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デスボイス、フライスクリームの出し方 (エッジボイス+裏声で出来ない方向け)サンプル音声+音声診断1回付き

まず最初に一つ質問ですが、

エッジボイスを練習してデスボイスが出せるようになりましたか?

今まで見てきた中で、エッジボイスを練習してフライスクリームが出せるようになった人はごく僅かです。その中でも先天的に高音域に強い方が多い傾向にあります。
フォールスコードスクリームに比べ、声帯の物的な質量に左右されやすい発声であると感じています。
高めの音域をお持ちの方は元より声帯の圧縮に必要な労力が小さいのでフライスクリーム発声において非常に有利になります。
逆に音域が低めの方、(バリトン〜バス)付近の方はフライスクリーム発声においては難関が多い印象です。質量の側面では声帯の圧縮に必要な労力が多い事、その際の筋群のバランスの調整に難儀するケースが多かったためです。

それによりボーカルフライに裏声を混ぜるという練習方法では練習初期に過剰閉鎖や、外喉頭の不要な圧力に繋がりやすく、異なった方法で練習する必要がありました。

ミックスボイスから”閉鎖を強くする”といった言葉も一人歩きしている気がします。

大切なのはどの発声を基準に閉鎖が強くなっているのかだと考えています。出来ないパターンは脱力が不十分だったり、呼吸法の練習不足だったり、閉鎖過多、圧縮過多、PCA過多、など多岐にわたります。
何故そうなってしまうか考えると明確な基準が無いからだと思います。
(個々の声帯の形状、感覚に違いがある中で、発声を教える際は内容の性質上主観的になりやすいため)

当noteでは主にエッジボイス+裏声という方法でフライスクリームの習得が難しかった方に向けて、実際に効果を検証できた方法をまとめていき、どなたでも習得できるようなカリキュラムのまとめを目指します。
筆者はボイストレーニングのレッスンを行っています。
そこで得たフィードバックも交えつつ、今後も更新していく予定です。


練習におけるリスクについて

※この手の発声でありがちな喉へのダメージについては、基本的に正しく発声した場合には問題を及ぼすものではないと判断しています。
参考文献:Extreme Vocalsーラフボーカルエフェクトを歌唱及び指導するプロ歌手20人の声の健康に関する後ろ向き縦断研究

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35667986/より引用


内容は下記になります。日本語訳(注)
背景:意図的に荒い声やラフに聞こえるためのラフなボーカルエフェクト、極端な、または拡張されたボーカルテクニックは、多くのジャンルやスタイルの不可欠な部分であり、研究は最近、そのような音を生成するための声門上狭窄と振動の関与を実証しています。大まかなボーカル効果を持つ歌のボーカルの健康は、特に縦方向の方法で十分に文書化されていませんが、多くのボーカル教育学は、ボーカルメカニズムに害を及ぼす、または危険な音を継続的に扱います。

目的:歌と教育の一環として、5つの荒い響きのボーカル効果Distortion、Growl、Grunt、Rattle、Cryingを実行するプロの歌手のボーカルヘルスを縦断的に調査する。

方法:20人の歌手が鼻内視鏡検査を受け、SVHIアンケートに記入し、レトロスペクティブ縦断的研究(2007年から2021年まで)で14年間隔でGRBASによって評価された。内視鏡材料は、逆流検出スコアとストロボスコープ評価尺度のハイブリッドバージョンによって評価されました。

結果:歌手は研究開始時に平均SVHI9.2(±9)で発表し、14年後のフォローアップ時に平均5.12(±6)に減少しました。喉頭評価(RFSとSRS)は、研究の開始時と研究の終了時に低い平均を明らかにし、平均のわずかな変動のみで、主にアリテノイドの非対称性に関連する調査結果が得られた。

結論:参加歌手は、継続的にラフなボーカル効果を演奏し、教え、健康な喉頭メカニズムと通常のSVHIとGRBASスコアを提示します。この調査結果は、制御された声門上狭窄と、追加のノイズ源として声門構造が振動に従事することを可能にする技術は、正しいボーカル技術で実行されれば、持続可能で健康的な方法で実行できることを示唆しています。

こちらの文献によると、
”正しく発声することが可能であれば”ダメージを避け、安全な技術として使用できると言及しています。

よって練習初期段階で喉を痛めやすい発声を避けてトレーニングを実行し、違和感や痛みを感じた場合は即座に練習を停止し、
休養を取ることを推奨します。

それでは長いですが目次になります。


この講座は、
✓喉を傷めにくいデスボイスを出したい方
✓エッジボイスでフライスクリームの練習をしているがうまくいかない方
✓ライブやカラオケなどでカッコ良く叫びたい方
✓色々な練習を試したけど正しいやり方がわからない方(エッジボイス等)
✓ボイトレに通っているけどなかなか上達しない方
に向け、作成したnoteになります。

下記のような方には、本記事はおすすめできません。
✓理屈よりもがむしゃらに練習したい方
✓技法よりも大声で叫ぶサウンドを求める方

当講座は、感覚に基づく指導ではなく、検証に基づいたメディアでありたいと考えております。

何かご質問等がございましたら、遠慮なくTwitterよりダイレクトメッセージもしくはリプライをお願いします。

音声付きの場合、より的確なアドバイスが可能です。
お寄せいただいたご質問を元に、随時サンプル音声動画の追加や加筆を行っていく予定です。

0 はじめに

まずお伝えしたいことは、
「フライスクリーミングは、純粋なるボーカルフライを発声した状態からは作り出せない」ということです。

ボーカルフライとは所謂エッジボイスと呼ばれているものです。
名称は異なりますが発声として差異は無く、
両者ともに色々な定義がされていますが、ここでは純粋なるボーカルフライを脱力した声帯を不規則に振動させた声として解釈しています。

声帯を完全に閉鎖させた声、濁点のような歪んだ声、などいろいろな定義のされ方をしていますが、
閉鎖の定義自体が異なる場合が多いので、
ここでは裏声を除く実声の発声時よりも声帯の圧縮度が弱い状態かつ、
呼気の圧力も実声より弱い状態をボーカルフライとします。


https://youtube.com/shorts/rraA4chjcws?si=WlTJ-1CGOhGJOR28

こちらの動画のような音を当講座ではボーカルフライとして扱っています。主に振動している部分が声帯で、その周囲を披裂部と呼びます。
喉頭スコープで確認したところ、(喉頭の後方に存在する披裂軟骨付近)、所謂デスボイス発声時と比較して、披裂部周辺の内転及び収縮が少ない状態でした。

ボーカルフライを出している状態というのは、当たり前ですがボーカルフライを発声している状態です。
ボーカルフライを発声する際の呼気圧の適正値は、声帯のポジションによって決まっており、実声の発声時よりも低く設定されています。

つまり、この状態をどうこうしても、ボーカルフライが多少変化するだけです。
"フライスクリームを発声する為に必要な呼気圧をノイズに変換できるほどのエネルギー許容度が足りてない状態"
と考えてください。

フライスクリームの音量は基本的に呼気の強さに比例します。

ちなみに裏声(声帯を開いた声)を混ぜようとすると先ほど声帯を開こうとする力が加わるため、先程述べた"エネルギー許容度"が低下すると考えています。
裏声ではなく、純粋に声帯を伸展させ、声帯を強力な呼気圧を捌けるような状態に持っていくのがフライスクリームを作る上で必要になってきます。

必ずしも大声である必要はありませんが、呼気圧をノイズに変換させる効率が悪い発声は、喉に不要なくびれを作り、喉を傷める可能性が高まりますし、音質も良くない場合が多いです。
なので、音量が通常の実声より大幅に小さい場合は発声の修正が必要と考えるべきでしょう。

呼気圧をノイズに変換させる効率を高める為に前提条件として
高音域、または裏声やヘッドボイスの発声で活発になる筋肉の一部作用を減らす必要があります。
これについてはPCAの項にて後述しています。

前置きが長くなりましたが、

ボーカルフライを発声している状態は音声的にフライスクリームと近い側面もあるが、声帯周辺部位の動きの強度という側面で見た場合は異なる発声というのが筆者の見解です。

ご参考までに、こちらの音源をお聴きください。

https://www.youtube.com/shorts/hSARetLD3Q4

この動画の前半はフライスクリームのもとになる音を示し、後半はボーカルフライ(エッジボイス)を指します。
一般的にボーカルフライとは、声帯のきしみ音を指すものです。
このようにリラックスしている状態なので、高い呼気圧をノイズに変換する力はありません。呼気圧の上昇に従い、実声に変化していくのがわかると思います。

経験上、ボーカルフライを発声した状態からフライスクリームへと移行するのは基本的に困難です。


喉頭スコープの検査にて、エッジボイスからフライスクリームへの変化を観察してきましたが、基本的に異なる発声と言ってよいでしょう。

※フライスクリームが発声出来る場合はエッジボイスから喉頭のポジションを即座に変化させる事も可能ですが、その逆は難しいです。

なのでまずは先ほどの動画で最初に出していた音を
ボーカルフライから生成しているわけではない」と覚えてください。

ボーカルフライとフライスクリームのノイズは、感覚的に異なる点に注意してください。
フライスクリームのノイズは呼気を音量に変換する効率が良く、音質が大きく異なります。

本記事では、「先述のフライスクリームの元となる音」を

「フライノイズ」

と定義しています。

こちらはフライスクリームの基礎的な要素の一つであり、
フライノイズが正しく発声できていない場合は、中音域が出なかったり、音量が足りなかったり、または不要なくびれを作り、喉に負担をかけるような問題を抱えていることがあります。

これらの点に留意し、よく知られる誤解に陥らずに、正しい音声制御を心掛けてください。

歪みを作る場所を正しく理解することでこのようなパターンを避けることができます。

YouTubeでチュートリアルを乗せてる人はエッジボイスに裏声を混ぜてフライスクリームを作ると言っていることが多いですが、

能動的に実声の発声を主軸にした声帯閉鎖しているのか、周辺部位の圧縮による副次的な効果により声帯が閉鎖されているのか

というのが重視すべきポイントになります。
わかりづらい表現で申し訳ない限りですが、一概に”声帯の閉鎖”と称するものはミックスボイス等の声帯閉鎖と混同しやすいからです。

音量の必要なフライスクリーム発声は声帯閉鎖に加え、先述した披裂部の圧縮状態が必須になります。

こちらの動画はそれを検証したものです。
このように圧縮状態を得ないエッジボイスの状態から音量を上げるのは非常に困難だという事を覚えておいてください。

それでは本題に移ります。
こちらの動画はフライスクリームを発声している人の喉です。
あるものに注目して下さい。

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