追沼翼 | Tsubasa Oinuma
まちに学び、まちに触り、そして自分たちの働き方、暮らし方を考えるための備忘録。
大学のゼミで取り組んだ課題から、すべてが始まりました。舞台となったのは通称「シネマ通り」(正式名称は「旭銀座通り」)。このエリアでは「とんがりビル」や「BOTA coffee」など、リノベーションによる再生が次々と進んでおり、その波に乗るようにして僕らは「空き物件のリノベーションを妄想せよ」というテーマを与えられました。 僕らが目をつけたのは、シネマ通りにある「郁文堂書店」。とんがりビルの隣にひっそりと佇む建物で、シャッターは閉ざされているのに朝顔のグリーンカーテンだけが元
郁文堂書店との出会いから6年後の秋、2022年10月20日、郁文堂書店のオーナー原田伸子さんが旅立たれました。いつかその日が来るとわかってはいたものの、どこかでいつまでも続いていく、と思い込んでいたのかもしれません。 何かつけて郁文堂書店を訪れては、今どこでどんな仕事に取り組んでいるのかを報告し、運営を手伝う学生の話や、最近の伸子さんの近況を聞かせてもらいました。お茶と漬物を用意して迎えてくださる伸子さんの笑顔が、いつもそこにありました。時には、町のイベントや出来事を知らせ
はじめての見積もり 前向きなDIYワークショップ 2016年12月20日。施工会社から待ちに待った見積もりが送られてきました。 「これで伸子さんと僕らの理想を詰め込んだプランを実現できる!」興奮冷めやらぬままメールを開くと、そこに書かれた額面は約270万円。驚きのあまり、冷や汗が止まりませんでした。そこに書かれた額面は、想定予算の3倍もの金額だったからです。 さて、どうしたらいいものか。僕らはどうにかして工事費用を1/3まで減額しなければなりませんでした。そこで工事を「職人
山形ビエンナーレの最終日、オーナーである原田伸子さんから「これからも協力してもらえるなら、また店を開けようかね~」と言葉をかけていただきました。その一言に、僕らは本当に嬉しくなり、「この場所だからこそできることは何だろうか」「伸子さんのためにできることは何だろうか」と、郁文堂書店のこれからについて考え始めました。 伸子さんの生活を守りつつ町に開く 2016年10月、ビエンナーレ終了から2か月が経った頃、僕らは郁文堂書店再生に向けた本格的な企画づくりに取り組み始めました。た
郁文堂書店の再生をどう進めるべきか、僕らは模索していました。そんな中、「山形ビエンナーレ」の会場候補として郁文堂が挙がっていると聞き、これは絶好の機会だと感じました。企画書を持参し、プログラムディレクターのナカムラクニオさんを訪ねると、僕らの突然の提案にもかかわらず、「素晴らしい!やろう!」と二つ返事で引き受けてくれました。ここから、ビエンナーレ最終日に向けて本格的な片付けの日々が始まりました。 片付けの作業は、単なる清掃以上に特別な意味を持っていました。店内には、長い年月
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