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似ているけどちょっと違うマーケティングキーワードについて考える(全3回):第2回 「マーケティング」と「ダイレクトマーケティング」

当協会は文字通り「通販のエキスパート」を目指す方々に向けた資格「通販エキスパート検定」を実施しています。

前回は「顧客起点」と「顧客中心」の違いについてお話しました。今回取り上げるのは「マーケティング」と「ダイレクトマーケティング」です。

1)「売れる仕組み」を作るという共通点
かつて、ドラッガーは「マーケティングとはセリング(売込み)を不要にすること」と言いましたが、よくマーケティングで「○○の仕掛け人」などいう言い方をするのは、商品やブランドへの知名度、共感度を上げ、買いたい気持ちにさせる=売込みなしに売れる仕組みを作る、という発想があるからです。この点で、一般的なマーケティングと、ダイレクトマーケティングとで違いは有りません。

しかし、下記の点でマーケティングとダイレクトマーケティングとは大きく異なります。

2)不特定多数が対象か、特定多数が対象か、という大きな違い
例えば、「LTV:(顧客)生涯価値」というマーケティングキーワードがあります。ごくシンプルに言えば、「ある顧客から企業が受け取る価値=利益の総額」を差します。たくさん買ってくれればくれるほど、お付き合いが長く続けば続くほど、LTVは増えて行きます。たくさん買う=アップセル、クロスセルで、お付き合いが長い=CRM、という風にも分解できます。

ここで、ダイレクトマーケティングでは個人単位で取引履歴がデータ化されているので、LTVを個人単位で実際に計算できます。つまり、ダイレクトマーケティングは特定多数の顧客の収益管理が行えるのです。新規顧客獲得費用の目安は平均的なLTVとの比較で決定できますし、既存顧客の維持育成施策に投じる費用は、LTVがどれだけその施策で向上したのかで評価できます。

一方、一般的なマーケティングは中間流通を利用していたり、顧客登録を必ずしも前提にしていないことが多いので、不特定多数の顧客が対象となり、それぞれの顧客の収益管理をすることが困難です。この場合の収益管理はブランドや商品単位であったり、店舗単位になります。結果としてLTVは「管理指標」ではなく(計算できないので)「コンセプト:考え方、基本方針」としての位置づけになります。

また、商品やサービスを設計する際、「ペルソナ」がよく用いられますが、ダイレクトマーケティングではより現実の購買行動に即した設定が可能です。顧客が特定できているので、購買特性、収益性はデータから分析でき、ライフスタイルや価値観などの情報はアンケートやインタビューなどで収集できます。これらを組み合わせると、多面的な顧客像が浮かび上がって来ます。

結果として、不特定多数を相手とする一般のマーケティングでは、マーケターの評価として、顧客インサイトを捉える感性や、時代を先読みするカンのような「アーティスティックな資質」を元に、いかにヒット商品を生み出したかが焦点になりやすく、ダイレクトマーケティングでは、再現性の高い「データに基づく科学的なアプローチ」によって、いかに分厚い顧客基盤を形成したか=顧客のLTV合計額を増やしたか、が焦点となります。

3)デジタルマーケティングの浸透で進む両者の統合
ダイレクトマーケティングの典型は通販やEC企業で、大手メーカーや大手店舗小売に比べると一般的に規模も小さく、花形マーケターのような目立ち方をする人もごく少数でしたが、スマホをキーにしたデジタルマーケティングの浸透で、近年はマーケティング全体がダイレクト化していっており、ダイレクトマーケティングの手法に長けた人物がメディアで取り上げられるのを見かける機会も増えてきました。

また、大手企業のDXの一つのゴールがD2Cになることも増えています。D2CのDは文字通り「ダイレクト」です。BtoBの世界では、営業部隊という機能が別途あるので、マーケティング部門の役割は「良質な見込み客をいかに営業部隊に送るか」ということになりがちです。しかし、BtoBの先にC(消費者)がいるBtoBtoCの場合(食品メーカーをイメージすると良いでしょう)、上流のBの企業が最終顧客のCと直接コミュニケーション=D2Cを行うことで、商品開発に役立つ知見、インサイトをより多く得、ファンを増やしていくといった事例がどんどん増えていくことでしょう。

そして今後は、中堅、中小企業のダイレクトマーケティングのフィールドで活躍した経験のある人材が、従来マスマーケティングを中心に行ってきた大手企業のD2C部門に転職してキャリアアップしていく、ということも珍しくなくなるのではないでしょうか。

当協会のようなダイレクトマーケティング業界の立ち位置から見ると、面白い世の中になってきたと思います。

それでは、次回3回目に取り上げるキーワードは「通販EC」と「D2C」です。




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