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仕事旅行社10周年スピーチ(全文)

とても久々の投稿になってしまいましたが、先日仕事旅行社の10周年オンラインイベントを開催しました。

僕も冒頭でスピーチをさせていただいたのですが、皆様に対する感謝の気持ちを述べたので、当日参加できなかった方に向けて、こちらに転記します。

(以下全文)

仕事旅行社が生まれた経緯から


こんばんは。仕事旅行社の田中翼です。

今日は、みなさまお集りいただき、ありがとうございます。仕事旅行社もついに10年を迎えました。大変感慨深いです。

せっかくお話しする場をいただいたので、まずは何故この会社を始めたのかというところからお話をさせてください。

今から12年ほど前、僕は丸の内の金融会社に勤めていました。特に金融に興味があったわけでもないのですが、通っていた大学で周りに目指す人が多かったので自分も同じ道を目指しました。

5年ほど勤めると、仕事に多少余裕が出てきました。すると何かと冷静になり、置かれた環境を俯瞰するようになります。

朝早く会社に来て机を拭くべきと主張する先輩。
仕事は辛いものだと言い張る上司。
穏やかで優しいのだけれど、仕事は受け身な年配社員。

その姿を見ていると、ポツポツと疑問が浮かんできます。

「仕事ってこういうものなのだろうか」
「金融って興味ないかも」
「このままでいいのだろうか」

待遇は良いけれど、なんだかスッキリしない毎日。
じゃあどうしたいかと聞かれると、よく分かりませんでした。

そこで、現状を変えるために僕はイベントに通い始めます。
イベントでの出会いを活用し、気になる会社を自主的に訪問し始めました。

中でも印象的だったのが、Sow Experienceというカタログギフトの会社。

オフィスを訪問すると、夏場だからか、男性の多くが短パンTシャツ。女性はワンピースなどカジュアルなもの。

僕の知っていた会社とは真逆のような光景を目の当たりにしたのです。

「楽しくなければ仕事じゃない」という姿勢が滲み出ていて、それこそ毎日が楽しそうでした。

会社が違えば「仕事」に対する「考え方」は千差万別。前職の外には自分の知らない仕事の世界があることに気がついたのです。当たり前ですが。

もっと楽しく働ける。もっと自由に働ける。もっと刺激的に働ける。

会社訪問で得た気づき。これを当時の僕と同じ悩みを抱える人に共有したいと考え、会社を辞め、仕事旅行社を立ち上げました。

10年の間に起こったこと

そんな原体験がもとになっているため、僕らが提供するのは「他の仕事を学ぶ機会」。それを職業体験やキャリア相談をつうじて実現しようとしています。

決して転職を促すためのサービスではありません。狭まった視野を広げることに特化したサービスを立ち上げたのです。

それから早10年。その間にはいろんな物語が生まれました。

僕のように思い悩んでいた人たちが、体験をきっかけに人生を変えていきました。

例えば

会社員から雑貨屋をオープンした人。
介護士から牛飼いの仕事を始めた人。
銀行員から花屋に転職した人。
日本初の女性某伝統工芸の漆塗り職人になった人もいました。
中には体験で出会って結婚した人もいました。

外の世界を見たことによって、比較対象を持ち、今の仕事の魅力に気がついた人もたくさんいました。

僕らが提供する「他の仕事を学ぶ機会」が人の仕事人生を一変させるくらいのインパクトを与えてきたのです。その数3万人以上です。

一方で良いことばかりではありませんでした。

「仕事旅行」も「おとなの新路相談室」も就転職支援のように、明確なゴールがあるわけではありません。

資格の勉強のように、合否やスコアといった目に見える結果が得られるものでもありません。

なかなかふわっとしたサービスだと我ながら思います。

そのためか、最初の印象だけで否定されることも少なくありませんでした。

「職業体験の意味や価値がわからない」
「子供向けサービスでしょ」
「転職のあっせんでしょ?」
「ターゲットが見えない」

あげ出したらキリがないくらいに、根底から否定されてきました。確かにサービスの成長もゆっくりだったので、反論もできなかったのですが。

そんなうちの会社を傍目に、同時期に立ち上げた会社の多くが急成長を遂げ、そのうち数社は上場を果たし、テレビCMなどで見かけるほどに。

創業当時は生まれていなかった息子が、それらのCMを覚えて、フレーズを口ずさんでいる姿に悔しさを抑えることができませんでした。これは今も継続中です。

「仕事旅行社だけが取り残されている」
「やはり自分のやり方は間違っている」

そう落ち込んだ回数は数え切れません。

経営才覚のない自分に落ち込み、常になんだか自信なさげ。そんな姿を見てきた人も少なくないのではないでしょうか。ポンコツキャラもいよいよ定着してきました。

世の中のニーズの変遷

本当に悔しいですが、これまでの10年間では胸を張れるほどの結果を出すことが僕にはできませんでした。

でも一方で、僕らのサービスが必要とされる世の中に変わってきたのを感じてもいます。

その理由を話させてください。

話は飛びますが、日本はバブル崩壊後の30年間成長をしていないなんて言われています。その大きな要因の一つは「労働生産性」の低さなのだとか。日本は他の先進国に比べて、一人当たりの生産性が低いというのです。

僕はこの生産性が低い理由の一つが仕事に夢中になれない「日本人」にあると考えています。

仕事を選ぶ際に、自分の「学歴」をもとに会社を選ぶ。まるで「偏差値」をもとに進学する学校を選ぶように。

そのあとに、ようやく自分の好きや得意を考慮して仕事の希望を出す。仕事は置いてけぼり。だから、仕事に対する思い入れが薄い。

いざ働き始めると仕事と自分の興味のギャップに気がつくのですが、そうなるともう手遅れです。

自分のやりたい仕事は不明のまま。
周りは自分と似たような人ばかり。新たな情報も入らない。
生活のために大幅な方向転換をするリスクも取れない。

もう、どうしようもない状態に陥ってしまいます。

結果的に積極性は低くなり、受け身の仕事になっていく。あとはひたすら耐えるだけ。そりゃ労働生産性が高まるはずもありません。

これはまさに、前職での僕そのもの。以前の僕のような人が多く存在していることが日本の低迷につながっているのです。

ではどうすべきか?

経験上、積極性を高めるには、まず外の世界に触れ、自分らしい働き方を見つけること。そして実現に向けて行動することが重要です。

そこに僕らが提供する「仕事旅行」や「おとなの新路相談室」などは、まさに自分らしい働き方の認識、そして実現を目的としたサービスです。

ここ数年、他の仕事を経験することや、知ることのニーズが人材業界を中心に高まっています。越境学習やパラレルワーク、1 on 1などの単語が生まれ、定着しつつあるのが、まさにその証拠です。

その流れを受け、個人の利用に加え、100年時代を象徴する福利厚生プランとして職業体験やキャリア相談サービスを導入したいと大手企業や労働組合からの声がかかることが増えてきました。

10年もかかってしまいましたが、ようやく時代にマッチしたサービスとして利用してもらえるようになってきたのです。

みなさんへの感謝と未来に向けて

もっと早い段階で時代に合わせたサービス展開や基盤作りなどができればよかったのですが、経営才覚のない僕は随分と時間を浪費してしまいました。

それでも、そんな情けない僕を10年間も支え続けてきてくれたみなさんに感謝の意を伝えて、話を終えたいと思います。

まずは、コアメンバーである内田さんや早川さん、そして河尻さん。

僕の稚拙な計画やアイディアにストレートに反論し、諌めてくれたこと。時には傷つきましたが。

自ら会社に必要なことを考えて行動をし、結果を残してくれていること。

10年は気持ち的にも収益的にもみんなの支えがなければ続けることができませんでした。普段なかなか感謝を伝えられていませんが、とても感謝しています。ありがとうございます。

僕らの想いに共感して体験先として協力してくださっている500人以上の仕事旅行ホストのみなさん。そして200人以上のおとなの新路相談室の相談員のみなさん。

なかなか送客に繋がらなかったり、体験を作ったままその後音沙汰なしなんてこともあったりしたと思います。歯がゆい思いをさせてしまいました。そんな中でもいまだに受け入れを続けてくださり、本当にありがとうございます。

資金面で支えてくれているベンチャーキャピタルの皆さん。なかなかスケールしない事業に歯がゆさを感じているはずでしょう。それにもかかわらず適宜アドバイスをくださったり、壁打ち相手になってくれたり。いつもありがとうございます。

仕事旅行社の事業に関わる記事作成に協力してくれている54人の編集職人さんたち。10年間で作った職業体験数は500以上。定期的に配信しているは記事も600に迫っています。

みなさんの協力なしでは、体験コンテンツの一つも作ることができませんでした。心から感謝しています。

イベントの運営を手伝ってくれる越境学研究会のみなさん。ろくに恩返しもできていないのに定期的にイベントを開催してくださるだけでなく、僕の愚痴まで聞いてくれました。

イベントの運営の支援ももちろんですが外部に応援してくれる仲間がいることが、第三者目線でアドバイスをいただけることがまさに心の支えになっています。

そして、荒削りなサービスを使ってくれている3万人以上のユーザーのみなさん。みなさんの応援がなければ、このサービスを続けていこうという気持ちは維持できなかったです。

仕事旅行は独自のサービスだ。他に比較できるものではない。それが魅力だっていう言葉。仕事旅行のファンだと宣言してくれる姿。

ことあるごとにサービスの内容を否定され、心が折れそうになっているところに、とても支えになりました。ありがとうございました。

僕の青臭い夢物語に共感し、これまで関わってくれたパートナーの皆さん、ボランティアの皆さん、そしてインターンの皆さん。本当は一人一人のお名前をあげて感謝を伝えたいところですが・・・。本当にありがとうございます。

みなさんの支えがなかったら、絶対に心折れていました。10年続けることはできなかったです。

仕事旅行社はまだまだ続きます。そして変化していきます。特に2022年にご注目ください。これからも引き続きよろしくお願いいたします。繰り返しにはなりますが、10年間も支えてくださってありがとうございました。

イベントアーカイブ:

仕事旅行社のホームページ

おとなの新路相談室のホームページ


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たなか つばさ@仕事旅行社
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