索引のようなもの-濡羽色の小夜篇-
この『物語の欠片-濡羽色の小夜篇-』はカリンとレンを主人公にした、十五番目の物語である。
『鳥の歌篇』以外の私の物語のタイトルには二つ法則がある。
ひとつは多くの方の気がついておられる『⚪︎⚪︎色の〜』という形で色が使われていること。さらに言うとポハク=金あるいは黄、ワイ=水色あるいは青、アヒ=赤あるいはオレンジ、アグィーラ=白や黒などモノトーンに近い色、を、メインの舞台によって採用している。そして間に挟まるアンソロジーは、マカニのイメージで、空色(ワイと少しかぶる)〜緑の辺りで選んでいる。
もうひとつは、一周ごとに後ろに続くテーマを変えていること。例えば『金色の馬』から始まる四篇は色+動物だ(蛇、蜥蜴、大鷲)。『天色の風』からは自然現象や地形(森、泉、山、城郭)。
実はこれ、途中まで作者本人も気がついていなくて『緋色の山』で気がついたので、明確に設計したのは『朱鷺色の黎明』からだった、という裏話。潜在意識のなせるわざだったようだ。黎明から小夜までは、綺麗に時系列に並べられて良かった。
はじまり
定期の仕事でアグィーラへ向かうカリン。今回は、ローゼルの誕生の宴に参列する予定も兼ねていた。
その道中に現れたモミジは、カリンに何かを告げているようでもあった。
そして、カリンが薬師室に到着するのを待ちわびていたかのように現れたセダムは、カリンの前で涙を流した。
新しい訓練場
遅れてカリンに合流する予定になっていたレンは、新しい訓練場の候補地となっているあの洞窟に再び足を踏み入れることになった。
実際に足を踏み入れてみたレンはどのように感じたのか。
ツツジからの招集
セダムから相談を受けたばかりのカリンを待っていたのは、ツツジからの呼び出しだった。しかも、アオイ、ユウガオ、セダムと一緒にである。
ツツジの口から聞かされたこととは。
そして、再びセダムは取り乱す。一体、医局で何が行われているのか。
リリィ再び
良かれと思ってセダムをアルカンの森へ連れ出したカリンだったが、荒天に見舞われ、リリィに咎めを受けることとなった。
子供の頃のことを思い出すカリンだったが、そこに現れたのは……
ローゼルの誕生の宴
医局でさまざまな問題が起きる中、予定通りレンと合流してローゼルの誕生の宴に参加したカリン。そこにはツツジはもちろん、他の局長たちや薬師室長、町の有力者たちの姿もあった。
治験報告会
なんとか数値を整えて治験の報告会に出席したカリンたちを待ち受けていたのは、建築局長プリムラの鋭い指摘だった。ツツジはそれを平然と受け止め、局長は和気藹々としているように見えるが……
謎は解けたと言えるのか
なんとか起こっていたことに筋道をつけてツツジと話をしたカリンだったが、いまいちすっきりしない気持ちのままツツジとの会談を終えた。
今まで拠り所にしていたものが崩れていくような気持ちも感じながら、それでも前に進むことは止められない。
アルカンの森で
アルカンの森でユウガオとセダムと待ち合わせをしたカリン。
セダムの様子は、少しずつ快方に向かっているように見えた。ほっとしたカリンは二人をアルカンの森の主の広場へと案内する。
多くを語らなかった森の主だが、三人は、三人それぞれ、アルカンの森の主と無言の対話を味わうのだった。
それぞれの目指すもの
レンは、鍾乳洞での遭難という自分の受難を自分以上に深く考え、少しも無駄にするまいとしている族長に深く感銘を受ける。
一方のカリンは、プリムラとの対話を通して、闇への考察が一段深くなったようだ。
二人は、それぞれの進むべき道を確かめ合う。
再び時が一巡したので、次回、『物語の欠片-天鵞絨色の種子篇-』は、これまでの登場人物の過去に時間軸を戻して語られるアンソロジー。すでにお馴染み、KaoRu IsDhaさんの絵が何話かに一枚お楽しみいただけるシリーズである。
まだ一話も書いていないけれど、絵はいただいているので書くのが楽しみである。どんな声が聞こえてくるかなあ。
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