RCTはもう古い?今、製薬業界で注目されていリアルワールドデータが臨床研究や治験を変える理由




1. リアルワールドデータ(RWD)とは?

リアルワールドデータ(Real-World Data, RWD)とは、日常診療で得られるデータのことで、伝統的なランダム化比較試験(RCT)とは異なり、実臨床での医療行為や患者のアウトカムを反映するデータとして注目されています。

主なRWDのソース:

  • 電子カルテ(EHR, EMR)

  • レセプトデータ(DPC含む)

  • 健康診断・健診データ

  • 患者レジストリ(疾患登録)

  • ウェアラブルデバイスやアプリのデータ

  • ソーシャルメディアや患者レポート

  • 介護データ(LIFE)


https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/icmra/0027.html


2. RWDを活用した臨床試験・治験の種類

RWDは主に以下の方法で臨床試験や治験に利用されます。

(1) リアルワールドエビデンス(RWE)

  • RWDを解析して臨床的な有効性や安全性のエビデンスを得る研究

  • RCTの補完的なデータとして、規制当局(FDA, EMA, PMDA)が活用

  • 適応外使用の有効性評価や、長期的な安全性のモニタリング

(2) 観察研究(Observational Study)

  • 介入を伴わない試験

  • 既存のRWDを解析して治療の有効性・安全性・予後を評価

  • コホート研究、ケースコントロール研究など

(3) プラグマティック臨床試験(Pragmatic Clinical Trial, PCT)

  • 実際の医療現場(リアルワールド環境)で行う介入研究

  • RCTと異なり、患者や医師の治療選択の自由度が高い

  • より実臨床に即したエビデンスを得るためにRWDを活用

(4) 企業治験におけるRWD活用

  • 製薬企業が薬事承認のための治験で、RWDを補助的に利用

  • 治験のリクルートや外部対照群(External Control Arm)として活用

  • FDAは「リアルワールドエビデンス・プログラム(RWE Program)」を推進し、RWDを用いた薬事承認を容認

3. RWDを用いた臨床試験・治験のメリット

コスト削減:新規のRCTを実施するよりもコストが大幅に削減
実臨床に近いエビデンス:RCTの厳格な選択基準ではなく、実際の患者群に基づいた評価が可能
長期的な追跡が可能:電子カルテやレセプトデータを用いることで、長期的な安全性や予後を評価
希少疾患や高齢者のデータ確保:RCTでは組み入れ困難な患者群のデータを収集可能
スピード感のある治験設計:治験参加者のスクリーニング、リクルート、モニタリングが迅速化

4. RWDを用いた臨床試験・治験の課題

データのバイアス:RCTと違い、無作為化ができないため、交絡因子の影響を受けやすい
データ品質のばらつき:電子カルテやレセプトデータには欠損値・入力ミスがあることも
規制対応:日本(PMDA)では、RWDによる承認の事例はまだ少なく、規制当局の基準が厳しい
プライバシー・倫理的問題:患者データの匿名化・セキュリティ管理が必須

5. RWDを用いた臨床試験・治験の最新動向

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