夢遊病
繁忙期、夢遊病のように仕事をしている。
知らない人に会って、その人と向き合って、そしてまた知らない人に会う。毎日がそんな感じ。慣れていないけど慣れている…慣れさせている?そんな私もフリーになって10年。
夢遊病みたいに現実と夢の境目がない時はヒトリエのsleepwalkを歌ってしまう。なかなか難しい歌だけれど、ヒトリエは好きだ。
https://www.youtube.com/watch?v=vZQsQRLEyVQ
大学時代ぐらいだろうか?流星の如く現れた『現実逃避P』ローリンガールが好きだな、ぐらいだった。その数年後フェスで出会った現実逃避P=wowaka君の率いるヒトリエにじわじわハマり、あれこれ音楽を聴いていくようになる。そして去年再び経験した好きだったバンドのフロントマンの死。wowaka君にはもっと生きてもらいたかった。
彼の死は妙に私達世代だと「フジファブリック」の志村とかぶるものがある。揺るぎない天才の突然死、やはりこういう緻密な音楽は人の寿命を縮めるのか?凡人の私にはわからない話だ。
前置きはとにかく私はヒトリエのsleepwalkが好きだ。「放蕩しようぜ 徘徊しようぜ」特にこの歌詞が。若い頃はよく放蕩していたな…って。今は唐突に放蕩なんてできない。MV見てなかったなぁとふと見たMVが私の行きたい場所だった。YouTubeで秘境駅を紹介している方が載せていた「東成田駅」私の職業病で真っ先にここだと判断してしまい、ほんの僅かな休みの日にスカイライナーに乗ってやってきたわけだ。
行き方が複雑と聞いていたので一週間熟読していたブログを暗記して成田第二ターミナル駅で降りる。改札の目の前に東成田駅の看板があるのは即座にわかった。こんなの知らない人なら見逃してしまう。
道がとにかく長い、怖いと聞いていたので覚悟をしていた。500m。長い…平坦かと思ったら坂もある。ひたすら歩いていく。まるでシェルターにでも行っている気分。
後ろには鉄道好きの男の子が歩いていた。こんなところ、変な場所オタクの私や鉄オタしか行かないんだろうな、と思いながら。
500m歩くともわりとした空気が辺りを漂う、違和感のある広い空間は少し不気味だ。性にもなくwowaka君がMVの時に座っていた椅子に座る。多分こんなことしているファンは山ほど居るのだろうなとドライに考えながら。
今日は相棒を連れてきました。相棒もwowaka君と同じ席に座らせた。
辺りは田舎の駅のように静かで改札のピーンポーンの音だけが響いている。とにかく静かだ。
地上に上がるエスカレーターは稼働していなかった。物珍しくて相棒を乗せてみた。普段はこんなもの撮れないなとちょっと笑ってしまう。
せっかくなんで周辺も散策。羽田空港なら仕事で何度も利用しているし、羽田空港内にご縁があって今年は撮影で関係者以外立ち入り禁止の場所に入らせてもらったりしているけれど、成田はアウェイ。
そういや海外に最近行ってないもんなぁ。やはり空港、羽田と内容は変わらないけれど私の目を引いたのはこの数字。一瞬何故だろうかゾッとしてしまった。でもとても美しい。こういう雑多なプロダクトの美って好きだな。
次は駅構内へ。久しぶりに見た"切符"
駅には人っ子一人いない。独特な雰囲気である。
私は東京生まれ東京育ち、人のいない駅なんてど田舎に旅行した時ぐらいしか見たことが無いのだ。しかもこんなだだっ広い空間に私一人なのは中々に怖い。静かで埃っぽい
やたら古臭いベンチに座ると向こうにもベンチが見える。左上には写真だと見えないけれど「なりたくうこう」と古臭いフォントで書かれている。かつてここが成田空港駅だった事、成田空港が拡大してこの場所は空港で働く人々が使う駅になってしまったのが伝わる。
仄暗い向こうのホームは自分がいない鏡のように見える…
やけに古臭いホテルの広告のついたベンチもあった(明るく撮れるけれどちょいと雰囲気的に暗めに)
相棒も
さてさて帰ろうかなと思ったら何のアナウンスもなく音を立てて電車が向かってきた。びっくりした。周りには2〜3人人が増えていた。多分鉄道好き?次の駅は日本一短い?と言っている芝山鉄道に向かう駅なのでそれに乗る人々なのかもしれない。駅は生きているんだなと少しほっとした。
それにしてもアナウンスも発車の音楽も無いってとても不思議。この駅にはそんな事必要ないのかもしれない。
読んでいたブログにフェンスの向こう側にレンズを向けると面白いものが写ると書いてあったので撮ってみた。かつてここが空港に向かう人々で賑やかだったのが伺える広い空間が現れた。
横にある取り外された「なりたくうこう」の看板が切ない。どれだけの人がここを利用したのだろう?ここが使われていた時代に私は来たことがないので知る由もない。
久しぶりに成田空港ターミナルも見ようと少し足を運ぶとまるで東成田駅のようになっていた。大学生の時安い飛行機で行くためにここまで来て第三ターミナルまで歩いた以来だ。
あまりに閑散としていてコロナ禍の恐ろしさを感じる。ショッピングモールも9割が閉じていてかろうじて開いているスタバでアイスコーヒーのグランデを一気飲みした。
外国語が溢れかえる玄関口は、まばらな人と日本語しか聞こえてこない。
なかなかに辛い現実を突きつけられた感じがする。まだ何も終わってはいないんだな。
帰りは普通に京成に乗って帰ろうとしたけれどスカイライナーに乗って爆睡してしまった。
東京の景色が見えた時目が覚めた、明日からまた恐ろしい量の仕事なのに何してんだと思いつつ。でも私はここに行きたいと思ったら何しても止まらないんだからこれでいいのかもしれない。
明日から私はまた「夢の中」