見出し画像

芽の出る季節

気象庁によると、29日には東海地方が梅雨に入り、今日30日は、午後は晴れたとは言え、東京も雨雲の顔が、もはや梅雨です。

我が家では、先週の日曜日に植えたいんげんが、顔を出しました。
本当はもう少し、早めに植える予定の種だったのですが、きちんと芽が出ているのが嬉しい。雨続きでも元気に育つのか、すこしづつ収穫しながら、緑のカーテンに育てていくのが楽しみです。

さて、本日『死都日本』を読み終わりました。
クライマックスが事象ごとに、あっちにもこっちにもあるので、読んでいる時はその山を章ごとにスイッチしながら登り続けるのが楽しいですが、
何より怒涛の政治劇。これを最後のクライマックスに持ってこられたところが、著者の大きな意図だと感じました。

この、作中の菅原首相経済マジック大作戦が、本当に大風呂敷のうえ、最後にはきゅっと閉じられているところに、こちらも、へとへとになるくらいの達成感を感じます。しかも、物語のその先にはまたもうひと災害も二災害も控えている。

その後来ると決まった大地震は、物語では語られない未来です。全部の日本が、気を張りながら、気力と災害前の準備と希望を見据えるだけでさらなる災害に立ち向かうような状況、そして人口のさらに減っていく様子、負けないよう振り絞って生き抜かなければ生存の危うい様子が見えるようでした。

この本が初回発行された2002年から見ると、私たちの住む世界への予言となっていたのが、さらに驚きです。広島の地形から土石流が来ることがわかっている事も、さらっと作中で触れられています。

「やっぱり、誰もがそう思うよね!」と言いたくなるように、小松左京の『日本沈没』と並べられたり。解説にも養老先生との対談があったり、圧倒的な存在感の小説でした。

それにしても、著者さん、広島のご出身だったとは、これも驚きです。
おりしもサミットの後。我々の現首相も、広島出身。
小説の中、原発に対しての姿勢も含めて、地学と危機意識のむすびつきが、まるで脅かして脅かして脅かす、予言書のようでした。

脅かすと書きましたが、阪神淡路大震災で被災されたことをきっかけに書かれたともあり、まさに警鐘。現実ではこの本をきっかけに、火山の学会まで開かれるまで物事を確実に動かしたという反面、私自身、2023年のここに至るまでこの本を知らなかったことに、大きな本当がある気がします。

その情報に触れることのできる人が、限られること。必要な時に必要な場所や人に、必要な情報の届けられることが、実際はかなり稀有なことなのだということです。

物語冒頭は特に、災害時のそのような状況が描かれていたように思います。そういった情報の伝達が、特別な技能や才能、運を持った人の危うい共同作業で成り立っていること。その、尊さと危うさ。有意な情報の、日々に埋もれていってしまうこと。

人為的な滞りを減らすためにも、この危機に関しては、それこそAIがキャッチして人には感知できない危険をポップアップする仕組みを作らせ、人類がなにもしなくても回避率を高くしていく状況を作る、という仕事が急務なのではと感じました。

火山帯7つのうえの日本にくらしている以上、文句なく、読んでおいて良かった本です。『SF超入門』の冬木糸一に素直にお礼を言える状況なら、さらに良かったのに🌋(詳細は私の過去のnoteにございます💧)

いいなと思ったら応援しよう!