見出し画像

サツキとメイの父・草壁タツオさんの生き方に「コーアクティブ」を感じてたまらない

先日、奥さんが1週間出張し、8歳と5歳の子どもたちと過ごす、いわゆる「ワンオペ育児」を経験しました。頭をよぎったのが「となりのトトロ」のサツキとメイのお父さん。彼こそワンオペ育児の先駆者であり、彼だけに注目してトトロを観たところ、その生き方にコーアクティブを感じたのです。

待降節の今、コーアクティブ・コーチ仲間の Co-Active Advent Calendar の助けも借りて、綴ってみたいと思います。

◆おことわり
この記事では、私がDVD版「となりのトトロ」で聴いたセリフを私が文章化して引用する部分があります。この記事の読者の参考になることを願いつつ、版権者の方へのリスペクトをもち、部分的に引用させていただきます。


「となりのトトロ」、そしてタツオさんのこと

もはや国民的アニメーションと言って否定されようがないであろう「となりのトトロ」は、1988年に発表された映画のようです。つまり発表から36年経った今でも、あの質感が愛されているということに、何か人間観の普遍的なものを感じます。

そして、今回フォーカスする「草壁タツオ」さん。作中から推測するに、大学で考古学を研究されているようにお見受けします。サツキとメイの父親。ご病気で入院されている奥さまを気遣いつつ、カンタ一家の助けも借りながら、サツキとメイの三人暮らしを楽しんでいる様子が伝わってきます。

そんなタツオさんの言葉や行動に焦点をあて、私が感じたことを綴っていきたいと思います。


タツオさんの好奇心

やはり際立つのは、タツオさんの好奇心の眼差しです。この映画で好奇心というと、メイちゃんの開ききった眼や鼻の穴が印象的ですが、タツオさんの好奇心も半端ない。メイちゃんの好奇心は、タツオさん譲りなのでしょう。

たとえば冒頭、引っ越してきたボロ家の中で、謎のどんぐり1粒つまみ上げて呟いた一言。

「ふーん・・・」
「リスでもいるのかな」
「それともどんぐり好きのネズミかな」

「となりのトトロ」より

作業中にもかかわらず、どんぐりをじっくり見つめ、リスだけでなくネズミにまで想いを馳せてしまうタツオさん。このどんぐりを見つめる眼差しに、とても好奇心を感じます。

コーアクティブ・コーチングで、5つの資質のひとつと言われている好奇心。それは、コーチが自身の思い込みやフィルターを手放し、あたかもその言葉を初めて聴いたかのように聴くことの大切さを掲げている、と私はとらえています。

まるで少年のようなタツオさんの行動は、コーアクティブ・コーチングにおける好奇心の体現そのものだと感じるのです。


タツオさんの思い切り

ソフトでマイルドな印象が強いタツオさんですが、彼の「思い切り」が立ち現れるシーンがありました。それは、引っ越してきた夜、娘たちと3人でお風呂に入りながら、外で吹きすさぶ突風に怯えるシーン。メイも「おうち、ボロで潰れちゃうよ」と心配している様子です。

タツオさんも心配そうに「ハハハッ、引っ越したばかりで潰れるのは困るなあ」と言ったあと。突然。

「ウワッハッハッハ!」
「みんな笑ってみな、おっかないのは逃げちゃうから!」
「ガオーガオー!」

「となりのトトロ」より

そう言ってお風呂のお湯をバシャバシャ叩くのです!挙句の果てに、お湯が浴槽から溢れ出る始末。このシーンのタツオさんの描写もすごくて、こんな大きな口と歯が描かれたタツオさんは、ここだけだったかもしれません。

コーアクティブの眼差しでみると、思い切りがすごいですよね。思い切りを思い出し、コーチング・バイブルを引いてみると。

クライアントが思わず音を上げたくなったまさにその時、コーチであるあなたが勇気を持って彼らを恐れや諦めから呼び起こす必要があるでしょう。
(中略)
このように、コーチングにおける「思い切り」とは、クライアントともに行けるところまでどことん行くというコーチの決意なのです。

コーチング・バイブル第4版 p.152

あの瞬間は、タツオさんが「この家で一緒に家族と暮らす」の決意だったようにも見えてきます。


タツオさんの人を信じる姿

トトロに会うという大事件に遭遇したメイちゃん。タツオさんやサツキをトトロに会わせたい一心で森に案内するものの、「あれれ?」と会うことができませんでした。メイちゃんの口から細く出てくる「嘘じゃないもん」から、滲み出る悔しさが伝わってきます。

そのシーンでのタツオさんの一言。

「お父さんもサツキも、メイが嘘つきだなんて思っていないよ。
メイはきっと、この森の主に会ったんだ。
それはとても運がいいことなんだよ。でもいつも会えるとは限らない。」

「となりのトトロ」より

メイを信じる気持ち。「嘘じゃないもん」と小さくなるメイを、今見えている以上に大きな存在ととらえていることが、伝わってきます。同時に、サツキの気持ちも代弁していて、サツキを信じる気持ちも垣間見える。

コーアクティブ・コーチングの4つの礎のひとつ、NCRWが呼び起こされます。あらためてコーチング・バイブルから引いてみると。

人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である

コーチング・バイブル 第4版 p.31

これ以上の言葉は必要ないですね。まさにそうなんだと、思います。


終わりに

ここまで読んでくださってありがとうございました。脇役にとらえられがちな、サツキとメイのお父さん・草壁タツオさんに焦点を当ててみました。

彼にだけ注目してトトロを見て気づいた2つを綴って、閉じたいと思います。

まず、彼には余白があるということ。何か見聞きしてから言葉や行動になる前に、余白がある。コーチがよく言う「スペース」と似た質感です。余白の大切さをあらためて感じました。

そして、穏やかな笑顔が多いと思われがちなタツオさんですが、多かったのは真顔。まるで鏡のような真顔が印象的でした。先述した余白にも通じる物があるかもしれません。真顔のコーチで居たいな、とも思いました。

個人的感想と個人的解釈をつらつら書いてしまいましたが、いつか、どなたかの何かのお役に立ったら嬉しいです。

今日も佳い日で。

いいなと思ったら応援しよう!