“コト”のマネジメント
こんにちは、BYARDの武内です。
『ユニコーンオーバーロード』というゲームを始めました。これまでシミュレーション系のゲームで感じていた面倒くさい要素がうまい感じに解消されていて、盤上の戦術に特化できるところがツボでした。クリアできるのはだいぶ先になりそうですが、頭を切り替える手段として、しばらくプレイしてみようと思っています。
さて、今回のnoteは「なにをマネジメントするのか」という点について、考えていることを書いていきます。
1.“ヒト”と“コト”の関係
BYARDは今年に入ってから「“人”と“業務”をつなぐプラットフォーム」というものを掲げました。元々は「業務設計プラットフォーム」と自分達のプロダクトを呼称していたのですが、「業務設計」という手段や手法よりも一段上のレイヤーでの存在意義を社内・社外で認識してもらうためです。
創業時から「属人化」はBYARDが解決したい課題として掲げてきたものですが、プロダクトを作って提供してみる中で、「属人化というのは課題ではなく、組織が陥っている状態である」ということが見えてきました。
「属人化」することで引き継ぎの機能不全やエンプロイーオンボーディングのコストが高くなる、新人が定着しないなどの多く組織問題を引き起こしていることには間違いないのですが、じゃあ「属人化を解消しましょう」と言ったところで、どのようなアクションを起こしたら良いのか分かりません。
そこで「属人化」という状態を「“人”と“業務”が密結合している」状態だと掘り下げて再定義してみました。人と業務が密接に結びついているので、「あの人しかできない(分からない)」業務が生じる、という意味です。よって、「属人化の解消」とは「“人”と“業務”が切り離された状態」ということになります。
ただし、何も考えずに「“人”と“業務”を切り離す」ことはできません。その業務は誰かが実行しなければいけないから存在しているわけであり、“人”だけを切り離すと単に担当者がいない宙に浮いた状態になるだけだからです。
そこで必要になってくるのが、その切り離された“業務”を置く場所であり、それが「“人”と“業務”をつなぐプラットフォーム」であるBYARDである、というのがプロダクトとしての存在意義の部分でした。
そこからさらに思考を進めて、マネジメント視点での「“人”と“業務”をつなぐプラットフォーム」の存在意義を考えてみました。
マネジメントというと一般的には“ヒト”の方にフォーカスが当たりがちですが、本来的にいえばあくまでもマネジメントするべきは“コト”(≒業務)の方であるべきです。いわゆるプロジェクト・マネジメントなどは「プロジェクト」という“コト”を中心に置き、それを推進する上でどのように“ヒト”をアサインするか、という部分にフォーカスが当たっています。
では、一般的な業務のシーンを考えるとどうでしょうか。マネジャーは本来的に“コト”をマネジメントして成果を上げたいはずですが、多くの場面で「“人”と“業務”が密結合」してしまっているため、業務の詳細や状況がマネジャーから見えなくなっており、“ヒト”を通じて“コト”をマネジメントせざるを得ないという状況に陥っているのです。
ピープル・マネジメントという分野もありますが、こちらは“コト”ではなく“ヒト”にフォーカスした話です。本来は“コト”をマネジメントするべきなのに、それができないから“ヒト”を“コト”をマネジメントせざるを得ない。逆説的にいえば、この状態である限りマネジャーにとっても「属人化」は解消されると困ります。唯一の“コト”へのアプローチ手段である“ヒト”との繋がりが絶たれてしまうからです。
当初、私たちは「属人化は組織課題・経営課題であり、解消された方が良い」という価値観でいたのですが、この“ヒト”と“コト”の関係をマネジメント観点で捉え直した時、属人化が一向に解消されないという問題の根深さに気づきました。属人化によって様々な問題が引き起こされるが、一方で属人化しておいてくれないとマネジメントができなくなる。そういうちょっとねじれた構造になっているのです。
2.“コト”のマネジメント
では、どうすればマネジャーが“コト”のマネジメントができるようになるのか。私たち目線でのアピールとしては「“人”と“業務”をつなぐプラットフォームであるBYARDに業務をのせれば、“コト”のマネジメントができるようになります」なのですが、これはあまりにも我田引水すぎる説明であり、そもそも“コト”のマネジメントをしなければいけないことに気づいていない人たちには不十分です。
“コト”のマネジメントについて、世界で最も成功しているツールがSalesforce(現在のプロダクトラインナップでは「SalesCloud」ですが、分かりやすいので以下も「Salesforce」と呼称します)です。
Salesforce導入前と後で圧倒的に変わるのが「商談に対する」マネジメントです。
商談についてはフェーズ、受注確度やクロージング予定日、金額など様々な要素をマネジメント側が適切に吸い上げ、一括で管理する必要があります。日々変わる商談の状況やそこに付随するアクションのログや議事録なども含めてかなり複合的に見ていく必要があるのですが、表計算ソフトやノーコードツールで作った単なる請求のためのDBでは、金額や受注予定日や受注確度以上の情報を管理するのは不可能です。
そのためSalesforce導入前はマネジャーは、“ヒト”(営業担当者)を通じて“コト”(商談)をマネジメントせざるを得ません。営業担当者の下に商談がぶら下がっている状態であり、営業担当者から情報を吸い上げなければDBに登録されている数値以上の情報は把握できません。情報が適切かつタイムリーに把握できないので、ある意味“コト”のマネジメントは諦めざるを得ない状態です。
それがSalesforceを導入し、適切に商談情報が管理されるようになるとレポートやダッシュボードを通じてマネジャーは“コト”(商談)の状況を手元で把握し、マネジメントができるようになります。マネジメントするためのアクションを起こす先は、これまで通り“ヒト”(営業担当者)なのですが、情報をタイムリーに把握しているため、適切な打ち手を素早く起こせますし、マネジャーの時間が遥かに有効に使えるようになります。
Salesforceの原始的な機能(Chatterやレポートなど)は全てマネジャーが適切に“コト”をマネジメントするためのものです。この思想の有無がSalesforceとその他のCRMやSFA(Salesforceっぽいもの)との間に決定的な違いを生み出していますし、Salesforceをうまく活用できていない組織はこの思想が理解できていません。つまり、Salesforceは“ヒト”(営業担当者)と“コト”(商談)を切り離し、“コト”(商談)のマネジメントを可能にしたプラットフォームであるということができるのです。
Salesforceの話が長くなってしまいましたが、私たちがイメージしている「“コト”のマネジメント」「“ヒト”と“コト”を切り離す」という状態をイメージしていただくために引用しました。
世の中の変化が激しく、最適解が常に変わりうる状況で“コト”のマネジメントができないことは、時に致命的な意思決定の間違いやトラブルを引き起こす原因になります。人手不足があらゆる産業で加速する中で“ヒト”に依存したマネジメントは、有効に機能する場面が限りなく少なくなるでしょう。
BYARDは「商談」よりもさらに一段上のレイヤーとして「業務」を適切にマネジメントするためのプラットフォームです。読み物としてのマニュアルやフロー図ではなく、業務を動かすプロトコルを置くためのプラットフォームとして考えています。
現時点でのAIは業務プロセスのほんの一部をラクにするだけであり、業務という観点では、便利なもの以上でも以下でもありません。AIの性能の問題ではなく、AIを適切に機能させるための業務実行側のプロトコルが“ヒト”に依存し、かつ、汎用的な処理ができるレベルでの業務定義がされていないことが、その要因です。当面AIが私たちの業務環境を大きく変えることはないでしょう。
だからこそ、“コト”(業務)のマネジメントができるプラットフォームが今こそ必要なのです。
BYARDのご紹介
BYARDはツールを提供するだけでなく、初期の業務設計コンサルティングをしっかり伴走させていただきますので、自社の業務プロセスが確実に可視化され、業務改善をするための土台を早期に整えることができます。
BYARDはマニュアルやフロー図を作るのではなく、「業務を可視化し、業務設計ができる状態を維持する」という価値を提供するツールです。この辺りに課題を抱える皆様、ぜひお気軽にご連絡ください。