2020年マイ年間ベストアルバム50
今年はたくさん新譜を聴いたので、年間ベストという形でまとめてみます。対象は12月1週目くらいまでのリリース作品で、EPもリストに少し入れてます。トップ10はコメント付きです。また末尾にはおまけとして、2020年に出たリイシュー盤と編集盤、今年のライブパフォーマンスの個人的ベストも書いています。
50. Pure X『Pure X』(Fire Talk)
49. Daniel Blumberg『On&On』(Mute)
48. Takuro Okada『Morning Sun』(only in dreams)
47.Soft Kill『Dead Kids, R.I.P. City』(Cercle Social)
46.Khruangbin『Mordechai』(Dead Oceans)
45.Baxter Dury『The Night Chancers』([PIAS] Le Label / Heavenly)
44.Sports Team『Deep Down Happy』(Universal / Big Desert)
43.Jockstrap『Wicked City』(Warp)
42.Waxahatchee『Saint Cloud』(Merge)
41. OTTO『Clam Day』(PLZ Make It Ruins)
40. Matt Maltese『madhouse』(Nettwerk / Tonight Matthew)
39.Haim『Women in Music Pt.3』(Universal)
38.君島大空『逢層』(APOLLO SOUNDS)
37. Charli XCX『how I’m feeling now』(Asylum)
36. Choir Boy『Gathering Swans』(Dais)
35. Caribou『Suddenly』(PLANCHA)
34. John Carrol Kirby『My Garden』(Stones Throw)
33. 柴田聡子『スロー・イン』(IDEAL / P-VINE)
32位. Porridge Radio『Every Bad』(Secretly Canadian)
31. SAULT『Untitled (Rise)』(Forever Living Originals)
30. Laura Marling『Song For Our Daughter』(Chrysalis / Partisan)
29. HYUKOH『through love』(DooRooDooRoo)
28. The Magic Gang『Death of the Party』(Warner)
27. Childish Gambino『3.15.20』(mcDJ)
26. Phoebe Bridgers『Punisher』(Dead Oceans)
25. Mac Miller『Circles』(Warner)
24. Car Seat Headrest『Making a Door Less Open』(Matador)
23. Gezan『狂(KLUE)』(十三月)
22. BBHF『BBHF1 -南下する青年-』(Beacon LABEL)
21. Arca『KiCk I』(XL Recordings)
20. Yung Lean『Starz』(YEAR0001)
19. Happyness『Ouch(yup)』(Infinit Suds)
18. Fontaines D.C.『A Hero’s Death』(Partisan)
17. Yaeji『What We Drew』(XL Recordings)
16. Oneohtrix Point Never『Magic Oneohtrix Point Never!』(Warp)
15. Soccer Mummy『color theory』(Loma Vista)
14. Minor Science『Second Language』(Whities)
13. Bo Ningen『Sudden Fictions』(Alcopop!)
12. Yves Tumor『Heaven To A Tortured Mind』(Warp)
11. ARTHUR『Hair of the Dog』(Honeymoon)
10. mei ehara『Ampersands』(カクバリズム)
このアルバムを作るにあたってmei eharaは1年で300曲くらい作ったとラジオで言っていて驚愕した。トリプルファイヤーの鳥居真道や元どついたるねんのCoffなどがバックをつとめるバンドの演奏もタイトで、歌を引き立てていて素晴らしい。抽象度の高い歌詞は彼女の表現におけるシグネチャーであるが、決して聴き手を突き放しすぎず心にどこかに温かい感覚が残るのが不思議である。
9. Tennis『Swimmer』(Mutually Detrimental)
"Need Your Love"という先行シングルは年間ベストトラック上位5曲に入れたい。ドラムの音色はじめ全体的に60年代とかのレトロ感を出しながらも、ときに現代的な音作りも混ぜてくるのが格好良い。アルバムアートワークやMVなどのビジュアル面に関しても、本人たちは60年風ファッションに身を包んでいながらも背景や質感にはモダンな雰囲気が漂っており、コンセプトや世界観を作り込んできている点も素敵。
8. Tame Impala『The Slow Rush』(Modular / Island)
普段ヒップホップを主に聴いている友人が、一年中このアルバムを聞いていたそうだ。Kevin ParkarとTravis Scottとの交流についてはわざわざ言及するまでもないかもしれないが、今やインディーロックの枠組みでのみ語るには大きすぎる存在となったTame Impala。Kevinの音楽がどの点においてメインストリームのサウンドと重なるかといえば、それはトラップもサイケデリックも結局は音響的快楽の追求がその本質にある音楽ジャンルだからであろう。その意味で、彼がダンス・ミュージックに向かうのは必然だったのかもしれない。とにかくドラムの音が始終最高に心地良いアルバムだった。
7. サニーデイ・サービス『いいね!』(ROSE RECORDS)
サニーデイや曽我部さんの過去の活動をそれほど深く追っていなかったこともあったからか、新人バンドみたいな感覚で聴いて衝撃を受けてしまった。初めて組んだバンドが最初に出した音のようでありながら、言葉は円熟していて軽やか。長いキャリアを積んでも、何歳になっても、新しい気持ちでこういうものを作れるんだと教えてくれる。
6. King Krule『Man Alive!』(XL Recordings)
正直全部同じ曲に聴こえる、のだが、アルバムにおいて完璧に一貫したムードで最後まで聴かすことがいかに難しいことか。始終ヒリヒリしているけど、なぜか聴き流すことのできるカジュアルさもある。この人はずっとマジで怒っていて心配になるし怖いけど、やっぱりめちゃくちゃ信頼できる。
5. Grimes『Miss Anthroposcene』(4AD)
こういうダークな世界観やサウンドが好きになるようになったのは、ここ1,2年の自分の中での大きな変化だなと思うし、やっぱり世界がどんどんヤバい方に向かっているからそういうポップミュージックが増えているなと思う。でもそんな暗い世界でも、イーロン・マスクと彼女が付き合ってるという事実はちょっと希望だし、Grimesが今年出産した子どもに「X Æ A-12 Musk」と名付けたのは意味がわからないけど良かった。ミュージックビデオ含め、彼女が妊婦である自分の身体を常にアートに取り入れていってたのも感銘を受けた。
4. The 1975『Notes on a Conditional Form』(Dirty Hit)
2019年は個人的に完全にThe 1975イヤーで、大傑作『A Brief Inquiry Into Online Relationships』のリリース、そして夏にはサマソニでの人生ベスト級のパフォーマンスと、とにかく1年中The 1975に熱を上げていた。そのあと、何度かのスケジュール延期を経ての今作のリリース。コロナのせいでイギリスからのレコードの発送が遅いので、歌詞の翻訳も読めるからと久しぶりに国内盤CDまで購入。先行シングルの時点で前作ほどの歴史的傑作にはならないと分かっていたけど、あの先行シングルのバラバラ具合をちゃんと1枚の作品にまとめてきたのには感動した。アンビエントのトラックも、今年のアンビエント/ニューエイジ流行りの耳によく馴染んだ。今年は彼らを入り口にBrian Enoにもハマった。個人的ベストトラックは、"Frail State Of Mind"と"Nothing Revealed / Everything Denied"。
3. Porches 『Ricky Music』(Domino)
1曲目の歌い出しの時点で、その声の近さと、変なビブラードの加工でもう号泣。ベッドルーム・ミュージックの今年のマイ最高峰はこちら。リリースされたのも買ったのもコロナになる前だったと思えないほど、ロックダウンの心にすごくマッチする作品だった。しかもこのアルバムで人生で初めて新譜レコードをジャケ買いした気がする(気合い)。「好きだから買う」だけじゃなくて、「買ったから好きになる」の感覚にハマりだした2020年だった。
ブラッド・オレンジことデヴ・ハインズや、ミツキも参加している。去年ソロアルバムが最高だったロンドンのプロデューサーVegynがリミックスで携わっているのも良い。
2. Crack Cloud 『Pain Olympicsc』(Meat Machine)
ロンドンのポストパンク系のシーンがとにかく刺激的な昨今だが、カナダ・バンクーバーのシーンもすごい。Crack Cloud、そしてそのメンバーがやってるNOV3LやMILITARY GENIUSなど、とにかくその周辺のシーンにはずっと興奮させられている。Crack Cloudはバンドでありアートコレクティブ的な感じでもあり、ミュージックビデオのセンスがとんでもなくて、そっちにもかなり衝撃を受けた。ここまでアートをちゃんとやって、シーンがしっかりあって、ポップミュージックとしても成立させているなんて、カナダの文化先進国ぶりはどうなっているんだ。
1. Sorry 『925』(Domino)
コロナがなければ、この人たちのキャリアは全く違うものになっていたかなと想像してしまう。最高のシングルを連発したのち、大期待されまくってリリースされたロンドン若手の待望のファーストアルバム。レーベルはDomino。正直、もしかしたらArctic Monkeysとかそれくらいの存在になってアメリカや日本でも超人気になるんじゃないかと思ってたけど、リリース日が3月27日とコロナが一番大変な時に当たってしまった。ツアーもできず、残念ながらセールスも評価も爆発的な感じにならなかった。
でも僕の中ではやはり今年のベストはあまり迷わずこれでした。久々にロンドンを中心に、ギターバンドの盛り上がりに興奮していた今年だけど、彼らはShame以降のポストパンク系ともちょっと違うしサウンドも存在もとてもオリジナル。ダークな空気感とか、シーンと共鳴してるところはもちろんあるけれど、エモーションで押しきるのではなく、全ての曲のプロダクションが本当に緻密でクオリティが高いところが素晴らしい。このアルバムのリリースよりずっと前から彼らがBandcampに上げている宅録のデモ集とかもすごく聴いた。その頃から曲のアレンジやプロダクションがほぼ今の形で完成されていて驚愕する。Sorryは今の時代におけるギターバンドの音の更新している。まだ多分20歳くらいとかの彼らなので、次に超絶期待。
<番外編:リイシューアルバム・ベスト>
Cy Timmons 『The World’s Greatest Unknown』(Bright Size)
アトランタ出身のシンガーソングライターによる歌とギターのみの演奏による1974年の作品で、日本のBright Size Recordsによる2020年の再発盤。ソングライティングの素晴らしさと合わせて、クラシック・ギターの奏法にも衝撃を受ける。今後、歌とギターだけで聴かせる作品でこれを超えるものには出会えないのではないかとさえ思わせられる。
<番外編:編集盤・ベスト>
シャムキャッツ『大塚夏目藤村菅原』(TETRA / HMV)
日本のインディペンデント・バンドの希望だと思っていたシャムキャッツの解散は今年最も残念だったニュースの一つだけど、最後にベストアルバムという形で新譜のレコードを出してくれたのは良かった。ストリーミングで何度も聴いてる曲でも、レコードで聴くと泣けてしまうのはなぜだろう。
<番外編:ベスト・ライブパフォーマンス>
柴田聡子『柴田聡子のひとりぼっち'20』(東京公演、2020年12月5日)
柴田聡子による、ギターと歌のみでの2時間の弾き語り公演。弾き語りなのに2時間のうち一瞬も飽きる時間なし!弾き語りだからこそソングライティングの良さを再認識するし、バンドセットではそこまで分からなかった歌とギターの技術の高さが露わになって痺れる。個人的ハイライトは"ワンコロメーター"で、ワンコードのこの曲を、左手の形は固定したままひたすら右手のストロークの加速によって弾き語りで聴かせていく姿には誰もが心の中で拳を突き上げていたと思う。
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以上です。ちなみにベストのトップ30くらいは大体フィジカルも買っていると思う。ストリーミング時代だからこそ、新譜を買うのを楽しみにする感覚は楽しいです。
こうやってリストとして振り返ると、やっぱりイギリスがずっと面白かったし、自分の好みだなと思う。
来年も新しい音楽との出会いを楽しんでいきましょう!