2型糖尿病に対するナトリウムグルコースコトランスポーター2阻害剤(SGLT2阻害薬)とグルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1受容体作動薬)によるファーストライン治療について費用対効果の検討
https://www.acpjournals.org/doi/full/10.7326/M21-2941
Original Research4 October 2022
First-Line Therapy for Type 2 Diabetes With Sodium–Glucose Cotransporter-2 Inhibitors and Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonists
A Cost-Effectiveness Study
https://www.acpjournals.org/doi/full/10.7326/M21-2941
背景
ガイドラインでは、2型糖尿病患者に対する2次治療として、ナトリウム・グルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害剤とグルカゴン様ペプチド-1(GLP1)受容体作動薬の使用を推奨している。第一選択薬としての使用拡大が提案されているが、臨床的なベネフィットがコストを上回らない可能性がある。
目的
SGLT2阻害薬またはGLP1受容体作動薬を第一選択薬とした場合の生涯費用対効果を検証する。
デザイン
個人レベルのモンテカルロベースのマルコフモデル。
データソース
データソース:無作為化試験,米国疾病対策予防センターのデータベース,RED BOOK,National Health and Nutrition Examination Survey(国民健康・栄養調査)。
対象集団
薬剤未使用の米国の2型糖尿病患者。
時間軸。
生涯。
視点
医療従事者。
介入。
第一選択薬のSGLT2阻害薬またはGLP1受容体作動薬。
アウトカムメジャー
平均余命、生涯コスト、増分費用効果比(ICER)。
ベースケース解析の結果
SGLT2阻害薬とGLP1受容体作動薬のファーストラインは、メトホルミンと比較して、うっ血性心不全、虚血性心疾患、心筋梗塞、脳卒中の生涯発症率が低いことが示された。SGLT2阻害薬の第一選択薬は、メトホルミン第一選択薬に対して、費用が43,000ドル高く、質調整月数が1.8ヶ月増加した(質調整生命年[QALY]あたり478,000ドル)。注射用GLP1受容体作動薬の第一選択薬は、メトホルミンと比較してコストが高く、QALYを減少させた。
感度解析の結果
注射剤の不利を取り除くことで、第一選択薬のGLP1受容体作動薬が優位でなくなった(ICER、1QALYあたり327,000ドル)。経口GLP1受容体作動薬は費用対効果が悪かった(ICER、1QALYあたり823,000ドル)。1QALYあたり15万ドル未満で費用対効果を得るには、SGLT2阻害剤のコストは1日あたり5ドル未満、経口GLP1受容体作動薬のコストは1日あたり6ドル未満である必要があります。
制限事項
米国の人口とコストは国際的に一般化できない。
結論
第一選択薬として、SGLT2阻害薬とGLP1受容体作動薬は2型糖尿病のアウトカムを改善するが、費用対効果を上げるには、少なくとも70%のコストダウンが必要である。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。
素晴らしい研究だなと思ったのでメモ。
SGLT2阻害薬もGLP1受容体作動薬もコスパが悪いと思っていましたが、こういう定量研究が出ると助かりますね。
ところで、「1QALYあたり15万ドル未満で費用対効果を得る」とさらっと書いていますが、私の理解では、少なくとも以前のEUなどでのQALYの議論では、「1QALYあたり5万ドル」だったと思うのですが、基準がかなり緩くなっていますね。これは製薬業界のロビーングの成果でしょうか??
しかし一方で、「1QALYあたり15万ドル未満で費用対効果を得るには、SGLT2阻害剤のコストは1日あたり5ドル未満、経口GLP1受容体作動薬のコストは1日あたり6ドル未満である必要があります。」とありますので、おそらくかなりの値下げが必要ですし、もし「1QALYあたり5万ドル」でやるならば、1日あたり2ドル未満でしょうか。
正直今の日本の状況だとそれでも保険財政的には厳しいと感じますが、日本の中医協はどんどん新薬を承認していますよね、、、
このままでは薬代で日本が傾きますよ、、、それで国民が幸せになるならまだいいですが、この結果が示すように国民はたいして幸せになれないように思います、幸せになれるのは製薬会社とその関係者だけではないでしょうか・・・・。