戦争番組を見るので忙しい

「NHKスペシャル いのち眠る海 ~最新調査で明かす太平洋戦争~」を見た。海底の研究が立ち上がっているのが、興味深い。
戦争という大きな物語の中の、ひとりひとり固有の物語が再現されようとしている。戦死者たちのそれぞれの「この世界の片隅」での息吹が感じれるようになっているのだ。

戦争に使われた戦闘機や船はさまざまある。
零戦、戦艦、空母、徴用船(民間の船。物資や人の輸送)などだ。
太平洋戦争で、3000を超える船が沈み、35万の命が失われたとの推計がある。戦後の調査は進展せず、遺骨はそのまま放置されていた。遺族には、戦死したことのみ伝えられ、どんな最後だったかは不明のままであった。

テクノロジーを使って、最後に迫る

戦後、78年目だ。テクノロジーの変化は、戦後の検証にも使われる代物になった。
フォトグラメトリーという、大量の静止写真を撮って、3Dモデルで全体像を復活させる事例が紹介されている。海の中では、バラバラになっている機体を、デジタル上のモデル化で立体化できる。

マリアナ海峡とは、グアム、サイパンなどの、「観光地」として馴染みのある島々だ。もっと東には、ミッドウェー島などがある。
マリアナの諸島は、アメリカ軍から西へ押し返されて、日本本土への攻撃への拠点と考えた場所だ。1500機近くの航空機で、空中戦が繰り広げられたらしい。その機体たちの復元が行われているのだ。

沈んだ機体を調査すると、機体のフラップを出して、できるだけ静かに着水しようとしているものが見つかったりしている。
最後まで生きようとしていたのではないか。

遺骨の海底調査

陸地の遺骨収集は進んでいたが、海中は進んでいなかった。
そんな中で、観光ダイバーが写真を撮ってSNSに写真をアップしている問題が起こっているようだ。遺族からすると、軽い気持ちで扱われた写真など見たくもない光景だろう。

海底に沈んだ遺骨が遺骨が返ってきていない遺族の方が、たくさんいるのだ。こんなことも、大きな物語の戦争だけを教科書から学んでも知らなかった。

死者は、記憶によってしか生きられないということに、思いを馳せる。自分の場合、戦争関係で亡くなった親族はいないが、亡くなる時に、どんな形の最後だったのか、真実を知りたいと思うのではないだろうか。

遺骨の返送を、国の事業としてやっていることは知らなかった。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/senbotsusha/index.html


個別の物語を知ることで、物事の立体感は増すだろう。
テクノロジーがこのような形で、応用されていることは、すばらしいことだと思う。戦死者たちの固有の物語が共有されることは、大文字の「戦争」を知ることと同様に重要なことなのだと思った、良い番組でした。

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