気候変動問題でチベットから世界への警告(予告篇)
スペインで開催された国連の気候変動枠組み条約締結国会議(COP25)には、ダラムサラのチベット亡命政府代表団も参加し、パネルディスカッションおよび記者会見が開催された。
ところが、チベット亡命政府代表団の存在感は非常に薄く、国際社会がチベット人たちの声に耳を傾ける気配は極めて乏しい。このことは、「残念ながら」で済ませられることではない。
チベット亡命政府代表団は、気候変動の問題で極めて重要な警告をしたというのに。
そもそも、COP25にダラムサラのチベット亡命政府代表団が参加していること自体が殆ど知られていない。これは実に由々しき問題だ。
ダライ・ラマ14世は以前から、ヒマラヤのあるチベット高原は北極と南極に続く第三極として、この地域の環境変化は地球全体の問題だと警告してきた。今回のCOP25では、ダラムサラの亡命政府研究センターによる最新報告がなされ、将来の展望について極めて危機的な予測が発表された。
ヒマラヤのあるチベット高原は、揚子江やメコン川やガンジス川といった大河の源泉である。そのヒマラヤの氷河が温暖化で溶けることは、その先の大河で大洪水を引き起こす恐れがあり、そして大洪水はもはや避けがたいシナリオとなっている。
のみならず、溶けた氷河は大河を通して海に流れ込み、海面の上昇を更に加速する。
今回COP25でチベット亡命政府代表団は、そのことで世界に警告を発したのだ。
ところが、世界各国のメディアはいったいこのことをどれだけ取り上げただろう? 中国共産党への「配慮」からか、あるいは中国共産党からの「報復」を恐れてか、インドの英字メディアをのぞけば、世界各国のメディアはCOP25におけるチベット亡命政府代表団を記事にすることに及び腰のようだ。
世界各国は、北極と南極の氷河が溶けて海面を上昇させることには関心を示しても、ヒマラヤの氷河が溶けて、揚子江やメコン川やガンジス川などを通して海に流れ込み、海面を上昇させることの深刻さには関心を示さない。
チベット亡命政府は、中国共産党の征服のもとでチベットの森林がどれだけ破壊的に伐採されたか、その危機的状況についても報告をしている。
森林の破滅的伐採のところへ、温暖化でヒマラヤの氷河が溶けて、大河を通して海に流れ込んだら? 実に恐ろしいシナリオが地球を待っている。
また、今回スペインでCOP25が開催するのとほぼ時を同じくして、ノーベル賞の授賞式も開催されているが、今年はダライ・ラマのノーベル平和賞受賞からちょうど30周年の節目にあたり、このことでも声明が出ている。
目下のところ、香港では持続的な抗議運動が展開され、これを鎮圧しようと香港の大学を強襲した香港警察の手法は、かつて人民解放軍がチベットの寺院を強襲したやり方を踏襲している。
今後チベットの重要性は益々高まるだろう。チベット亡命政府は、温暖化のことでも、人権のことでも、世界に対して極めて重要な警告を発しているのだ。
というわけで、私は次回のnoteレポートではこのチベットと気候変動の問題、及びチベット人権問題についてその詳細を取り上げ、皆様にお送りする。
つい先日、私は楊建利先生の講演レポート(付録付き)を発表したが、皆様には先ずこれをお読みいただき、そのうえでチベットレポートを読んでいただきたく、よろしくお願いしたい。