まさか、の『話を戻そう』
おはようございます。
今は『死都日本』石黒耀著、を読んでいるのだけれど、先日まで『話を戻そう』竹本健治著を読んでいた。
『話を戻そう』は、私が大好きで、一時期は小説を書こうと思って資料を集めていた「からくり儀右衛門」が出てくるので読んだ本で、読むのが本当に楽しかった。
おりしも熱海の山の上の方にある、黒船当時、急場で必要になった大砲作りに欠かせなかった反射炉も見に行ったすぐ後だったので、とても興味を持って読んだ。佐賀の鍋島藩って、まったく知らなかったけれど、あの大変な時代にすごく活躍したんだなぁ。しかも、新しもの好きのご隠居さんまでいて、舶来物を集めた部屋も、九州の方言も含めて楽しかった。
私の母方の祖母が博多出身のうえ、新しもの好きで、実にもうすぐ100歳という年齢。なので、鍋島藩の方言もどことなく似ていて懐かしかったけれど、今読んでいる『死都日本』でも、主人公黒木と一緒に逃げている宮崎日報の記者、岩切が、方言で話をしてる。同じく懐かしいなぁ、と思いながら読んでいたら、
なんと『死都日本』にも、鍋島藩の名前が出てきた。
しかも、その江戸上屋敷があった場所が、現在の首相官邸だというから面白い。まるで『話を戻そう』の中で活躍していた技術者や先見の明のある先人の魂が、このお話の中にも脈々と生きているようで胸が熱くなる。
『話を戻そう』の最後は、主人公たちがふっとどこか異次元のほうへきえてしまったような終わり方だっただけに、二つのお話が書かれた時期が前後していても、『死都日本』の中の江戸上屋敷の跡地の首相官邸に、とくべつなからくりを施して待っていてくれるような期待をしてしまう。
読んでいる私の中で、日本の同じ地域のことが書かれた二つのお話がつながっている。
この順番でいま読んでいる私にしか分からないかもしれないけれど、読書体験としては、こういう読み方も、とても楽しい。