とりあえず2度音程を
コール・ユーブンゲンという歌の教則本があります。
音大受験でよく使われますが、これは声楽専攻の学生だけが使う技術を高める専門の教本というよりも、もっと基礎的な、音程を正しく捉えることや、拍子とリズムの関係を理解することがメインなので、器楽で受験する学生も触れることが多い教則本です。
実際、今現在も受験生のレッスンで使っているのですが、その本の中盤あたりに、同じメロディを音符の位置を変えずにC dur、G dur、D durと調を変えて歌う課題があります。
こうした楽譜を正しく歌える力は本当に個人差があって、できる人は何が難しいのかわからないと思うし、全然できない人もいます。ちなみに僕は後者でした。もう30年も前の話ですけど、もうね、ソルフェージュ全般(聴音、視唱など)がホントに苦手で、やっぱり幼い時からピアノを習ったり音楽に触れる経験が皆無だったのが大きいと思いますが、こうしたところでいきなり苦労するんですよね。
何が難しいのかわからないというレベル高めの人たちは、音楽理論をすでに感覚的に捉える力を持っているのですが、そうではない人はとにかくチャレンジする姿勢が大切だと考えます。
最初はミスしたって、できなくたって構いません。どんどんやってどんどん特徴やコツをとらえて吸収する。ただし、その時に理論がないままだと本当にヤミクモに暗記するだけで、これでは応用が効かず、成長は望めません。
ここで言う理論というのはいわゆる「楽典」のことで、音楽の構造や楽譜のルールを学ぶという、これもまた音大受験では必須のお勉強です。先ほどの同じメロディで調を変えるというのは、要するに特定の音がシャープになったりそうでなかったりするということ。そしてそれによって主音(その調の中心になる音階の最初の音)の位置が変わるということ。
じゃあG durだったらどこに主音があって、どこが属音(音階の5番目の音)なのかをあらかじめ理解しておくことが大切です。
そして最も重要なのが半音(短2度)と全音(長2度)がそれぞれどこなのかを把握すること、歌い分けられることだと思います。音階が変わればそれらもすべて変わります。メロディを正しく、美しく歌うためには、まずは2度音程をいかに丁寧に正確に歌えるかがポイントだと考えます。
したがって、やはり日ごろから様々な種類の音階をたくさん歌ったり、弾いたり、吹いたりすることが大切で、音程感を身につけたい、安定した演奏をしたいのであれば、歌でもトランペットでも積極的にやるべき練習なのです。
トランペットだと、ある程度楽器が音を決めてくれるので音程感に対する意識が希薄になりがちですが、歌を練習することで自分の中に音程感がどれくらいあるのかを確認(痛感)すると思いますし、そこで正しい音程を歌おうと心がけることが結果的にトランペットの演奏にも良い影響を与えるわけです。
やっぱり声に出して歌う練習は大切だなと、受験生レッスンをしていると痛感します。僕も一緒に基礎を学び直しています。
荻原明(おぎわらあきら)