ツバメ物語⑨/珈琲係-石井
私は、しずくさんに珈琲のあれこれ教えてもらってから、俄然やる気に満ち溢れていた。
まずは焙烙、生豆を購入して、自主トレーニングをした。何度も焙煎したけど、真っ黒になったり、生焼けだったり、ムラがあったり。
良い頃合いを見つけられるようになってきた時、飲み過ぎでしばらく珈琲を身体が受けつけなくなってしまった。
全く欲しくなくなってしまった。あんなに好きな珈琲が飲めなくなったのか、と愕然…とはしなかったけど。
とりあえずしばらく飲むのは控えようと決めた。毎朝飲んでいたのに、紅茶を飲んだりしていた。
程なくして、友人と珈琲を飲みに行く機会があり、そろそろ飲んでみようかなと、オーダーして久しぶりに飲んだ時、あれ、全然美味しくない…。なんなら気持ち悪い。
そして、無性に自分で焙煎した珈琲が飲みたくて飲みたくて、仕方なくなった。
慌てて、久しぶりに焙煎した。
ここで残念というか、お知らせがある。
私は、研究熱心ではない。難しい事は苦手。常に感覚を優先してきた。そして数字にめっぽう弱い。なので何ccに珈琲豆何gとか、さっぱり覚えられなくて、ツバメroofにあるあのコップならこのくらいの豆という感じなのだ。
だから、あの場所でしか、ツバメroofの珈琲は成立しない。
道具にこだわりがあるわけでもない。だけど、あの須恵器コップであの自分達で2年かけて作った空間で、飲めるあの珈琲は、当たり前だけど、あのツバメroofでしか味わえない。
次に珈琲の男と知り合う事になります。