見出し画像

ドバイの「ビン・ラシード・ライブラリー」について調べてみた

今朝の「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」で、今年の夏にドバイにオープンした「ビン・ラシード・ライブラリー(Mohammed Bin Rashid Library:MBRL)」が世界の最先端図書館として注目を集めている、と紹介していました。

何となく聞き流してたのですが、「本当にそうなの?」と気になって調べてみました。


「世界で最も素晴らしい図書館」とCNNが評価

「ビン・ラシード・ライブラリー」を紹介していたのは、世界各国の最新ニュースをピックアップする「KONICA MINOLTA GLOBAL SCALE」のコーナー。radikoのタイムフリーで聞き直してみました。

「ビン・ラシード・ライブラリー」の特徴として紹介していたのは、次のようなことです。

  • 約60㎡の9階建ての建物で、建造物として美しいだけではなく、太陽光発電や再生水を活用している。

  • リアルな本、デジタル書籍等、約110万冊の蔵書。

  • 巨大な本棚。

  • カウンターでリクエストをすると、「本のジェットコースター」と呼ばれる自動運搬システムで、(書庫から)本が運ばれてくる。(蔵書のうち、約40万冊が書庫にあるようです。)

  • 児童図書館には、本が約17,000冊あるほか、iPadやパソコンが利用できるスペースがある。ペッパーが読み聞かせを行う。

  • 宝物図書館は博物館並みで、17世紀の書物のオリジナルがあるほか、1632年に出版されたシェイクスピアの36作品の原本が展示されている。

  • 図書館では(年間)200のイベントが行われ、カルチャーの発信地となっている。

なお、元記事はCNN Travelの「One of the world's most spectacular new libraries has opened in Dubai」のようです。
詳しく知りたい方は、こちらを読むのが良いと思います。外観や館内の写真も数枚掲載されています。高くて、壁いっぱいに本がぎっしり詰まった書架については、元図書館司書としてはどうかと思ってしまったのですが。


「ビン・ラシード・ライブラリー」の日本語記事は、ほぼなし……

残念ながら、日本語の詳しい紹介記事は見つからず。
国立国会図書館のカウントアウェアネスで簡単に紹介しています。

この記事によると、本を開いたような特徴的な外観は「コーランを置くための伝統的な木製の台(rehl)を模してデザインされたもの」なのだとか。

また、図書館の目的は、

知識への情熱を刺激し、若い世代が学び、成長し、未来を形作るよう促すことが同館の使命であるとし、ドバイの文化・文学の中心地としての役割を強化し、読書、研究、創作、アラビア語文学作品の出版を積極的に奨励することによって、これを実現する。

と紹介しています。


世界最先端の図書館なのか?

実際に「ビン・ラシード・ライブラリー」を訪問していないので、正しく評価することはできないのですが、番組で「世界最先端の図書館」と紹介していたのは本当なのだろうか、という疑問もわきました。

「ビン・ラシード・ライブラリー」のホームページは、アラビア語と英語の併記です。


蔵書冊数は、日本の都道府県立図書館並み?

最初に気になったのは蔵書冊数で、「約110万冊数」はそこまで多くないと思います。

日本の国立国会図書館の所蔵資料数は約4,622万点で、このうち図書は約1193万点(『国立国会図書館年報 令和3年度』より)。
「約110万冊数」だと、都道府県立図書館の蔵書数に近いような印象です。(都道府県立図書館の規模により、多い、少ないはあります。)


自動運搬システムを導入している図書館は日本にもある

書庫にある本を自動で取り出す運搬システムは、日本では「自動化書庫」と呼ばれていて、日本でも導入している公共図書館や大学図書館があります。
導入理由は図書館により様々だと思いますが、珍しいシステムではないように思いました。


貴重資料の展示

貴重資料を持っている図書館もあります。
ただし、貴重資料の展示は、資料保護の観点から難しいです。美術館・博物館並みの展示環境を持つ図書館があったかどうか。
最近は、資料保護の点からもデジタル化をして、公開する図書館も増えています。デジタル化資料の公開が増え、利用しやすい環境になるとありがたいのですが。


図書館でイベントも行っている

最近の図書館では、様々なイベントを行っています。
ただし、イベントを図書館独自で行うには限界があります。図書館以外の公共機関、民間団体、地域の人々と協力しながら、図書館を拠点とした活動ができるようになると良いと思っています。


魅力的な図書館って、どんな図書館?

「ビン・ラシード・ライブラリー」の特徴としてあげられていることを一つひとつ見ていくと、すべてが「もう実施されていること」なのですが、こういうことが図書館で行われていることを知らない方も多いのではないかと思います。

個人的に気になったのは、ナビゲーターの別所哲也さんが
「日本でも図書館は増えているが、利用者数がこの20年間で20%以上減少している」
と言っていたこと。この数字の出典は不明ですが、統計的にも利用者数が減少している図書館が多いと思います。

同時に、
「図書館で新たな発見がある、物語で世界とつながる。こんな魅力的な図書館があったら、行きたくなるかもしれませんね。」
とも言っていました。

おそらく、「魅力的な図書館」の定義は、人によって異なります。

まずは
「図書館で、こういうことを実施しているよ」
「誰でも利用できるよ」
ということを上手にPRして利用してもらい、図書館が魅力的な場所として認識されること。そして、図書館が身近な施設かつ役立つ施設として、多くの人々に利用してもらうことが大事なのかもしれません。


いいなと思ったら応援しよう!