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きっと僕らは 夢を思い出すために 十月十日、明日へと目を醒ましてゆく

現在、東京・汐留にあるパークホテル東京(@parkhoteltokyo)26階 Corridor Gallery 26にて会期中の【Lovely exhibition】(Curated by soshare)へ、先日、原画展示作品【幻日】並びに「LOVERY Art CONTEST」入選作品を観に足を運んできました。

パークホテル東京へ訪れるのは約2年ぶり。その当時はアーティストルーム(アート作家がつくる部屋)へ宿泊する、という目的で訪れた。おなじ場所であれど、今回は全く違う。原画展示作品【幻日】は、今年の4月に東京・清澄白河にあるGallery Klyuch(@gallery_klyuch)で開催された初個展【Φの箱庭】の空間で初披露させて頂いた。今回は"Lovely"がテーマの空間。どんな風に感じるのだろうか。そして、自分自身は"Lovely"をどんな風に受け取るのだろうか。不思議とその時の自分はドキドキやワクワクといった動きのある高揚を象徴するような感覚ではなく、波音ひとつ立たないような無のような静けさのなかにいるようだった。その空氣感に生で触れてみないとわからない。生で触れてみて、はじめてその瞬間に生まれるものがある、ということを心が教えてくれているようだった。

"美術館のようなアートホテル"として有名なパークホテル東京
2年前、この場所で生まれた絵は【溶け合う】だった。

パークホテル東京は、「日本の美意識が体感できる時空間」をコンセプトに、ホテルの柱であるART=空間(Atrium) 食(Restaurant) 旅(Travel) のそれぞれのシーンで、日本の美意識が体感できる取り組みをされており、ホテルのフロントはエレベーターを上がり、25階。日本最大級の34階まで続く、開放的で解放的な吹抜けの天井があるアートラウンジ。晴れた日には東京タワーや富士山、虎ノ門の高層ビル群を眺望でき、美しい景観を感じられ、ホテル内には常時400以上のアート作品が展示されている。内外共に【美】を全身で浴びることができるアトリウムなのは間違いないのだけれども、ここを訪れる度に感じる。それは「香り」。圧倒的に心地よい香り。遠すぎず近すぎずベストな距離感のある。一度、その香りを感じたら、全身に記憶され、二度と忘れないような。2年経って、その「香り」と出逢った瞬間、あの当時の感動や心地良さが再び自分の中から呼び醒まされてゆくような感覚になり鳥肌が立った。全細胞がスタンディングオベーションする。イントロからもう拍手喝采だ。

日本最大級の吹抜けの天井のあるアートラウンジ
アメニティにはタイで生まれたナチュラルスキンケアブランド【THANN】が使用されており、この香りが個人的に好き。

【Lovely exhibition】(Curated by soshare)が開催されているのは25階のフロント階から1階上へあがった26階。エレベーターの扉が開くと、目の前には紅白のパネルに【Lovely exhibition soshare GALLERY&soshare digital GALLERY】の文字が。

Lovely exhibition

今回の展示のテーマは"Lovely"。"Lovely"には、美しい、素敵、愛らしい、可愛い、可愛らしい、麗しい、うららか、きれいな、など調べると色んな意味が包含されている。あくまで"Love"ではなく"Lovely"。名詞ではなく形容詞。形容詞は文字通り、事物の性質や状態などを表現するもので「どのようであるか」というような、固定されたものではなく、移り変わってゆく、その瞬間瞬間で絶えず変化するようなもの。それを感じ受け取る側によっても、目の前の事物がどのようであるかは十人十色異なる。その点においても、今回入選作品として選出頂いた【幻日】は自分自身のなかでは"Lovely"というテーマに繋がる感覚があった。そして、実際に自分自身も"Lovely"というテーマをもってして【幻日】に触れた時にあらためてどう感じるのか、を一個人としても知りたいという好奇心があった。

【幻日】という絵は、あくまで"Lovely"をテーマに描いたものではありませんでした。それはいつも、然るべきタイミングで自分自身のなかで日々生きる中で、ひとつひとつの欠片が根のように繋がっていったものが地上へ顔を覗かせる、芽吹くような誕生の瞬間に、自然と絵を描いている自分がいる。だから実際は何を描いているのか、もその時は理解していなければ、そのような意識もない。自然と手が止まる、訳もなく一致した感覚がある、絵を描き終わっても、それは何を描いているのかはわからない。そしてとあるタイミングで、それもまたふと言葉が降りてくる。降りてくる、というのは、見えなかったものが見えるものとして"言葉"が繋いでくれるように生まれてくる。その時に自分自身もその言葉や流れを通して感じ受け取り、ハッとなる。言葉を感じ受け取っても腑に落ちるのはすぐではなく、色んな現実があいまって教えてくれることがある。その言葉のことを"絵空言(えそらごと)"と勝手に呼んでいる。おなじ音のつながりで"絵空事"は"物事を実際よりも誇張したり、ありもしない嘘"という意味を包含しているけれども、それとは異なり、ここでいう"絵空言"とは、仮に絵が天界のもの、言葉が地上のもの、と置くのであれば、その間の空は、天と地の間の空間。抽象と具体をむすぶもの。天界と地上をむすぶもの。"結ぶ"には"生まれる"という意味があるように。

"幻日"
reality, illusion
alchol ink art, acrylic color, mixed media on canvas
210mm×297mm / 2024

追いかけても 恋い焦がれても
出口が見えなかった

あの日の影が
かくれんぼのよう
後ろの正面で 照らし出した未来は
幻日の在処(ありか)

ありもしない絵空事への
一途さが地図になる

廻る地球儀のなか 巡る出逢いは秘密の約束

きっと僕らは夢を思い出すために
十月十日、明日へと目を醒ましてゆく

【幻日】 -絵空言-より

子供から大人へと成長してゆく過程のなかで、社会や世の中へと世界を広げてゆくなかで、「こうあらねばならない」「こうあるべきことが理想なのだから」「こうでいなければまわりと違うからはみ出しものとして受け入れてもらえなくなる」そんな自分自身がつくりだした思い込み(幻想)のなかで、誰が描いたかもわからないような、目指すべき方向を示す"太陽"の光を目指していた時があった。そんな"太陽"を目指していた時は 追いかけても 恋焦がれても 出口が見えず、「なんでいつもこうなるんだろう」というような迷宮の中で常にさまようような、"太陽"に近づけば近づくほど、やがて燃え尽きて死んでしまうような、イカロスの翼のような、そんな時期が誰にでもあると思う。そして、その光を見失った闇の中で、自分自身のなかにある真実の太陽(幻日)を見つける。自分自身を信じる心を持ち続けることが奇跡を起こすということ。

イカロスの神話では、翼を手に入れたイカロスが空を飛ぶという夢を手に入れたことで、制約や限界を忘れ、さらなる高みを目指すあまり太陽の光で羽根が溶けてしまい落ちてしまう、無謀な挑戦への危険性や過剰な欲望への戒め、という風に伝えられることがしばしあるけれども、個人的には、本当の自由とは何か、を伝えてくれるものだと感じている。

本当はすでに夢の中にいて、自分自身が本当に望んでいる夢は何なのか、忘れてしまったその夢を思い出すために、十月十日、明日へと目を醒ましてゆく。明日へと目を醒ますということは夢の続きをまだ見ているということ。夢がない人なんていない。夢の中にすでにいるのだから。そんな夢の中で出逢う人、出逢うもの、出逢うすべてのもの。巡る出逢いはきっと秘密の約束。それは憶えてはいないけれども、約束してきたもの。それがどんな出逢いであれ。出逢いは出愛。愛と出逢うということ。愛に触れるために。愛であることを思い出すために。

幻日

【幻日】を目の前にした時、自分自身はその瞬間どう感じるのだろう。その絵を目の前にした瞬間、涙が瞳の奥からとめどなく流れ出てきた。理性では抑えられないほど。感情であれば理性で抑えられると思った。そんな理屈で説明できないような涙が流れ出てきた。感謝だった。ただそこに存在していることの。そこにあることの。そこにいてくれてありがとう。ただただ、あってくれてありがとう。この景色を感じられることにありがとう。

一緒にいれることはあたりまえじゃなく、その瞬間出逢えることはあたりまえじゃない。良くも悪くも僕らはその状況やその空間に慣れてしまう。慣れてしまえば、それが永遠に続くものだと錯覚し、その瞬間瞬間の大切さを忘れてしまいがちになる。今日訪れた場所が、明日にはもうなくなっているかもしれない。今日出逢った人と、明日にはもう二度と逢えなくなっているかもしれない。今日と明日は地続きのように見えて、別の次元なのかもしれない。【幻日】は、エレベーターを降りて、時計回りに回れば「おわり」に。反時計回りに回れば「はじまり」の位置に展示されていた。「はじまりとおわりはおなじ」。おわりと思った時、それはすでにはじまりの位置に立っている。

実は、このキャプションボードを見るまで【幻日】が英語表記で【Sun Dog】ということを知りませんでした。作品を提出した際には日本語のタイトルだけを掲載し、提出しましたが、パークホテル東京は外国人観光客の方も多く訪れるような空間もあってなのか英語表記に。なぜ、【幻日】が【Sun Dog】というのか。直訳すると【太陽の犬】という表現になるけれども、これは北欧神話の月を追いかけて食べようとするハティ(狼)と太陽を追いかけて食べようとするスコル(狼)のお話に由来するのだそう。英語の【Dog】はひっくり返すと【God(神)】が隠れていることや、【Sun(太陽)】は最近読んだ本の一節の中にも"神が歩みを止めた一つの場所"ということが記されており、この【幻日】に触れてくれた人が、少しでも心を休めれるような居場所(空間)であってくれることをただただ願っています。ひとつの歩みがおわり、またひとつの歩みがはじめられるように。

あらゆるものは、動きながら、ある時、あるいは他のある時に、そこここで一時の休息を記す。空飛ぶ鳥は巣をつくるためにある処にとまり、休むべくして他のある処にとまる。歩いている人は、欲する時にとまる。同様にして、神も歩みをとめた。あの輝かしく素晴らしい太陽が、神が歩みをとめた一つの場所だ。月、星、風、それは神がいた処だ。木々、動物はすべて神の中止点であり、インディアンはこれらの場所に思いを馳せ、これらの場所に祈りをむけて、彼らの祈りが神が休止したところまで達し、助けと祝福を得られるようにと願う。

「宇宙樹」竹村真一 より

【Lovely exhibition】(Curated by soshare)は、2024年12月3日(火)〜2025年1月31日(金)までと今年のおわりから来年のはじまりへと結ぶ期間のあいだ、東京・汐留にあるパークホテル東京(@parkhoteltokyo)の26階にあるCorridor Gallery 26にて開催されています。詳しい詳細に関しては下記の記事に掲載されておりますので、この機会にぜひ足を運んで頂けましたら幸いです。

最後に、このような素敵な空間で展示させて頂く機会に恵まれたのは、【LOVERY Art CONTEST】を企画して下さったHACCK TAG(@hacck_tag)様、soshareの東村様、パークホテル東京(@parkhoteltokyo)様、そしてなにより【幻日】をオーディエンス賞へと導いてくれた応援して下さった皆様のおかげで実現することが出来ました。一人では決して実現することは出来ませんでした。この場をお借りして、あらためてまた御礼を伝えさせて下さい。本当にありがとうございました。かけがえのない日の入と日の出が訪れますように。

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大森 翼|TSUBASA OMORI
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