余は如何にして糖尿病患者となりしか
世の中には、不調を感じてすぐに病院に行く人、不調でもすぐには病院に行かない人、二種類の人間がいるようだ。私は後者。糖尿病が発覚したのも、思えば、積極的に動いたというより流れの中でたまたま見つかったというのに近い。
発端は去年の夏。メガネをかけていても変な違和感があって不審に思っていたところ、自分で探ってみると右目で見た時にものが歪んで見えていることを発見。部屋の柱が夏の陽炎を通して見たときのように、揺れて、歪んでいる。横の梁も、はるか昔の高校時代の三角関数のグラフのように波打っている。両目で見ているかぎりはうまく像が脳内変換されて、かすかな違和感という以外、見え方で自覚されるものはないのだが、片目で見るとハッキリと見え方に異常がある。話に聞く、加齢によってものが歪んで見えるようになるという黄斑ナントカ症が始まったのかと考えてしばらく様子を見ていたが、様子を見てるだけでは良くならないと今さらながらようやく気づくと、やっと重い腰を上げて年に一度ドライアイの薬をもらっているいつもの眼科医へ行く決心がついた。これが暑さも峠を越そうという去年9月のこと。
眼科に行ってみると、いつもの先生からは、加齢黄斑変性の症状に見えるが網膜に出血があるのが気になる。ここではこれ以上検査できないので、網膜の専門クリニックを紹介しますからそちらで改めて調べてもらってください、との診断。それでは、と改めて紹介された網膜の専門クリニックの予約を取って診てもらうと、そちらの先生から「これは糖尿病だな」という、当方としては全く(!)寝耳に水のご託宣がいきなり降る。「糖尿病網膜症だね。眼科でやるとすればレーザー治療だけど、その前に、まず内科で見てもらって。内科の治療と並行して眼科の治療を考えていくことにしよう」との話。その場で血糖値測定してもらうと値が250。「通常の血糖値は100前後だから200を超えていればもう立派な糖尿病だな」とダメ押しのご託宣が、再び。
その翌日。この降って湧いたような糖尿病の出現を重い荷物のように心に背負って今度は近所の内科へ。内科で改めて血液検査、そして、糖尿病確定。内科では「昨日、今日、糖尿病になったというのではなく、それなりに年季の入った糖尿病です」と心に重くのしかかるような宣告が、またしても。
ご親戚に糖尿病の人は?と診察ごとに聞かれるが、心当たりは全くなし(そう言われてもよく知らないし)。ただ、それまでの生活習慣、食生活は(今から思えば)、こうすれば糖尿病になる、という模範的(?)手順があるとすると、自分はその手順の通りに歩んできたという実感はあり。自分は、夜更かしはする、食事時間は不規則、吉野家、やよい軒、ジャンクフード大好き。ポテトチップス、ビッグマック、ワッパー大好物。なんだったら、やよい軒+ビッグマックの流れも対応可、という極めてアナーキーな生活態度、食習慣をアラコキになっても続けていたようなヤカラであった。それを思うと、糖尿病、ムベなるかな、と首を垂れるほかない気もしてくる。おまけに健康診断もここ何年も受けたことがなく、生活意識全般についても法の埒外に生きる(?)アナキストだったと言わざるを得ない。今更取り返しはつかないが、反省。
内科では薬を処方され、同時に運動療法、食事療法の指導があり、並行して眼科にも通い…。あれから10ヶ月、もうすぐ一年。この間、薬の処方はなくなり運動療法と食事療法のみに(療法といっても自分で編み出したエクササイズとニセ地中海式ダイエットに過ぎないが)。それでも体重は10キロ減り、血糖値は安定化に向かい、まあ、なんとか体裁だけでも病人から普通人に復帰しつつある身となった。眼科では、生まれて初めて手術台に登って手術を受けるという経験もしてしまった。この辺りのことはまた後日備忘を兼ねて書くこともあるか…。
糖尿病といっても人それぞれ、10人患者がいれば10通りの異なった程度、病状があるのだな、と実感している。一般的には、自覚症状がないので軽く捉えられがちだが糖尿病を放っておくと心筋梗塞、脳梗塞、(失明に至る)網膜症などの合併症を発症するようになる。そうならないために治療を継続していくのが大切、と説明されることが多いが、私の場合、上述の通り、すでに合併症(網膜症)を発症した段階になってようやく糖尿病に気づくという、今から思えば、オマヌケでわりと際どい場所から出発して、一線を越えた向こう側から一生懸命こちら側に戻ってくる努力をしていた(している)ということになる。恐れ知らずなことではあったが、それでも、それなりに療法を続けていれば、一線を越えた向こう側からでも正常(に近い)血糖値まで戻すことはできるようだ。血糖値がそれなりに安定している今は、なんとなく展望がひらけて来たような気がしている。
それにつけても、私の糖尿病関係の情報はYouTube動画に負うところ大きいなあ…、と実感している昨今。
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