仮初の白という街
ごきげんよう、國枝志帆です。
ああ 全て与えて帰ろう
ああ 何も持たずに帰ろう
与えられるものこそ 与えられたもの
ありがとう って胸をはろう
藤井風『帰ろう』
小説『盗作家』の中の
【仮初の白】という章を書いていたとき、
BGMとしてずっと聴いてました。↓
そこは何かの部屋ではなかった。街だ。白い街だ。目に映るすべてが白い。建物も木も空も何もかも白かった。
人影を見つけ、さらにぎょっとした。道行く人々はみな、白い仮面をつけている。
「おや、君も盗作家かい?」
白い仮面の人が話しかけてきた。
「ここで仮面をつけていない人間に会うのは初めてだ。君は変わっているね」
僕は戸惑った。僕だって白い仮面の人間に変わっていると言われたのは初めてだ。
國枝志帆『盗作家』より【仮初の白】
ある文豪の遺作を読んだあと、
私の中に降り立ったのが仮面の彼です。
ミステリアスですが、
さっぱりとしていて優しく、
印象深い人物です。
仮初(かりそめ)の白。
雪の日の朝みたいに静かな白い街。
この街について書く時は、
藤井風さんの『帰ろう』が支えでした。
一歩先を照らすランタンであり、
進む方向を指し示すコンパスのような
役割を果たしてくれたと思います。
執筆中に何度も聴いた曲は
私の中に溶けて、
血を濃くしてくれている気がします。
文章にも溶けているといいなと思います。
最後まで読んでくださって感謝します。
あなたの今日が、
幸せな一日でありますように。
読んでくださってありがとう。コーヒー飲みながら毎日更新してます☕️