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「援農からつながる、生き方のデザイン」をテーマに畑で話した内容をシェアします!

東京都三鷹市にある冨澤ファームさんが取り組む「畑のオープンキャンパス」という援農受け入れの場で、「援農からつながる、生き方のデザイン」というテーマでお話させていただきました。しかも畑で!このnoteでは、お話した内容をシェアします。

「自分の生きる軸って何だろう」の解像度を上げるのに、援農の体験を入口にしてはどうでしょう?という内容です。冨澤さんの魅力が伝わり、聴いてくださった方の追体験の場になりますように。また、来られなかった方にも、少しでも伝わったら嬉しいです。


はじめに

冨澤ファームさんのこと

東京都三鷹市の冨澤ファーム、4代目の富澤剛さん。農と人、人と人がつながる場になればという願いのもと、「畑のオープンキャンパス」を毎月開催され、ファミリーから学生さん、社会人など多くの方を受け入れていらっしゃいます。畑仕事で援農した後、ともに青空のもとでランチを囲むひととき。

そして最近、その後に「サタデーカレッジ」という新たな試みにもトライされています。ランチの後に学びの時間を持つというもので、これまで食や農の最前線の方がお話されて来ました。

光栄なことに、第3回、2024年9月28日のサタデーカレッジで、私がお話する機会を頂きました。テーマは「援農からつながる、生き方のデザイン


オファーをいただき、何を話そうか考えた

今年の夏のある日、私が冨澤さんのお仕事をお手伝いしていた時のことです。軽トラの助手席で私がコーチングのことを話していると、冨澤さんから「サタデーカレッジで何か話してもらえませんか?」と打診を頂きました。ピンときて「やります!」と即答。とはいえ、さて何を話したら・・・?

援農に来ているファミリー、学生さん、社会人の方。畑で身体を動かしながら土まみれでホクホクした表情の皆さんを思い浮かべると、話したいことがスーッと湧いてきました。「考えることも大事だけど、身体の五感で感じることも大切にしてほしい」あ、これだ。

畑にはいろいろな方がいらっしゃいます。カテゴライズできないくらい、まるで小さな地球。コーチとして眼の前の人の人生に関わる仕事をする私には、生き方が交わっているようにも見えます。「生き方」か。

そうだ。身体の五感に素直になって自分につながった経験も踏まえながら、これまでの学びも混ぜ込んで、援農からつながった生き方のデザインについて話をしてみよう。

なんとなく、私の中で、ゆるく淡く決まりました。


「援農からつながる、生き方のデザイン」こんなことを話してみた

ということで、本編に入っていきます。録音の書き起こしではないので、当日の内容と少し違う部分があるかもしれませんが、ほとんどは同じだと思います。文字でも追体験してもらえると嬉しいです。

それでは・・・スタート!!


そもそも「生き方」って、なんだろう?

今日は「援農からつながる、生き方のデザイン」を入口に話をしていきたいと思います。テーマに「生き方」を入れているわけですが、「生き方」って聞いて何を思い浮かべますか?

学生さんなら「卒業後どうしよう」って思っているかもしれない。社会人なら「このポジションを続ける?」「今の会社に残るか転職するか?」5年後10年後どうしたいかを問われることもあるでしょう。プライベートに目を向けたら、結婚、子育て、介護など。いろんなことが思い起こされるかもしれません。

一方、もう少し日常に目を向ければ、「今日何着よう」「明日何を食べよう」という選択も、生き方だと思います。

人は、1日に10,000回判断をしているとも言われています。もしかしたら、生き方というのは「自分がどういう軸で選択するか」ということなのかもしれません

自分の軸につながれると、なんとなく自分に素直に、自然に生きられるように思います。では、自分の軸って、なんでしょう?


自分の軸、言い換えると「価値観」の分かりづらさ

自分の軸というのは、「価値観」という言葉にも置き換えられるでしょう。もし「自分の価値観って何ですか?」って聞かれて、スラスラ過不足なく答えられるでしょうか。多くの人にとって、難しいように思います。

それは「自分がまだ人間できていないから答えられないのだ・・・」と「まだ」「足りないもの」のせいというより、ある種、価値観が持っている特徴ゆえではないかと思います。では価値観が持っている特徴とは何か。私が個人的に考える特徴をシェアします。

まず、「価値観は、普段は目に見えないもの」と考えています。行動の氷山モデルでは、行動を氷山に喩えて表現しています。「行動」そのものは、海面から上の部分として見えている。しかし海面の下にある氷山、ここに行動パターン、価値観が存在していると言われています。普段は見えないものの、必ず存在しているわけです。

そして、「価値観は、評価判断できない」という性質を挙げます。ある人は「争いは良くない」と言う。一方、ある人は「争ってでも自分を主張するべき」と言う。互いに真逆のように聞こえますが、どちらが良い悪いというわけではない。このように善悪の基準がないのも、難しさを生んでいるかもしれません。

さらに、「価値観は、一つの言葉で表現できない」のも特徴だと思います。たとえば皆さんが今日このオープンキャンパスにいらっしゃった気持ちには、どんな価値観があったのでしょうか?例えば「人とのつながりを得るのが好き」「農業を大事にしたい」・・・どこまで挙げたら、挙げきったと言えるでしょうか。

ここまで挙げると、価値観は自分にとって大事だけど、とても分かりづらく、フワッとした印象があります。では一体、これに、どう気づいたら良さそうでしょうか。


頭で価値観をあぶり出そうとしてもうまくいかないのはなぜか

「では、目を閉じて価値観について考えてみましょう!!」・・・と言われても、私だったらうまくいかないです。なぜか。私は、脳や思考の仕組みも影響しているのではないかと考えています。

有名な「マズローの欲求5段階説」では、人間の欲求をピラミッド型5層に分けています。特徴的なのは、下位の欲求が満たされてはじめて上位が満たされるということ。最下層は「生理欲求」と言われ、その上が「安全欲求」と言われています。つまり、脳のミッションは自分の生命と安全を守ることのようにも感じます。

もし「本当にやりたい仕事に転職したい!」など思おうものなら、「待て!家族は?お金は??」という声が自分の中に湧いてくるかもしれません。これはまさに自らの安全を守ろうとするものです。私が独立を考え始めたときも、同じことが起こりました。一方で、自分にブレーキをかける声の裏側にもまた、自分の価値観が存在している。

では、一体どうしたらいいのか。

そこでヒントになりそうなのが「身体の五感から、価値観にアクセスする」ということです。


身体の五感から、価値観にアクセスしてみたらどうか

私の個人的な考えですが、頭で考えるよりも体感覚で感じるほうが、自分に素直になれるかもしれない、と思うのです。

「今日援農に来て、初対面の人とも言葉を交わして畑仕事に汗した体験から、高校時代の学校祭でみんなで一つのものを創り上げた時間を思い出した」という方もいるかもしれません。このように、身体で感じたことは、意外にしっくり自分の内面にアクセスするきっかけになりうると思うのです

慶應義塾大学・前野隆司先生は、ご著書「幸せのメカニズム」で、こう述べておられます。

ドイツの心理学者ストラックらの実験によると、ペンなどの棒を前歯でくわえると、唇でくわえた場合よりも、楽しい気分になったというのです。
(中略)
私たちは、ふつう「楽しいから笑顔になる」と考えがちですが、この研究の結果は、「笑顔になるから楽しい」という因果もありうることを示しています。

前野隆司著 "幸せのメカニズム" p.164 (講談社現代新書)

「笑顔になる」つまり「口角を上げる」という身体の行動が先に立って、楽しいという感情が生まれる、とも考えられます。この事実から、私は、もしかしたら、身体で感じた感覚をもっと信じることで、自然体の自分につながれるのかもしれないと思うのです。

畑を歩いていた時の足裏の感覚。スコップを握りながら身体を動かした感覚。休憩の時に麦茶が染み渡っていく感覚。長靴を脱いだ後の感覚。

「童心に帰る」「充実感」「開放感」「清々しさ」きっと、いろんな言葉が湧いてくるでしょう。そして、湧き水のようにまだまだ湧いてきそうです。

価値観を言葉に置き換えて憶えるのも大切だと思いますが、無理に単一の言葉を探して押し込もうとせずに、自分にとって気持ちよかった瞬間やその感覚を憶えておくこと、それを必要な時に引き出せることも、ご自身の生き方につながるきっかけになるかもしれません

もし、その感覚とともに日常を過ごして何かの発見や気づきがあったら、また身体の五感で確かめると、もっと深まるかもしれません。きっと、また畑に来るというのも、その選択肢のひとつでしょう。


終わりに

最後に、「ご自身にとって大切だと気づいたら、ぜひ大切にしてほしい」という願いを込めて、星野道夫さんの言葉を引き、場を閉じました。

短い一生で 心魅かれることに 多くは出合わない
もし見つけたら 大切に 大切に

"星野道夫" p.95 (MUJI BOOKS)

こういったお話の場は初めてで、何が生まれるだろうと心配していた部分もありましたが、20名以上の方が聞いてくださいました。そして、こんな感想もいただきました。

「最近、自分の仕事をどうしようか選択した時期だったので、腑に落ちた」
「価値観って、わかりやすい言葉にしなくてもいいんだな」
「自分の気持ちに、素直になってみたい」

もし私の話が触媒となって、何か気づいたり持ち帰っていただけたのなら、それは聴いてくださった方のスタンスと、冨澤ファームさんの場の力なんだと思います。

本当にありがとうございました!また畑でお会いできると嬉しいです。

今日も佳い日で。

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「向かいたい未来へ行動するために、コーチングで伴走させてください」
CTI認定プロコーチとして、コーチングを通じて行動の変化を応援しております。コーチングのお申込やお問い合わせはこちらから、お待ちしています。



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