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インド先住民・ゴンド族の水の話

手漉き紙にシルクスクリーンで一枚一枚印刷する絵本で知られるタラブックスの本の中に、ゴンド族のスバーシュ・ヴィャムが描く『Water』という絵本がある。

人気絵本『夜の木』に比べてサイズも小さいし、オフセット印刷だからあまり目立たなけれど、この物語には、先住民の視点が示されていて、コロナ禍にいる私たちに突き刺さってくる。

ゴンド族は、前回の記事「一本の柱とココナツ。先住民の最強の神殿」で紹介したインド中部の森に住む先住民だ。https://note.com/tsomoriri/n/nc63577392d62

ある日、7人の姉妹が森の中の湖に水を汲みに行った。湖の水位が下がっていたので汲めずに困っていると、湖の精霊(写真)が姉妹に告げる。一番大事にしているものをくれたら、私がそっちへ行ってあげる、つまり水位を上げて汲めるようにしてあげる、と。そこで一番下の妹が「私の指輪を捧げます」という。

交渉成立。7人は水を甕に汲み、頭に載せて帰ろうとする。ところがそこで、末っ子が「やっぱり指輪を取り返したい」と。姉妹は1人ずつ湖に入り、指輪を探すが見つからない。1人、2人、3人と、姿が見えなくなり、ついに7人とも、湖に飲み込まれてしまった。

「なぜ私はこの昔話を今になって思い出したのだろう」と作者は綴る。「私たちは自然を必要とするけれど、自然は私たち人間を必要としていない。自然は寛大でさまざまなものを分け与えるけれど、そうあるためには条件があり、それを尊重しなければならない」と。

私たちは自然の一部であり、自然が私たちを生かしてくれている、という先住民の感覚に私たちはいつも学ばされる。いつの間にかそのことを忘れた都市生活者は、欲望のモンスターとなり、自然との約束を破棄し続けているのではないだろうか。

雨模様の今、水は無限に空から降ってくるような錯覚に陥るけれど、実は水はこの地球の中で循環しているだけだ。海に流れ海水になれば、人はそれを飲むことも体を洗うこともできない。また蒸発して、雲から降ってくるのを待つしかないし、地下水や地上の川を、淡水として流れている間にどのように活かすかにかかってくる。汚してしまったら、浄化する仕組みも大切だ。

今夕20:00からオンライントークセッションで水の話をオーガナイズします。ノコチームのビヨンド・コロナ vol.4「水の行方~ラダックと世界の水から日本の水まで」http://wallartproject.net/event/noco_online_talk_vol4/

タラブックスの先住民の絵本はこちらで販売中。『Water』は現在Sold out入荷待ちです。https://tsomoriri.thebase.in/categories/2262049



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