志さんの新刊『うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真』が11月に出ます。
幡野さんが「できれば触れたくなかった」という、はじめて写真について書いた本。大好評のワークショップをベースに幡野広志さんが渾身の書き下ろし。詳細は追ってご報告いたします。
★幡野さんのワークショップはまだまだ続いています。
and recipe のHP(https://andrecipe.tokyo/store/5256/)や幡野広志さんのTwitterをチェックしてみてください。順次開催される予定です。心からおすすめです!