読書感想文「自閉症の僕が飛びはねる理由」

この本は、私が人生で1番読み返している本。

筆者の東田直樹さんと、私は同い年。
東田さんは、言葉を発することのできない重度の自閉症。そんな彼のコミュニケーション方法はパソコンおよび文字盤ポインティング。
そんな彼が13歳の時に書いたのがこの本だった。


恥ずかしながら、今年知ったことがある。
駅に貼ってあったセサミストリートの可愛いポスターに目が止まり、そこに書いてあったのは、世界自閉症啓発デーと発達障害啓発週間の文字。
そんな日とそんな週があるのか!とすぐ調べた。

毎年4月2日は、平成19年に国連が制定した「世界自閉症啓発デー」です。また、この日から8日までを「発達障害啓発週間」と位置付け、自閉症をはじめとする発達障害への理解促進のために集中啓発を行っています。
厚生労働省HPより

今年は、東京タワーをブルーライトアップして、セサミストリートとSDGsこどもユニット・ミドリーズがパフォーマンスを行ったようだ。

こうやって啓発をして発達障がいをみんなで理解していこうぜ!という気持ちと、こういう特別な日がないと考えられないのか、と両極端の気持ちが生まれた。だが、当事者でない私がとやかく言う立場ではない。
とにかく、とても可愛いイベントが行われていてハッピーやん?というマインドでいこうと思う。


この、自閉症を理解しよう!という、とても難しいことに挑む1日に、この本は欠かせないと思う。

この本の私のお気に入りポイントはこちら。

  • 一問一答になっていてとても読みやすい

  • 東田さんが紡ぐ素直な言葉たち

  • 想像しやすいのに、私の思いつかないような環境で例えてくれている

  • 最後の短編小説は映画化すべき

58個もの問いに東田さんが丁寧に答えてくれていて、理解されにくいと思われていた言動が、私もそう思う時あるなぁと共感に変わっていく。
さらには、なんで素敵な感覚なんだ!!と感動する答えも度々出てくる。
何度読んでも東田さんのまっすぐな言葉に打ちのめされる。


とても印象的だった答えが、
どうして目を見て話さないのですか?
という問いに対してのものだった。

みんなにはきっと、下を向いているとか、相手の後ろを見ていると思われているのでしょう。
僕らが見ているものは、人の声なのです。
声は見えるものではありませんが、僕らは全ての感覚器官を使って話を聞こうとするのです。
36ページより抜粋
 

声を見ている。ものすごく腑に落ちた。

私は似たような経験をしており、学生時代にソルフェージュという先生が演奏したものを聴音して楽譜に起こすという授業で、音階を見るような感覚があった。お分かりの通り音階は見えるものではない。
でも、見えるような感覚があった。
ソルフェージュ経験者で、わかる!という方がいれば連絡ください。

「声を見る」は想像できるし、なんとなく感覚としてあるんだなと理解ができる。
私レベルだと「言葉にならない感覚で〜」と聞き手や読み手の想像力を掻き立てる言葉は絶対に出てこない。
この言葉選びの巧みさがこの本の中に溢れている。


そして、自閉症の方と関わってきていない方には多くの発見があるだろう。
もちろん個人差はあるが、この本に出てくる、いわゆる困りごととされていることは、多くの自閉症の方が毎日戦っていることであり、一緒に悩んで向き合っているご家族がいる。

私が放課後デイサービスで働いていたときに出会った大好きな自閉症児さんも、似たようなことに悩まされて苦しんでいる様子を何度も見てきた。
その側で、その子とその子の周りの人たちの笑顔を増やそうと工夫されるご両親と、その子の出来ることを増やそうと試行錯誤したり希望を正しい形で叶えたりしようとする職員たちと時間を過ごす中で、笑顔が増えて好きなものが増えていく時間は、私がその子を支援していたのではなく、その子に私が教えてもらっていたような気持ちだった。
私はその子と一緒に行った消防署見学が楽しくて面白くて忘れられない。



最後に、私が1番好きな問いは
「テレビのコマーシャルを好きなのですか?」

答えは本で読んで、なるほどね、と笑顔になってほしい。

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