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395位:D’Angelo and the Vanguard 『Black Messiah』(2014)|ローリングストーン誌が選ぶ「歴代最高のアルバム」500選(2020年改訂版)

 このnoteでは2020年に8年ぶりに改訂された「ローリングストーン誌が選ぶ「歴代最高のアルバム」500選 」の英語サイトからの解説文翻訳(とたまにレビュー)の連載をしています。本日はこちらのアルバムです。

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395位:D’Angelo and the Vanguard 『Black Messiah』(RCA, 2014)

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<解説文の翻訳>
 前作の『Voodoo』から14年が経過し、ディアンジェロの新作に向けられる世間からの期待値の高さは想像を絶するものであったが、『Black Messiah』はそれに十分に応える作品だった。彼は本作で“The Charade”を始めとするディープソウルのグルーヴに新しい形の政治的な怒りを持ち込み、Black Lives Matterへの反応を見せている。彼は同曲で「All we wanted was a chance to talk/Instead we only got outlined in chalk. (俺たちが望んでいたのは対話をするチャンスだけ。 / なのに代わりに俺たちはチョーク・アウトラインにされて来たんだ。)」と歌う。また“Really Love”の中では「“I’m not an easy man to overstand.”(俺のことは簡単には理解できない。)」と自らのことを評す一方で、ディアンジェロは本作でThe Rootsのドラマーのクエスト・ラヴやジャズトランペッターのロイ・ハーグローヴを始めとする同志たちとの素晴らしい融け合いを見せている。
(翻訳:Shu Tsujimoto、 原文へはこちらから)

<翻訳メモ>

・「get outlined in chalk」の意味
⇨ドラマなど、犯罪現場で見かける人の形をしたチョークの跡のことで、日本語では「チョーク・アウトライン」というそう。なお、ここでは「talk(対話)」と「chalk(殺害現場のチョーク)」で韻が踏まれています。解説文でBlack Lives Matterについての言及があることから分かる通り、白人警察官による黒人の殺害事件などを受けての歌詞で、下にYouTubeのリンクを貼ったSNLでの"The Charade"ライヴ映像のセットの演出でもこの「チョーク・アウトライン」が使われていることがわかります。

<ランキング比較>

参考として、「このアーティストのアルバムが500枚のリストに合計何枚ランクインしていたか」と「このアルバムの順位が前回版(2012年版)ランキングと比べてどう変わっているか」についても以下に調べてまとめています。

【2020年度版】
同アルバムの今回順位:395位
同アーティストのランクイン枚数:3枚(本作の他は、28位『Voodoo』、183位『Brown Sugar 』)

【2012年度版】(前回版)
同アルバムの順位:掲載なし
同アーティストのランクイン枚数:1(本作の他は、481位『Voodoo』)


<感想など>

 『Black Messiah』が大傑作であることは言うまでもないとして、2020年版では28位という非常に高い支持を受けている『Voodoo』が、2012年版では481位という評価だったことには驚愕した。このnoteを通じて名盤の順位変動については色々と見てきたが、ここまでの順位上昇を観測したのは初めてだ。
 結局のところ、何が「名盤」を規定しているのだろうかと考えさせられる。1つの作品が「名盤」と呼ばれ、その評価を確かなものにするまでには、どのような過程を辿るのだろう。もちろん「後世のシーンに与えた影響」はその最も大きい要素の一つであろうし、「作品のセールス」や「ジャンルのパイオニアであること」も重要な要素だ。でもこれについて、この『Voodoo』の件からは「新作が出ることで、そのアーティストの過去作の評価も塗り替わっていく」パターンがあることに、これは当たり前のことかもしれないけれど、改めて気付かされる。もちろん、『Voodoo』のこのランキング企画での順位が8年間でこうも急激に上がったのは、2012年から2020年にかけての音楽シーンや社会状況の様相の変化(ラップがチャートを席巻したこと、Black Lives Matter運動が広がったこと、etc...)、と何よりそれに呼応する批評サイドのスタンスの変化がその裏付けとして当然あるのだが、しかしここまでの大きな再評価に繋がったことの背景には『Black Messiah』の成功とディアンジェロのシーンへのカムバックがあったことは間違いなく外せない訳で。Rolling Stoneの解説にもある通り、14年ぶり、期待されまくった新作でバチッと大傑作を出すこと(ちなみにPitchforkは9.4をつけた)なんて、この人くらいにしか成し遂げ得ない偉業なのかもしれないけれど、これを読んでいる人でもしミュージシャンやアーティストの方がいるならば(それがどんなスケールであろうと)、「新作によって過去の作品の評価は塗り変わり得る」ということは一つ頭に入れておくことでどこかで希望になるのでは、と思ったりする。(もしくは世間からの評価なんてその程度のことだ、と言ってもいい。)


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