休職と彼のこと
彼はとても几帳面だ。
朝は苦手なのだろうか、いつもアラームのスヌーズを何度も設定しているが、そもそもが早起きなのでしょうがない。人によってはまだ昨日だと認識する時間に起きる。ベッドから這い上がった後はそそくさと洗面所に行き、キリンの首くらい長い時間歯を磨いた後、スーツだけがハンガーにかかっているクローゼットから今日着るスーツを選んで着替える。熱い珈琲を飲み、簡単に掃除をした後、鏡で最終チェックをして、ベッドにいる私に行ってきますと言う。前日の夜私がゴミ箱に捨てたゴミをみて、ゴミ箱にゴミが落ちている!と言いながら片づけるルーティンは見ていて愉快だ。
夜遅くまで働き、ジムとスーパーに寄ってから帰る。帰宅後は、靴の手入れをした後すぐにシャワー、野菜中心の自炊をして食事をした後に、その日一日かけて私が散らかした部屋を掃除してやっと休息するといった具合だ。
一方私はというと、もちろん彼を玄関まで見送るようなことはしない。昔はしていたような気がするが、最近は長めに持続する眠剤のせいか、朝がとにかくつらい。彼のいってきますの声で目覚めた後は(もちろん1回目のアラームで1度起こされてはいる)、次会うまでにバッテリー切れしない程度のスキンシップだけ要求し、さっさと二度寝に突中。昼くらいにようやく起きて、晴れならば散歩、雨なら絶対に外にでないと決め込んで読書をして過ごす。食べるのが面倒なのでそのまま夜になることが多い。夜、彼が作った食事を少し分けてもらう。このような自堕落な生活が可能なのは、現在休職中の身だからである。
私は、何の脈略もなく急に泣きわめくことがある。それには診断名がついているのだが、それはまた別の機会に語るとして、仕事帰りの疲れた体で、突然しにたいしにたいと泣きわめく女の相手をするのはさぞ骨が折れることだろう。実際、私が生き延びていられるのは彼の支えによるところが非常に大きい。
全身ふわふわの小動物でもないのに、彼は私にこのままでいいといい、ずっとここにいていいと言う。なんと器の大きい男だろうか。生物としての格の違いを思い知らされる。
私は、その言葉が「ずっとここにいてほしい」とは異なることを認識しているので、週の半分は自宅へ帰る。ただ、今のところ、彼の家にも、やはり帰ると表現するのが一番しっくりきている。最近は、彼と釣り堀に行き、カフェかスーパーに行った後、マーベル作品を見る(見させられる)ことが週末の定番となっている。