RCTはもう古い?今、製薬業界で注目されていリアルワールドデータが臨床研究や治験を変える理由
1. リアルワールドデータ(RWD)とは?
リアルワールドデータ(Real-World Data, RWD)とは、日常診療で得られるデータのことで、伝統的なランダム化比較試験(RCT)とは異なり、実臨床での医療行為や患者のアウトカムを反映するデータとして注目されています。
主なRWDのソース:
電子カルテ(EHR, EMR)
レセプトデータ(DPC含む)
健康診断・健診データ
患者レジストリ(疾患登録)
ウェアラブルデバイスやアプリのデータ
ソーシャルメディアや患者レポート
介護データ(LIFE)
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2. RWDを活用した臨床試験・治験の種類
RWDは主に以下の方法で臨床試験や治験に利用されます。
(1) リアルワールドエビデンス(RWE)
RWDを解析して臨床的な有効性や安全性のエビデンスを得る研究
RCTの補完的なデータとして、規制当局(FDA, EMA, PMDA)が活用
適応外使用の有効性評価や、長期的な安全性のモニタリング
(2) 観察研究(Observational Study)
介入を伴わない試験
既存のRWDを解析して治療の有効性・安全性・予後を評価
コホート研究、ケースコントロール研究など
(3) プラグマティック臨床試験(Pragmatic Clinical Trial, PCT)
実際の医療現場(リアルワールド環境)で行う介入研究
RCTと異なり、患者や医師の治療選択の自由度が高い
より実臨床に即したエビデンスを得るためにRWDを活用
(4) 企業治験におけるRWD活用
製薬企業が薬事承認のための治験で、RWDを補助的に利用
治験のリクルートや外部対照群(External Control Arm)として活用
FDAは「リアルワールドエビデンス・プログラム(RWE Program)」を推進し、RWDを用いた薬事承認を容認
3. RWDを用いた臨床試験・治験のメリット
✅ コスト削減:新規のRCTを実施するよりもコストが大幅に削減
✅ 実臨床に近いエビデンス:RCTの厳格な選択基準ではなく、実際の患者群に基づいた評価が可能
✅ 長期的な追跡が可能:電子カルテやレセプトデータを用いることで、長期的な安全性や予後を評価
✅ 希少疾患や高齢者のデータ確保:RCTでは組み入れ困難な患者群のデータを収集可能
✅ スピード感のある治験設計:治験参加者のスクリーニング、リクルート、モニタリングが迅速化
4. RWDを用いた臨床試験・治験の課題
⚠ データのバイアス:RCTと違い、無作為化ができないため、交絡因子の影響を受けやすい
⚠ データ品質のばらつき:電子カルテやレセプトデータには欠損値・入力ミスがあることも
⚠ 規制対応:日本(PMDA)では、RWDによる承認の事例はまだ少なく、規制当局の基準が厳しい
⚠ プライバシー・倫理的問題:患者データの匿名化・セキュリティ管理が必須
5. RWDを用いた臨床試験・治験の最新動向
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