国際漁業学会からの学び 〜JICAボランティアの経験を踏まえて〜
国際漁業学会(JIFRS)第2回研究会が10月24日にオンラインにて開催されました。
自分は水産を学ぶ学生という立場でお話を聞かせていただきました。
そもそも、国際漁業学会とは?
国際漁業学会とは
学術の発展と、漁業をとりまく諸問題の解決に資することを目的として、国際性と学際性をキーワードに、経済学、政策学、水産学、社会学を中心とした幅広い研究活動をおこなっている学会です。
今回のテーマは「開発と研究」です!!
日本はJICAなどの様々なプロジェクトを通して、国際漁業開発を進めてきました。
そういった経験を今後の国際協力にどのように生かしていくか?
また、どのように研究すれば将来に活かせるか?
今回の学会の目的は、
「海外の漁業の課題や問題を体系化することで明らかにし、将来につなげる」ことです。
このようなテーマに対して4人の登壇者の方が発表してくださりました。
どの内容もすごい興味深く語りたいのですがとても長くなってしまいそうなので、今回は1つに絞りたいと思います。
国際農研(JIRCAS)の阿部 さんの発表についてです。
実は、自分も僅かにですが短期JICAボランティアとして国際漁業開発に携わりました。
その時の経験が阿部さんの発表と重なる内容でしたので、自分の経験を踏まえながら国際漁業開発の現場を紹介したいと思います。
まず、はじめに自分が短期JICAボランティアとして、どんな取り組みをしたのか軽く説明させていただきます。
1.短期JICAボランティアでの取り組み
私は2019年の2月から約1ヶ月間、セントルシアに水産開発という目的で派遣されました。
この取り組みは、私が在籍している東京海洋大学とJICAとの連携事業であり、学生ボランティアという立場で参加させていただきました。
当時の私は学部2年生のペーペー(今もペーペーですが...)であり、同期2人と計3人の派遣メンバーとなりました。
こちらがセントルシアです。
セントルシアとは東カリブ海に浮かぶ島国で日本の淡路島とほぼ同じ大きさの国です。
1ヶ月の派遣期間で取り組んだことは大きく分けて3つです。
①環境教育
小学生にマイクロプラスチック問題についての体験授業や海辺のゴミ拾い活動など行いました。
(地元の小学生へ授業の様子)
(授業後に海岸のごみ拾いを行った)
②エコツーリズム事業の改善
ナショナルトラストという環境保護団体が地元小学生などを対象に行っている、エコツーリズムツアーの内容をより良いものにするよう取り組みました。
(職員からエコツアーについて説明を受けている)
(エコツアー前に行う、授業資料の作成)
③魚食についての消費者意識調査
私たちが派遣される直前に、セントルシアの1番大手の水産会社が倒産したという話を聞きました。そこで、現在のセントルシアに住む人々の魚を購入する経路や、魚食への意識などをアンケート調査を行いました。
(アンケートを取ることに集中しすぎて現場の写真を撮り忘れました...)
2.本当に僕たちは求められているのだろうか...?
阿部さんの発表の中で、『海外漁業協力活動の中で注意すべき点やありがちな罠』について以下のように述べられていました。
現地での共同研究についての注意点
・ニーズを的確に把握
・成果の利用者、受け渡し
ありがちな罠の例
・良い技術は使われる(ハズ)
→そもそも裨益者は何を求めているのか?
・熱意の空回り... などなどです。
このありがちな罠に見事にはまってしまったのが私です (泣)
上で述べた現地での3つの活動は、それっぽく書きましたが、
あらかじめ派遣国と大学が話し合って決めたことであり、自分たちが現地に行ってニーズを確かめたものではありません。
(現地でのミーティング)
もちろん、現地の人々との話し合いを経て決められた活動内容であり、派遣国にとってもプラスになるのでしょう。一方で、活動中にもやもやした気持ちもありました。
本当にこの活動は求められているのだろうか?
ただ、現地では1ヶ月という短い時間の中で『何か結果を残さなければいけない!』という気持ちで一杯になり、何が求められているのか自分たちで調査することもなく活動をしてしまいました。
そして、このことを実感したのは最後のプレゼンテーションの時です。
(一緒に派遣されていた北海道大学の方々の最終発表)
1ヶ月間の活動の最終報告を、現地で支援していただいた企業や団体に行うのですが、そのうちの1つの団体にプレゼンテーションをドタキャンされてしまったことです。
(発表できず、落ち込んでいる筆者)
もちろん、先方にも予定があり致しかたがないことなのですが、自分たちの発表に聞く価値があると判断していたら、来てくださったかもしれません。
『結局は現地の方の役に立てていなく、自分達の自己満であったのではないか?』と感じてしまいました。
さらに半年後に悲しいお話が...
このJICAプロジェクトは5年間継続されるプロジェクトであり、毎年の夏と春にそれぞれ派遣されます。
私達の次に派遣されたメンバーが訪れた時には、私たちが作った資料は利用されていないことがわかりました。
それを聞いたときはとても残念で落ち込みましたね。
阿部さんのあげる注意点である、成果の引き渡しというポイントがうまくできていなかったからだと思います。
この経験から、国際開発において一番重要なのは、
『現地パートナーシップと信頼関係を築くことである』と感じました。
他の発表者も同じことを主張していました。
何よりも、まず初めに信頼関係を築くことが重要だと。
(現地水産局の方々との写真)
信頼関係をうまく築くことができなかったが故に、最終プレゼンのドタキャンや成果物の未使用といった、現状になってしまったのだと考えています。
③最後に伝えたいこと
今までは、阿部さんの発表をふまえて自分の活動の反省を挙げてきたのですが、逆にすごいと思いませんか?
阿部さんが発表された内容通りのことが自分の身にに起きているのです...
逆に言えば、自分が現地で活動する前にこの発表を聞き、注意していればこのような現実を回避できたかもしれません。
これが、今回の学会の目的です。
問題構造を明らかにし、体系化することで次に活かすということです。研究も同じですよね。
自分の経験を自分の経験として終わらせるのではもったいないですよね。
振り返りを行い、問題点を明らかにし、公表することで、次に活かし、学会全体の進歩に貢献する。
素晴らしい流れですね。
しかし、このように蓄積された経験・研究という情報が一般に広まっていかなければ意味がないですよね。(ここ重要です...)
そこで、少しでも多くの人に届いて欲しいと思い、まとめさせていただきました。
これを機に、読んでくださった方が国際漁業学会について、漁業について、
もっと知りたい!学びたい!という人が増えてくれれば嬉しいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
引き続き水産に関する情報を届けていきたいと思います。