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【続】もっと関心を持って考えたいニュース(小規模鉱業の強制労働と搾取)

コンゴ民主共和国(DRC)は、リチウムイオンバッテリーや電化に不可欠なコバルトの世界最大の産出国です。
しかし、この産業は重大な人間的、社会的、環境的な問題があります。

DRCにおける小規模鉱業(ASM)は、児童労働、搾取、深刻な健康リスクがあります。

特に女性や子供が搾取のリスクにさらされています。

約15万から20万人の小規模採掘者がコバルト鉱山で働いており、安全でない条件のために多くの死亡事故が発生しています。

DRCにおける小規模鉱業(ASM)と大規模鉱業(LSM)間の関係は、トレーサビリティスキーム政治経済的な要因によって複雑な状況にあります。

コバルトが世界のサプライチェーンに入っていて、不法採掘と監督の不足が「人権侵害」「児童労働」を拡大させているのです。

トレーサビリティスキーム(Traceability Scheme)は、製品や素材が供給チェーンを通じてどのように流通しているかを追跡し、記録するシステムです。このスキームは、原材料の起源、生産過程、最終製品までの流れを明確にすることを目的としており、透明性の確保、品質管理、倫理的な調達の保証などに役立ちます。

iTSCi(国際錫供給チェーンイニシアティブ)などのトレーサビリティスキームは、ASMとLSMの協力を促進しているのですが、このスキームがASM鉱夫やトレーダーに影響力を与えず、大規模なブローカーに利益をもたらしているという側面は否めません。


2019年以降DRC政府は、Enterprise Générale du Cobalt(EGC)を設立しました。責任ある調達基準・規制の確立およびEGCがASMで採掘されたコバルトの唯一の買い手となり、国の豊富な鉱物資源を国民のための具体的な利益に変える手段として位置づけました。

2021年7月、EGCは、小規模鉱夫から購入するコバルトに対して、1トンあたり30,000ドルの最低価格を発表しました。

DRC政府は、ASMコバルトセクターを形式化することで、税収を増やし、生産の規律を高めること、事故や紛争を回避することを目指しています。



中国、価格暴落にもかかわらずコバルト鉱山の生産量を大幅に増加(2023 年 12 月 7 日REUTERS)

https://www.reuters.com/markets/commodities/china-turbo-charges-cobalt-mine-output-despite-price-crash-2023-12-06/


中国の企業は、コバルトの市場シェアを高めるために、DRCとインドネシアでコバルト鉱山の拡大を積極的に進めています。
これは、電気自動車(EV)産業向けのバッテリーに使用される金属への需要増加に応えるためです。

過剰供給による価格低下にもかかわらず、中国のCMOC Groupは2023年の最初の3四半期でコバルト生産量を144%増加させ、世界最大のコバルト生産者になる見込みです。
同社は、中国政府からの安価な資金調達を受けて低コストで運営しているとされ、2025年までにグローバルなコバルト市場における市場シェアを11%から約30%に引き上げる予定です。


2016年、中国の中国モリブデンが、米国の鉱業グループFreeport-McMoranの持ち株を買収しました。これで中国は、DRCのニッケル・コバルト事業を含む世界最大のコバルト鉱山の管理権を獲得しましたのです。

当時、中国の胡錦濤前国家主席は、33歳のジョゼフ・カビラ大統領を北京の人民大会堂で歓迎し、病院、鉄道、道路、学校、電力網の建設に6億ドルを投じる合意を行いました。
この背景には、カビラとその家族への賄賂として5500万ドルが流れた巨大な汚職スキームがあったという噂もあります。

モルガン・スタンレーは、世界の精製コバルト供給量は2023年に23%増加し、2024年までに7万4800トンの余剰が生まれると予想しています。

DRCは、採掘ロイヤルティと納税として毎年受け取る数百万ドルを維持するために「鉱山業者らに生産量を増やすよう圧力をかけ続けている」可能性が高いと警告しています。


中国がコバルト鉱山の生産を大幅に増加させている狙いは、中国の急成長するEV産業にとって、技術的および産業的発展に必要な原材料の確保は不可欠です。
市場の変動に関係なく、コバルト資源をコントロールし安定供給を保証することを目指していことは間違いないでしょう。

↑ 記事 ↑ でも取り上げたのですが、コンゴ民主共和国の大統領選挙の情報のアップデートされた記事を私は入手できていません。

日本にとっても「レアアースとレアメタル」は日常生活に欠かせないものなのですが、DRCに関する情報の多くはヴェールに包まれたままです。

資源の呪い(Resource Curse)
国が豊富な自然資源を持っているにも関わらず、それが経済的発展や民主化の妨げになる状況を指します。理由はいくつかあるのですが、豊富な資源が国の経済を単一の産業に依存させ、他の産業の発展を妨げる可能性があります。(これを「オランダ病」とも呼びます。)
また、資源の売却から得られる収入が政治的な汚職や権力の集中を引き起こすことがあり、政治的不安定性や紛争が生じることもあります。さらに、国際市場での資源価格の変動により経済が不安定になることもあるのです。

DRCは、「資源の呪い」が顕著に見られる例です。

DRCでのASM-LSM間は、協力よりも競合が一般的です。


限られた情報しか入手できていませんが

DRCにおける小規模鉱業(ASM)における児童労働、搾取、深刻な健康リスク問題を解決するどころか、悪化させていく方向に動いているとしか思えないのですが、、、



DRCに関することを調べて記事を書いていると、中国新疆地区での太陽光パネルの主要部品製造における「人権侵害」と「強制労働」の疑惑が頭をよぎったのです。


太陽光パネル用ポリシリコン生産における強制労働

新疆地区は、太陽光モジュールに不可欠な素材であるポリシリコンの世界供給量の約50%を提供していますが、ウイグル族やその他の民族的少数派に対する人権侵害と強制労働の問題が指摘されています。

北京は強制労働を否定していますが、太陽光パネル用ポリシリコンの生産に強制労働が関与している可能性についての懸念は続いています。


研究者たちは、強制労働で生産された部品を使用しないよう努める企業が、高優先度の政府プログラムとの関連性により困難に直面していることを指摘しています。
しかし、現実として「強制労働プログラム」が供給チェーンに深く組み込まれているとしても、その回避が簡単ではありません。


これらの疑惑は、再生可能エネルギーの推進と、炭素フリー電力目標を達成しようとする国々の国際貿易と政策に影響を与えています。

アメリカ政府は、人権への懸念から中国新疆地区からの太陽光製品の輸入を停止するよう求められています。
しかし、そのような措置を実施すると太陽光製品のコストが上昇し、太陽光エネルギーの導入が遅れる可能性があります。


これらの疑惑は、「再生可能エネルギーの追求」と「環境持続性」が、世界の供給チェーンにおける「人権侵害」「強制労働」に関する懸念と交差する複雑な倫理的ジレンマを浮き彫りにしています。



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