【第95回アカデミー賞】作品賞にノミネートされた10本をランク付けしてみた。【総評】
みなさん、こんにちは。
映画大好き20歳、トマトくんです。
先日、ようやく『ウーマン・トーキング 私たちの選択』を観てきましたので、今回は第95回アカデミー賞で作品賞にノミネートされた10本を「個人的なランキング」として発表していきたいと思います。
ノミネートされた作品は以下の10本です。
(順不同)
西部戦線異状なし
アバター:ウェイ・オブ・ウォーター
イニシェリン島の精霊
エルヴィス
エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
フェイブルマンズ
TAR ター
トップガン マーヴェリック
逆転のトライアングル
ウーマン・トーキング 私たちの選択
この中からランク付けしていきます。あと注意事項ですが、悪気はなくても下位の作品の感想は、どうしてもキツめの文章になっていたりします…。ご了承ください。
それでも頑張って感想を書いたので、
最後までよろしくお願いします。
前回
10位『エルヴィス』
ノミネート:作品賞・主演男優賞・撮影賞・編集賞・美術賞・衣装デザイン賞・メイキャップ&ヘアスタイリング賞・録音賞
エルヴィス・プレスリーの伝記映画!と見せかけて、彼とそのマネージャーによるお金を巡る憎悪の戦い。言葉を選ばずに言うと、質の悪い『アマデウス』みたいな映画でした。
序盤はテンポ良く、『ムーラン・ルージュ』を彷彿とさせるバズ・ラーマンらしい演出と音楽でノリノリになります。伝記映画らしからぬダイジェストのようなスピード感で、軽く、浅く…。これ最後までちゃんと持つのか?と思ったのも束の間、嫌な予感は見事的中。
そもそもこの映画が主に描きたかったのは、彼が人気になってからの金銭問題と、彼の死についてです。そこからがめちゃくちゃシリアスで、スローテンポ。最初の勢いはどこへ行ったのかと思ってしまうほど、グダグダ…ウジウジ…ダラダラ…。後半はずっと退屈で睡魔との戦いでした。
最後の最後にはファンが全部悪い。お前らがエルヴィスを殺した。みたいな締め方だったのも、めちゃくちゃ気に食わなかったですね。良かったのはオースティン・バトラーの演技だけでした。
9位『フェイブルマンズ』
ノミネート:作品賞・監督賞・主演女優賞・助演男優賞・脚本賞・美術賞・作曲賞
スティーヴン・スピルバーグの自伝的映画と聞いてワクワクしてたはずなのに、蓋を開けてみればあまりにもパーソナルな内容すぎて全然入り込めなかった作品です。
誰かのホームビデオの映画化のような感じで、特に劇的な展開もなく、いつ面白くなるんだろうと思いながら観てしまいました。映画なんて皆そういうものですが、いくらなんでもスピルバーグの自己満足感がすごかったです。
これ系の映画は『ROMA/ローマ』が完成されすぎているから、もう充分かもしれませんね。『ROMA/ローマ』はアルフォンソ・キュアロンの幼少期を描いた半自伝的な映画なのに、主人公はその家で働く家政婦で、徹底して第三者の視点から描かれていたのが素晴らしかったなと改めて思いました。
ってか、ミシェル・ウィリアムズ。主演女優賞じゃなくて助演女優賞でノミネートされてたから確実に受賞してたと思います。ああ、勿体ない。
8位『西部戦線異常なし』
受賞:作曲賞・撮影賞・美術賞・外国語映画賞/ノミネート:作品賞・脚色賞・メイキャップ&ヘアスタイリング賞・視覚効果賞・音響賞・
1930年に公開された同名映画の三度目のリメイク。第一次世界大戦に西部戦線へ送られた青年の話。
原作が元から素晴らしい反戦映画ではあったのですが、製作国がドイツになったことで更にその色味が増していて、そういう意味でも外国語映画賞の受賞は当たり前だと思いました。
また現代の技術によって塹壕戦の悲惨さや、戦争映画特有の臨場感・緊迫感は凄かったし、技術部門の総ナメも納得のクオリティできた。
ただ如何にも賞狙いの映画と言うか、様々な名作戦争映画から良いところだけを引き抜いてくっ付けたようなわざとらしさが好きになれなかったです。やはり既視感の多い映画は苦手です。
7位『TAR/ター』
ノミネート:作品賞・監督賞・主演女優賞・脚本賞・撮影賞・編集賞
世界最高峰の女性指揮者となったリディア・ターの栄枯盛衰。
うん、確かにすごい。すごい映画ではあると思います?工夫された映像には全く飽きないし、ケイト・ブランシェットの気迫と、ドッド・フィールドの演出力には頭が上がりませんでした。
ただ3時間かけてダラダラと描くほどの内容ではなかったなというのが本音です。描きたいテーマに対して、全てが回りくどすぎると感じました。
それに主人公が全く悪者に見えなくて、むしろ魅力的な人だなと感じてしまった。だからこそその後の展開が衝撃なんだろうけど、だとしてモヤモヤする。真実は分からないからなんとも言えない。このむず痒さはまんまとトッド・フィールドに踊らされてる気分でした。
ただここまで長時間の作品にするのなら、匂わせるだけでもいいのでもっと答えがほしかったです。最終的な感想も「ケイト・ブランシェット、よくこんな難しい役柄を演じれたな…」であり、結局は終始鬼のような形相のケイト・ブランシェットを浴び続けたい人向けの作品だと思いました。
6位『ウーマン・トーキング 私たちの選択』
受賞:脚色賞 /ノミネート:作品賞
実際に起こったレイプ事件を基に、女性たちが「村に残って男と戦う」か「村を出ていく」かの二択に迫られるという話。賞レースが始まる前は大本命とされていたが、蓋を開けてみれば2部門だけのノミネートに留まった作品です。
内容がヘビーすぎるのですが、みるみる引き込まれました。会話劇ではあるものの、会話のないシーンですら表情で物語る瞬間が多くてゾッとします。ハイレベルの演技バトル…。
基本的に顔のアップが多くて、映像面ではちょっと飽きそうになるのですが、だからこそ余計に引きの画が記憶にこびりついて良かったです。
題材が題材なだけに決して面白い映画だったとは言い難いけれど、素晴らしい映画であることには間違いないため、この順位に。脚色賞受賞は納得です。
5位『トップガン マーヴェリック』
受賞:録音賞 /ノミネート:作品賞・脚色賞・編集賞・視覚効果賞・主題歌賞
どちらかと言えば青春要素強めだった前作に比べて、今回はそれに加えて空中アクション増し増し。「続編」としてはほぼ非の打ち所がない完成度でした。
まあ面白いことには面白いのですが、1の記憶が曖昧な状態で挑んでしまったため、何回も「だれ?」「なんのこと?」「このシーンいる?」ってなってしまったのが悔やまれます。願書のくだりに関してもしつこいと思ってしまったのが個人的な反省点…。
アクションシーンはめちゃくちゃ良いけど、全体的に運頼りな展開で「フィクションだな〜」と思ってしまうこともしばしば。また先制攻撃を正当化するような内容だったのも、あまり好きにはなれませんでした…。
演出力100点のストーリー0点という感じ。日常パートは基本的に過去の『トップガン』に思い入れがないと楽しめないような作りでした。
4位『逆転のトライアングル』
ノミネート:作品賞・監督賞・脚本賞
リューベン・オストルドン監督の2作連続パルム・ドール受賞作。セレブたちを乗せた豪華客船が無人島に漂流したことで、全てのヒエラルキーがひっくり返る話。
第一印象は「なんなんだこの超汚いタイタニックは!」でした。とにかく汚も白(おもしろ)すぎる。現代社会への皮肉がたっぷり詰め込まれてて、世の中のありとあらゆるクソをかき集めたかのような内容になっていました。
パルム・ドール受賞までは想像できるのですが、よくこんな映画がオスカーにノミネートされたな…とびっくり。オスカーやるじゃねぇーか!な1作です。
あとこれは普通にネタバレなのですが、肝心なラストシーン。近くであれだけの大爆発があって、現地の人が誰一人として気付かないなんてことあるかな?と思ってしまいました。オチとしては面白いんですけどね。
3位『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』
受賞:視覚効果賞 /ノミネート:作品賞・美術賞・録音賞
前作『アバター』から13年の歳月を経て、公開された続編。3時間の長さながら、退屈する瞬間が一度もなくて、見事にパンドラの世界に溺れてしまいました。これはIMAX3Dで観たのも大きいと思います。
やってることは前作とほぼ同じなのに、家族が増えて、舞台が森から海へ変わったことで「映像美を楽しむ作品」としての魅力が倍増。
しかも、ジェームズ・キャメロンの集大成とも思えるような場面の連続で、まさに至高の映像体験でした。というか映画の域を超えていました。
エンターテインメントとしては、この年最高の映画のひとつだった言っても過言ではないです。
2位『イニシェリン島の精霊』
ノミネート:作品賞・監督賞・主演男優賞・助演男優賞(1)・助演男優賞(2)・助演女優賞・脚本賞・編集賞・作曲賞
内戦の勃発したアイルランドを舞台に、とある孤島で暮らす男は、突如親友に絶縁を告げられるという、地味な話かと思わせておいて、意外にも壮大な反戦映画。
マーティン・マクドナー監督の前作『スリー・ビルボード』以上に先が読めなくて、何度もその展開にあっと驚かされてしまったし、ずっとゲラゲラ笑いながら観てました。
自らを客観視できずに堕ちていくコリン・ファレル、意地を張って取り返しがつかなくなるブレンダン・グリーソン、頭はあるのに行き場のない妹 ケリー・コンドン。そして自分の間違いに気づいて変化を求めたバリー・コーガン。
それぞれのキャラクターが見事に立ちすぎている。マクドナーの人間観察力がやばいです。これでひとつも受賞がなかったのが悔やまれます。
また前作『スリー・ビルボード』が「娘を殺したレイプ犯は誰なのか」があまり重要ではなかったように、今回も「なぜ喧嘩しているのか」はそこまで重要じゃない。これがまた渋くて良いです。
そしてこれは深読みなのですが、『スリー・ビルボード』ではBLM運動やMeToo運動、Oscar So Whiteなどの人権問題に焦点を当てていたのに対して、イニシェリン島は「アイルランド独立戦争」(厳密にはその後の内戦)をおじさん同士の喧嘩に見立てて、間接的に「ロシアのウクライナ侵攻」を皮肉る内容だったのもめっちゃ良かったです。
マクドナーの演出もさらに巧くなってて、「これぞブラック・コメディの醍醐味だな」と感じました。また女性や障害者など昨今のマイノリティ問題を示唆したり、コロナ禍によって死や孤独が身近になった現代を風刺する内容も素晴らしかったです。
1位『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
受賞:作品賞・監督賞・脚本賞・主演女優賞・助演男優賞・助演女優賞(1)・編集賞/ ノミネート:助演女優賞(2)・衣装デザイン賞・作曲賞・歌曲賞
言わずもがな、本年度アカデミー賞にて作品賞含む最多7部門を受賞した大傑作。『欲望という名の電車』(1953年)『ネットワーク』(1976年)以来となる演技賞3部門を独占し、ミシェル・ヨーは史上初めて主演女優賞を受賞したアジア人俳優となりしま。おめでとうございます🎊🎉
SFモノでカンフーアクションという賞受けの難しそうな題材で、さらにはコメディやらホラーやらラブロマンスやら…。複数のジャンルを混ぜ合わせた内容。
マルチバースを移動するためには変なことをしなければならないという設定がとても上手くて、さらにはマルチバースを移動するたびに変わる衣装・アクションに大興奮。様々な世界線を覗くたびに、映画ってイマジネーションやアイデア次第でこんな面白くなるのかー!と驚かされました。
想像以上にド派手な展開の連続で、膨大な情報量に圧倒されて疲れそうにもなるけど、主人公と同じ境遇に立たされている(実はADHDの設定)と思えばすんなり呑み込めるのが凄いです。
後半は、並行して描かれる家族ドラマの方に引き込まれて、気づいたら大号泣させられます。訳も分からず涙が止まらなくて、本当に枯れちゃうかと思いました。
混沌とした世界の中で、崩壊寸前の家族と全ての人類を優しい愛で包み込む。今の時代を象徴するような物語だったと思う。
改めて、作品賞おめでとうございます🎊🎉
ということで、総評は以上となります。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は今年最も良かった映画だったので、総なめは納得でした。演技部門も技術部門も概ね満足。前年に比べて、とても楽しい授賞式でした。