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土に還る。土を愛でる

土に還る


「死んだら、どうなるの?」

小5と小3の子どもたちが、聞いてくるようになった。夜、寝る前、布団にもぐって「こわい」と泣く。空の星になるよ、とも、天国にいくよ、とも答えられなかった。
「人の心や意識、記憶はどうなるの? 全部消えちゃうの? そんなのいやだよ」

12年前、東京で初めての出産を迎えるころ、本を読み、自然育児にあこがれて布オムツにしてみようと思っていた。真っ白な布オムツを買ったり、もらったりした。自然分娩や母乳育児を推奨する総合病院で出産し、新生児は布オムツだったが、退院して、布オムツは3日で挫折。永遠に洗濯が終わらない気がして心が折れた。

2017年、萩に移住したとき、子どもは5歳と2歳。スープが冷めない距離の近所に、先輩移住者のママ友がいた。赤ちゃんが生まれて8カ月くらい。あだ名は「どんちゃん」。整体をしていて、いつも手のひらがあたたかく、手作りのお菓子でもてなしてくれる。お日さまのような笑顔にいつも元気をもらった。どんちゃんは、まさに自然育児。ストイックに努力している雰囲気は全くなく、赤ちゃんはごく当たり前に布オムツだったし、1歳を過ぎ、夏なら素っ裸で庭や近所を散歩していた。草の上を裸足で歩く。そこら辺でおしっこしても気にならない。汚れ物は、土に還せる。土のない白いマンションの部屋、アスファルトしかない道では無理だったことが、ここならできたのかと思った。土の包容力よ。

暮らしにコンポストを取り入れて、とっても楽になった。ポリ袋の中に、生ゴミを捨てる憂鬱さから解放され、食べ残しに罪悪感を感じにくいのもいい。微生物のエサになって、次の作物を育てる土になるなんて、なんとすばらしいことだろう。

昔、昭和の小学生だったころ、小学校1年生のときのこと。児童が教室内で嘔吐してしまったのだが、そのときの吐瀉物を片付け方が印象に残っている。先生は、定年間近の男性教師で、おそらく戦前生まれだった。先生は、運動場から砂を持ってきて、吐瀉物にふりかけ、しばらくしてから、その砂をスコップでバケツに入れて、外に捨てるというやり方で片付けていた。そんなやり方は、初めてで、そのとき以来、見たことがなかった。すごく印象に残っている。土の包容力ってすごい。人が汚いと感じるものを、土の微生物たちが、浄化してくれる。

3年前、ネコを庭に埋めて、墓を作った。うちによく懐いていたネコで、農泊にきた中学生が「エンジェル」と名付けて以来、「エンジェル」とも「ニャア」と呼んでいた。本当に珍しいくらい、家と人間が好きだった。エサがほしいというよりも、撫でられたりかまわれたりすることを求めていて、狩りの成果なのか、2度ほどモグラの死骸を貢ぎ物として(?)出入り口に置いていった。ある夏、エンジェルが死んでしまった。みんなで泣きながら庭に埋めた。
木の棒と石を置いただけの簡素な墓には、ススキが生えてきて、墓の存在があやふやになってきてしまったけれど、不思議と以前よりも強く、庭にエンジェルの気配を感じることがある。

土を愛でる

今、自然農を学び、日々、土と向き合っている。植物の根や根についた微生物が土を耕してフカフカにしてくれるのを目の当たりにし、彼らが、元気に活動できるように、手助けするヒントをちょっとずつ実践しながら感じている。
まだまだブラックボックスで、わからないことだらけだけれど、私は草のにおいが好きで、土のにおいに癒やされている。

糸状菌が元気な土
元気な糸状菌を発見


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