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カールおじさんと『グリーンマイル』

「え〜! カールはうすあじ一択やろ〜!!」

妹が取り出したカールが緑色の袋だった。
うすあじじゃなくてチーズ味。
うすあじ派の私は、妹のおやつに一丁前に文句をつけてから10数年ぶりのチーズ味のカールを口に放り込んだ。

妹からしたら「文句あるなら食べるなし」の極みだろう。

私は食べ物全般、どストレートな王道が好きなのでほとんど冒険しない。

私の中のカールの王道はうすあじ一択なのだ。

遠い昔に食べたチーズ味は、なんだか好みじゃなくてそれっきり買ったことがない。

それなのに。

なに、このチーズのコクと旨味あふれるカールおじは!!

「うっ、うまい……!!! チーズ味ってこんなだったっけ?」

「そやろそやろ〜! たまにはチーズ味もうまいやろ?」

妹が得意げな顔で私を見ている。

正直驚いた。
めちゃくちゃうまい!

私の味覚が変わったのか、そもそも味が変わったのかはわからない。ただ、数十年ぶりに食べたチーズ味のカールは、記憶の中の味とまったく違っていた。

なんか、これと似たようなことが最近あったな、と思い出したことがある。

映画『グリーンマイル』に対する感想。
有名な映画なのでもはや紹介不要かもしれないけど念のため。

スティーブン・キングの小説に基づき1930年代の死刑囚舎房の看守が殺人容疑で投獄された死刑囚が不思議な癒しの力の保持者ということを発見し、彼自身の義務について道徳的なジレンマに直面する様子を描いた感動作。

フィルマークスより引用

たしかこの映画をはじめて観たのは高校生のとき。テレビのロードショーで放送されているのを母の隣で一緒に観た。

当時はマイケル・クラーク・ダンカン演じる死刑囚、ジョン・コーフィがあまりに不憫、プラス理不尽な看守達にただただ腹を立てながら鑑賞した。しかもあのラスト!

当時の私からすれば、最後の最後まであまりに無慈悲。観終わった後も悲しみのあまり数日ただ茫然としていた。それくらいショックだった。

それっきり『グリーンマイル』を観ることはなかった。

なかったんだけど、つい最近。
約20年ぶりに観たんだ。自分でも急にどうした、って感じなんだけど。ストーリーの講座を受けたのがきっかけでもう一回観てみようとなんとなく思って。

そしたらさ、カールのチーズ味食べたときくらい驚いた。
まるで印象が違う。
前はただただ辛かったラストも、刑務所暮らしの様子も。ちゃんと交流があって、想いを伝え合ってる。

コーフィのラストは出来事だけ見るとなんら変わらないんだけど、観た後の印象はまったく違って自分でも驚いた。

悲しいんだけど、心の奥がほんのり温かくなるような。まったく希望がないわけじゃなかった。

名作だったんだ……

20年もたってようやく気づくなんて、なんだかひどく損した気分。
もしかして『グリーンマイル』のほかにも、今見たらまったく違った感想を抱く名作があるかもしれない。

あれも挑戦してみるか。
一度観ただけで心折られすぎて立ち直れなかった『ミリオンダラー・ベイビー』とか。映画を観たあとあんなに落ち込んだのは後にも先にもあのときだけだった。本当にめちゃくちゃ辛くて、観たことを後悔したくらい。
今観たらどう感じるのか、確認してみたい。

カールのチーズ味みたいに素敵な発見があるかもと思ったら挑戦する価値もありそうじゃない?

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