本の感想「きみと100年分の恋をしよう①」

仕事に活かせるかと思い、久しぶりの児童文庫を読んでみた。
面白かった。
確かに文体などは軽く、小説というよりはSNSの投稿に近い印象を受けたが、内容はそれほど軽くはなかった。
脳腫瘍のため手術を受けた中学校2年生の少女が主人公。腫瘍のほとんどは摘出されたが後遺症が残る可能性がありすべてを取り除くことはできなかったために、3年生存率は30%だと知ってしまう。
それからは転校先の中学校で悔いを残さないよう、今までできなかったことを精一杯取り組んでいこうと前向きに歩いていく物語だ。

中学生という思春期真っ只中のあの独特の関係性がはっきりと書かれていて、スクールカーストやリーダー格の人物の顔色を伺うクラスメイトなどが出てくる。
主人公の少女は教室のカーストや関係性を認識できない鈍感な女の子ではないため、クラスの関係性に波風なててしまうことを恐れている。
この周りの子たちに合わせなければいけない同調圧力は誰しもが感じたことがあるだろうと思う。
実際私自身もその一人で、大人の今となっては懐かしくもあり、少しだけ痛々しい記憶でもある。
中学生の自分は、主人公の言葉を借りれば、”てきとうに生きていた”。常に周りの視線を気にして行動や言動、表情にまで気をまわしていた。そして教室では一人になることをとても恐れていた。移動教室に置いていかれないように必死になったこともあれば、2人組を組む場面ではあぶれないかどうか不安だった。上辺だけでひとまずの付き合い方をしてきた自分には友達と呼べる人がいたかも疑問だ。
そんなどこにでもある中学生らしい雰囲気の中、アトピーについて嫌味を言うリーダー格女子に物申したり、クラスで人気の男子と仲良くなったりと、今まで出来なかったことを成し遂げていく。

大人の私にはその姿がとても羨ましかった。
あの頃、クラスの雰囲気やぼっちにならないために必死だった自分には、友達に悩みを打ち明けたり、言いたいことを言えなかった。
主人公の少女のように、毎日を大切に過ごしていけば今でも思い出したい記憶になったのかもしれないなと苦笑いを浮かべてしまう。
そんな感傷を持ちながら、物語の少年少女たちが悩んで葛藤することから逃げずに踏ん張る姿を見ていきたいと思った。

余談だが、最近こういうクラスカーストや圧力のある雰囲気を隠さずに、むしろそれを題材にする物語が多いように思う。
私がその世代だったころは、そういった類の物語はそれほど多くは見かけなかったように思う。腫れ物に触らない風習だったものが見つめ直されて、当たり前のように痛々しく感じてしまう気まずさも逃げずに書かれている。



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