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モデルロケットにカメラを搭載して映像をとる #発射台製作&打ち上げ編

はじめに

この記事は前回『モデルロケットにカメラを搭載して映像をとる #計画 &ロケット製作編』からの続きの記事です。

そのカメラ搭載ロケットを飛ばすのに必要だった、直径8mmの発射台を作るまでと実際に飛ばした際の記録をご紹介いたします。

発射台製作

モデルロケット発射台の設計&製作に取り掛かったことがある人は、まだまだ日本では少ないのではないでしょうか。
ランチロッド式の発射台の場合、ただランチロッドが真っ直ぐ土台から伸びていれば良い、ということではありません。
講習会では、『発射台の角度は30°まで傾けて良い』という安全上のルールを教えていますが、自分が作ったロケットの場合、自分のロケットの特性を考えると実は奥が深いものなのかもしれません…。

どのようなことを考えて設計すれば良いかというと、『1. ランチロッド(もしくはレール)の強度はロケットの推力に耐えられるか』『2. ロケットが発射台から離脱する際の速度(ランチャー離脱速度)は、ロケットが安定して飛翔できる速度に達しているか』『3. 土台は衝撃や風速に耐えうる構造か』というようなことです。(他にも要素はありますが、今回はこれだけで。)

1. ランチロッドの強度はロケットの推力に耐えられるか

ランチロッドを傾けた場合、自重でロッドが曲がります。曲がる度合いはロッドが固定されている土台からの距離によって変わってきます。さらにロッドの材質や断面形状にもよります。
それにロケットからの推力による衝撃が加わると、ロッドがさらに曲がる原因になります。
ロッドが曲がり振動してしまうと、ロケットは真っ直ぐ飛んでいくことが難しくなります。そして、思わぬ方向に飛んでいってしまう可能性が出てきてしまいます。
ですので、それに耐えうる材質、材料形状を適切に選択することが大切です。
同じ直径の場合、アルミ棒よりステンレス棒、鉄棒の方が曲がりにくいですよね。そんなことを考えながらロッドの選定をしていきます。

2. ランチャー離脱速度は、ロケットが安定して飛翔できる速度に達しているか

これはロッドの長さを適切に考えましょう、ということです。極端に考えると、ロッドがない場合、そして姿勢制御機能がないロケットの場合、ロケットは真っ直ぐ上昇していけるでしょうか。難しそうですよね。。
ではどのくらいが良いのでしょうか。それは時間ごとにどのくらいのスピードが出るか、それと同時に高度がどのくらい上昇している時なのか、を計算してみないとわかりません。
もちろんロケットの形状や使用するエンジンによって全く違う答えが出てきます。
計算の結果、ロッドの長さは1.5mくらいないと、初速として稼いでおかないと安定して飛翔しない速度までに達しないことがわかりました。
ですので、ロッドは900mmのステンレスパイプを2本繋げて固定するという長めの発射台になりました。(ロッドの支持部が300mm程度あるので、正味1500mmです)

3. 土台は衝撃や風速に耐えうる構造か

これはもう、いい三脚使っておけば良いよ、という話です。
風が強めだったら、脚を立てないで地面に這いつくばるような角度調整ができるような構造であること、それに加え、ある程度の重さも三脚には必要だよ、というお話です。以上!

完成した発射台

そうしてできた発射台は、こんな感じでした。

発射台(長くて部屋の中だと写真に収まりきらないです)
パイプの接合部(パイジョイント、特注のジグ、土台)

パイプを支えるパーツはパイジョンパーツというもので、それを特注のジグ(株式会社ワイ・エス・エムさんに作成いただきました)を介し、天体望遠鏡用の固定ジグに取り付けています。

ステンレスのパイプ同士をつなげる構造は自分で言うのも変ですが、変な構造です。。
片側のパイプに、内径に合わせてハマるアルミ棒を長さを残して接着剤で固定します。そしてその残したアルミ棒にもう片方のステンレスパイプを差し込んで、”なんと”瞬間接着剤をステンレスパイプ同士が接触する部分に一滴垂らして固定しますw

それ、外れないんじゃ?と思う方、正しいです。ちょっとの衝撃はもちろん、上部のみを持ち上げても全く外れません!
で、す、が、瞬間接着剤用のはがし液というものがありますので、それを使うと分解できるのです。(素晴らしい設計だ…。)ただし、一滴以上で固定させようとすると外すのが大変になります。。。
そんな設計が完成したのは、打ち上げの3日前です。。かなり苦労しました。。

次はいよいよ飛ばします。

『全てはこのときのために!』

2022年9月11日14時40分。ついに打ち上げの時がやってきました。

ついに大空へ…

朝は風が強く、昼は時たま突風が吹くなど、何が起こるかわからない自然の中で飛ばすのはやはり緊張します。
さらには、まだ使用した実績のないエンジン、新規の機体、新規の発射台、操作の慣れないカメラ…。
こんなに新規性が高い取り組みはかつて経験したことがありません。

でも、もうやるしかありません。

2022年9月11日14時43分。リフトオフ。

結果は動画をご覧いただいた通りです。

発射台はうまく機能し、機体の安定性はOK。ただし、エンジンの逆噴射が思ったよりも強く、反動でボディが動き回ってしまい、ショックコードがシュラウドラインを絡めてパラシュートが開きませんでした。

なんとも悔しい結果でしたが、上昇する際の加速の感じを高画質のカメラで収められたことは非常に大きく、私としては財産になりました。

そして墜落してもカメラは壊れず、カメラモジュールの衝撃吸収機能、カメラ自体の耐衝撃性にも驚かされることにもなりました。

最後に

本当に飛ばすときは一瞬なのですが、それのために何ヶ月も開発を行ってきました。

今回の取り組みで様々なチャレンジをしてこれたことは、前回のnoteもお読みいただけた方にはわかっていただけたと思います。
モデルロケットは様々なチャレンジをさせてくれます。
開発しているとき、そして実際に飛ばすとき。

今回はヒヤヒヤ要素が多い中でも上手くできた方だとは思っていますが、完璧だと思っていても上手くいかないこともあります。
うまくいかないから、それが悔しいから、次があるのだと思います。

私は全国大会などで競技委員長を務めさせていただいている関係上、偉そうに「DQ」とか言ってジャッジをしていますが、今回の飛行はまさにその「DQ」です。

ミスは誰にでもあるのかもしれませんが、安全に失敗をさせてくれるモデルロケットの安全基準があったからこそ、今回も事故がなく失敗ができました。

これを読んでいるモデルロケットのファンの方には、ぜひ安全ルールをもう一度確認してもらって、引き続き今後も安全な打ち上げを続けていただきたいな、と思う次第です。

そして、初めて見られた方には専門的な話だと感じられるかもしれませんが、こんなこともできるんだ、とちょっとでも興味を持っていただけたら、実際にモデルロケットをまずはキットを使って打ち上げてみませんか?
自分が作ったロケットが高く飛んでいく体験だけでも、とても気持ちがスカッとしますし、自信がついてきますよ。
日本モデルロケット協会では講習会もやっております。私も指導できます。

モデルロケット仲間が少しでも増えたら私は嬉しいです。

とりあえず、今回のチャレンジはここまでです。
お読みいただき、ありがとうございました。
(*カメラ付きロケットの失敗は悔しいので、いつかリベンジします!)

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