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今更だけど、映画好きによるキングオブコント2023 個人的感想と採点。

後述の注意事項を必ず読んでください。

みなさん、こんにちは。映画と同じくらいお笑いが大好きなトマトくんです。

待ちに待ったキングオブコント!そう言えるようになったのもハナコが優勝したくらいからで、次第に注目度が高まっていき、今ではM-1と双璧をなす大会となりました。

キングオブコント審査員は昨年と同じく松本人志、飯塚悟志、小峠英二、秋山竜次、山内健司の5人が続投。

ファイナリストは蛙亭、カゲヤマ、サルゴリラ、ジグザグジギー、ゼンモンキー、ニッポンの社長、ファイヤーサンダー、や団、ラブレターズ、隣人(50音順)の10組。この中から今年最も面白いコントチャンピオンが誕生します。

ちなみに僕は事前に準決勝1日目のみオンライン配信で見ており、そのときの僕の優勝予想はゼンモンキーでした。その一方、願望ではニッポンの社長を。お笑い界隈ではカゲヤマが優勝するのではないか…と噂されている感覚でした。

ちなみに一般人が芸人のネタに対して点数を付けるなんてご法度なんですけど、あとから見返したときに当時の自分の感性を残しておきたいので、感想とともに点数もつけておきます。

なるべく上から目線にならないように、あくまで1人の観客としての見解を述べていきます。

そして、これが本記事の注意事項なのですが、今回キングオブコントの感想を丸1年投稿しなかったのには理由があります。それは一部のネタに対して、かなり厳しめに批判をしてしまっているからです。

別に書かなければいい話なのですが、どうしても文字にしてどこかに残しておかないと多分爆発してしまうので、去年のほとぼりが冷めた大体1年後の今、投稿しました。それを理解した上で読んでもらえると助かります。

ちなみに文章は去年書いた状態ままで投稿しているので、リアルタイムに読んでいるテイでお願いします。それでは早速、1組目のネタから行きます。


1組目 カゲヤマ『謝罪』 96点

自分の代わりに謝罪をしてくれた上司が、扉の向こうでなぜか全裸になって謝罪をしているというネタ。

準決勝で初めて見たとき、涙を流して、手を叩いて、猿みたいにキャッキャと笑ってしまった記憶があります。そのため「うわ、トップバッターでこのネタしてしまうのか…勿体ない…」と一瞬考えてしまったのですが、結果的に「トップバッターになんてものをぶち込んでくるんだ」というメタ的な裏切りになっていたのが良かったです。

そもそも上司が全裸で謝罪しているという設定を思いついた時点で勝ちと言うか、もうこんなの何しても面白いに決まってるやろ!という。

そして大声で「申し訳ございませんでした!」と叫び続けるのもキングオブコントの広い舞台ではめちゃくちゃ効果的だろうし、扉の向こうで謝罪しているだけというシンプルな構造のおかげで、「テーブルクロス引き」や「まゆゆの写真集」の突拍子もないボケが輝いて見えました。

歌ネタは歌が上手い方が絶対に面白いように、尻ネタもおしりが綺麗な方が絶対面白くて、赤ちゃんのようにスベスベのお尻だったのも高得点。その綺麗さも相まって、生放送で全裸というハラハラ感がいつの間にか「次は何が来るんだ…」というワクワクに変わる不思議な感覚に陥ってました。(R-1ぐらんぷりにおけるアキラ100%的な)。

土下座という概念は伝わならないかもしれないけれど、きっとこのネタは世界でも通用すると思います。少し下品だとしても、笑いの原点ってこういうのだよなと思わせてくれました。ちなみに正式なタイトルが『料亭』なのもめちゃくちゃ面白い。


2組目 ニッポンの社長『見送り』 95点

感想を書く前に予め伝えておくと、僕はニッポンの社長がこの世で一番ツボにハマる芸人です。4年前にキングオブコント決勝で披露したネタ『ケンタウロス』で息が出来なくなるくらい笑い、それから彼らの世界観に心を掴まれてしまいました。

もちろんこのネタも準決勝1日目で見たときに笑いすぎて、翌日お腹が筋肉痛になっています。それくらいツボなわけです。そして今回もそのときと同じネタをキングオブコントの決勝で披露したわけですが、相変わらず笑いすぎて死ぬかと思いましたね。

まず友達が「彼女が待ってるから空港に見送りに行けよ」と声をかけるよくある友情ドラマ的な設定。これ系のコントは、その友情をどう崩すかで笑いに繋がっていくわけですが、もうこの段階でニッポンの社長なら一捻り二捻りしてくることは予想できます。

そして何の前触れなく、いきなりケツをナイフで刺すという理不尽さ。それをケツが何も疑問に思わずに素手で立ち向かうというアホさ、なぜか無傷という奇天烈さ。そもそも彼女を見送りに行くだけなのに、なぜそんな凶器を沢山持っているのか。二人は一体何者なのか。この二人のバックボーンを考えるだけでもさらに面白さが増していきました。

繰り返し系のネタが連続で続いたので、若干カゲヤマと比較されてしまうのが勿体ないですが、それでもケツの発言、辻の行動、2人が織り成す狂気の全てに大爆笑。これは映画やドラマでは出来ない、コントじゃないと演じられないネタなのも好きです。

ゴールデンタイムであろうとバイオレンス的、スプラッター的な要素をお構いなく入れてくる。まるでギレルモ・デル・トロ的な思考。このホラーファンタジー的な路線こそニッポンの社長の真価であり、今年はこのネタを決勝で見れただけでもう大満足でした。


3組目 や団『稽古』88点

めちゃくちゃ怖くて、理不尽に怒り散らかす厳しい演出家のコント。かと思いきや、役者側にとんでもないサイコパスがいた…というネタ。

鬼演出家が少しづつ弱腰になっていく様は、捉え方によっては映画『セッション』のような復讐劇とも言えますね。(← は?)

正直、今年もや団に対するイメージは前年同様に「教科書的なコントをするトリオ」のまま変わらなかったのですが、大事な舞台で運によって面白さが左右するネタをぶち込んでくる勇気はスゴすぎて驚いてしまいました。

灰皿ひとつで面白さの全てが決まる。この灰皿が、普段どれくらい回転するかなんて知る由もないけれど、少なくとも僕的には100点だったと思います。

ただカゲヤマ、ニッポンの社長のあとにこのネタが来てしまったのが可哀想ですね。可哀想すぎます。たとえどんなにサイコパスな男を演出したとしても、「なぜか全裸で謝罪する男」と「刺しても撃っても死なない男」の後では弱く感じてしまいました。全てこれに尽きます。


4組目 蛙亭『寿司』 87点

彼氏に振られた女性と、その目の前で大好きなお寿司を潰してしまった男性のネタ。不幸アピールやマウントの取り合いなんてものは、傍から見たら馬鹿馬鹿しいことを風刺しているかのようなネタ。

蛙亭のコントも結構ツボで、ただ狂気じみているというわけではなく、人間の厭なところを突いてきたり、あえて不快な気持ちにさせてくる。しかしなぜか憎めなくて、嫌な気持ちにならない。それを笑いに昇華してしまう不思議なコント師という認識です。

そして今回はその全ての要素も兼ね備えているネタだったのに「彼氏に振られた女と寿司を潰した男」という、あの3組の後だとなかなかにインパクトの薄いコントになってしまった感がありましたね。

会話劇としてもめちゃくちゃ質の良いラリーをしており、すごくよく出来たコントだったのに、相対的に低くなってしまうのが勿体ないですね。

蛙亭は2人のヴィジュアルが、キャラクター的でアイコニックゆえに、コントの内容が現実に近ければ近いほどそのイメージと乖離してしまうので、もっと非現実的な路線の方が「蛙亭らしさ」を発揮できると思うし、会場の空気を変える力を持っている気がします。

決勝では披露されなかったけれど、準決勝一日目で披露したネタは、個人的に蛙亭の究極系だと思いました。来年に期待!


5組目 ジグザグジギー『市長』90点

元お笑い芸人だった新市長の記者会見でのフリップの出し方が完全に大喜利のそれだったというネタ。審査員に松っちゃんがいる大会で、よくこんなネタをできたな!という面白さもあってとても良かったです。

2013年の決勝で歌って踊るネタを披露し、水を打ったような静寂になり「デスダンス」と呼ばれた男たちが、こんなにキングオブコント向きのネタを作ってきたことにも感動すらしました。

ただ僕はあまりこのネタは肯定的じゃなくて、これは半分「モノマネ」半分「大喜利」の面白さであって、別にコントのみで起こせる笑いではないかな…というのを感じました。

「松本人志」という人間、「IPPONグランプリ」という大会、「大喜利」みたいに見えるというアイデアこそ良かったけれど、結局は段々松本人志に近づいていくという一辺倒なネタだったので、人の褌で相撲を取っている感が否めなくもなかったです。

そしてよくよく考えれば、これって別にピンでも出来るネタなんですよね。どうせ途中からナレーションが入ったり、周りの記者が大喜利に乗っかってくるなどの展開があるので余計に。それに、これならフィクションとリアリティの線引きが怪しくなってしまったのをもう少し上手く誘導できたんじゃないかなとも思ったりしました。

ちなみに一緒に見た友達は、ジグザグジギーが一番面白かったと言ってました。


6組目 ゼンモンキー『縁結び神社』91点

幼馴染の親友と彼女が浮気したことを知って神社に呼び出してたが、そこで邪魔が入るネタ。

個人的に、このネタを準決勝で見たとき「これは絶対優勝する…」と思ったネタ。インパクト重視の飛び道具的なネタが多いなかで、4分間で凄まじい構成力と展開力を兼ね備えた「勝ちに来たネタ」だと思いました。

そしてトリオでしかできないコントだし、なんなら萩野というキャラクターはゼンモンキーにしかない武器。真正面から自分たちの魅力をぶつけてくるその豪快さに胸を打たれました。

ただこれはもう他のコント師たちにも言えることなんですが、序盤にカゲヤマとニッポンの社長みたいな飛び道具系のコントが続いて、めちゃくちゃウケてしまった時点で今年はインパクト重視のおバカコントが求められている空気が出来上がっており、正統派なコントは全部負け確みたいなところがありましたね。来年に期待!


7組目 隣人『チンパンジー』89点

チンパンジーに落語を教え込むネタ。猿の鳴き声で落語を披露して、チンパンジーがそれに対して大爆笑するところがピークになりすぎた感がありましたね。

ヤケクソで適当に猿の鳴き真似したら、絶対に通じてないはずなのに大爆笑する。一体チンパンジーにはどんな風に聞こえていたのか…。その後も、こういう想像力の刺激を期待してしまいました。痒いところに手が届かない状態でした。

またGReeeeNの『キセキ』が流れるのも、曲に逃げてしまったようにも見えました。途中「どんな生活を送っていたらこんなコントが思いつくんだろう…」と考えてしまう余裕まで生まれてしまうほどでした。(これは褒め言葉です)。

結果的に音楽にもあまり意味がなく、感動的なシーンの演出と、チンパンジーがそれを歌うという裏切りのみに留まってしまって、時間の使い方の勿体なさだけ残りました。


8組目 ファイヤーサンダー『日本代表』92点

サッカー日本代表に西田が選出されなかったことで、モノマネ芸人の小西田が落ち込む(?)ネタ。

実はモノマネ芸人だったというバラシだけで終わってしまいそうな題材に、「他の選出のモノマネをやってみる」→「ワードを引き出す」という展開をつけることでドラマ性が倍増。

実際に現実でもありそうな哀愁があり、その哀愁によって感情移入することで緊張感も生まれ、最後には心が温まる要素もある。台本が完璧すぎて、まるで短編映画を観ているような気持ちになりました。

またモノマネ芸人たちのネーミングセンスや、「なんで日本代表より層厚いねん!」というようなワードセンスも素晴らしい。

まあファイヤーサンダーは、全てのネタのアベレージがめちゃくちゃ高いので、いつか絶対に優勝すると思っています。ってか彼らの面白さは優勝してもらわないと困ります。


9組目 サルゴリラ『マジック』86点

あぁ、優勝コンビのネタがハマらなかった自分が情けない。元ジューシーズというトリオでジャングルポケットやパンサーと切磋琢磨していた2人が、キングオブコントを優勝する。めちゃくちゃ嬉しいはずなのに、そのネタにハマれなかったことが悔しすぎる。

ただ、ハマれなかった理由はただひとつで、児玉(ルール)のマジックをする手が緊張でめちゃくちゃ震えていて、なんか見てるこっちまで一緒になってドキドキしちゃったんですよね。本当にただそれだけなんですよ。

なので、ネタに対しては割と肯定的なんです。だってほとんど椅子から動かずに、ただ変なものを見せ続けるというだけで、ここまで爆笑をかっ攫えるって普通に凄すぎませんか?

展開やひねりのある正統派なコントが続いたあとに、「予想通り」に「変なもの」が来るというしっかりフリとオチの効いた王道なコント。まあ悪く言ってしまうと、展開は読めるし、台本は粗いし、カゲヤマやニッ社に比べるとやっていることはかなり古臭くて古典的なんですけど…。たからこそ自分の好みとは少し合わなかった気もします。

そして、そこに出てくるものがとても馬鹿馬鹿しい。「靴下人参」とか「ペンチピーチ」とか小学生が思いつくようなセンスのものばかりでなんやねんそれ!っていう。いや、それが面白いのもわかってるんですけどね。どうしても冷めてしまいましたね。

そもそもマジックという題材ゆえに結果がどうなるのか簡単に予想出来てしまって、なかなか裏切ってもらえなかったんですよ。本来はその予想通りに馬鹿馬鹿しいことが起きるから面白いはずなんでしょうけど、どうしても好みと合わない。残念…。あとキングオブコントって苦労人に対して激甘ですよね。

まあでも2人の織り成すキャラクターが魅力的だったし、めちゃくちゃ愛嬌・哀愁があるのであんまりキツいことは書きなくないです。「午前中に区役所行って…」や「家庭に居場所がないんだ」などのワードも良い。ただ面白いだけじゃなくて、演技力や技術的な面でも最年長の凄みを感じさせられるというか。総合的に見れば素晴らしいネタだったと思います。


10組目 ラブレターズ『義母』84点

最後の組ということもあって、めちゃくちゃ疲れた状態だったので、この情報過多なコントはめっちゃ不利だったと思います。準決勝のときにも思ったんですけど、全体的にゴチャついてますよね。その混沌さが面白いんですけど、シンプルで馬鹿馬鹿しいネタがウケている大会で、ラストにこれは厳しかったですね。


ファイナルステージ

というわけで、ファイナルステージに残った3組は「サルゴリラ」「カゲヤマ」「ニッポンの社長」となりました。僕の好みは置いておいて、純粋なウケ量や技術面、アイデアでは納得の3組だと思います。

ちなみに僕が審査員だと「カゲヤマ」「ニッポンの社長」「ファイヤーサンダー」なので、今年は割とそのままに近かったです。

まあそんなことはどうでも良いや。最後の三組までしっかり感想と点数を書かせて頂きます。


1組目 ニッポンの社長『手術』 93点

このネタ死ぬほどツボです。これをキングオブコントでやろうと思う思考が怖すぎるし、とにかく意味がわからなくて最高です。手術で内蔵を出しすぎるのが面白いって感じるのはニッポンの社長らしい着眼点。まじで何を食べてどんな生活をしていたらこんな発想が思い浮かぶのか全く分からないです。

どんよりしてしまうような静かな雰囲気も堪らなくて、『海と毒薬』や『白い巨塔』のような緊張感があった。最後の最後に『モンスターファーム』のスエゾーみたいなエイリアンが出でくる謎にホラーっぽいところもツボです。あいつについて一切の説明がなく、変な後味で終わるのも素晴らしかったです。

始まる前に準備が間に合わず、一瞬だけ放送事故のような空気になったのが本当に勿体なかったです。


2組目 カゲヤマ『うんち』85点

一本目とはまた違った方向で馬鹿馬鹿しいですよね〜。内容はうんちの話なのに、めちゃくちゃしっかり練られたよくできたコントなのが余計に馬鹿馬鹿しさを増幅させていましたね。正直、1本目に比べるとインパクトが薄いし、求めていたカゲヤマではなかったのですが、これはこれで良かったです。


3組目 サルゴリラ『魚』 93点

1stステージの時点で2位のカゲヤマと13点差があり、もうこの段階でカゲヤマの優勝は確定していましたね。コントの善し悪しを置いておいて、番組としてはつまらない展開です。

感動的な場面でひたすら何かを魚に例えて興ざめさせるというシンプルにしょうもなく笑えるネタ。魚というチョイスが絶妙にしっくりこない。

こっちのネタは児嶋の緊張があまり伝わってこなかったので素直に笑えたし、赤羽のツッコミ(特に声のトーン)がいちいちツボでした。「青春という魚〜」辺りでしっかり大爆発を起こしているし、個人的には一本目より好きでした。準決勝1日目の配信でも見たはずなんですけど、なんかそのときより面白くなっていた気がします。

これはどうでもいい話なんですけど、ピクサー映画『ソウルフル・ワールド』で、主人公が尊敬するジャズアーティストが、まさに魚の例え話をするのですが、このネタのせいでそのシーンをもう真面目に見れなくなりました。


というわけで、全組終了しました。優勝はご存知の通り、サルゴリラが歴代最高得点の964点を記録しての優勝。前年のビスケットブラザーズの963点を1点上回りました。面白かったのは事実ですし、昔から頑張ってる苦労人ですし、あまり異議のない優勝だったと思います!おめでとうございます!

最後に僕の個人的採点表を載せておきます!
また次回お会いしましょう!👋


個人的採点表


96点 カゲヤマ『謝罪』
95点 ニッポンの社長『見送り』
93点 ニッポンの社長『手術』(2本目)
92点 ファイヤーサンダー『日本代表』
91点 ゼンモンキー『縁結び神社』
91点 サルゴリラ『魚』(2本目)
90点 ジグザグジギー『市長』
89点 隣人『チンパンジー』
88点 や団『稽古』
87点 蛙亭『寿司』
86点 サルゴリラ『マジック』
85点 カゲヤマ『うんち』(2本目)
84点 ラブレターズ『義母』

ちなみにこれはリアルタイムの採点です。今見返すと、サルゴリラやラブレターズはもう少し高くても良かったかも…とは思いますが、当時の自分の価値観を大切にしたくてそのままにしています。このnoteを最後まで読んでいただき、ありがとうございました! -完-


前回(キングオブコント2022)

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