好きなヒト・コト・モノを追いかけていたら、本屋さんを始めることになっちゃった話
突然ですが、この度、神保町にて本屋さんを始めることになりました。
「PASSAGE」というすずらん通りに面した共同書店の3階に新しくできた支店「 PASSAGE bis!」にて、一棚の棚主になります。
まさか、今世で自分が本屋をやるだなんて、想像もしていませんでした。
なのに、どうしてそうなっちゃったか、という話。
フランス文学者・鹿島茂さんの本との出会い
2021年の夏、渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催されていた写真展「マン・レイと女性たち(Man Ray and the Woman)」を見に行きました。
常日頃から美術展に通うタイプではないのですが、なぜか私は1920年代のパリがとても好きで、まさにこの時代に文化の中心に身を置き、周囲の人たちを撮っていた芸術家マン・レイの写真、ということで、これは行かねばと思って行ったのだと思います。
あと、女性の在り方とか、そんなものにも関心を持っていた頃だったかもしれません。
大いに堪能して帰る前に立ち寄ったミュージアムショップの中で、今につながる本との出会いがありました。
その名も「最強の女」。副題は、「ニーチェ、サン=テグジュペリ、ダリ・・・天才たちを虜にした5人の女神(ミューズ)」
金色の文字の装丁と3㎝はあると思われる分厚さで、かなりの存在感を放っており、思わず手に取ってしまいました。
しかも、私自身が、ちょうどニーチェの面白さを知り始めた頃。
目次を見たら、ちょうど写真展で見てきた女性たちが題材になっている。
彼女たちの人生にも興味があったのと、ここで買わなければもうこの本には出会えないような気がして買うことにしました。
そしたら、これが、本当に面白かった。
読むのを止められないくらい、面白かった。
読み進めるたびに、「え〜〜〜?」と何度も声を出してしまいました。
いや、ほんと、何でもありですね、と圧倒されるところもあれば、もうよくわからなくて笑ってしまうところもありました。
そして、私の好奇心は、著者に向きました。
人間の抱える複雑さや矛盾を、ここまでキレのある言葉と文体でテンポよく言い抜いて、さらにシニカルさやユーモアが小気味いい。
しかも、こんなにも女の心情がわかるなんて。
それを男性が書いているからますます面白い。
この方はどなた?と。
それが鹿島茂さんとの(この時はまだ会えていないけれど)最初の出会いでした。
追っかけ
鹿島さんの文体は中毒性があるのではないかと思うのですが、この方の本をもっと読んでみたくなって、続いて「悪女入門」を読了。
実家に行った時に、「鹿島さんの本にハマってる」と父に話したところ、なんと、「あの人面白いよね」と、父の本棚から数冊出てきました。これにはかなり驚きました。
それらももちろん借りて読みました。「セーラー服とエッフェル塔」「神田村通信」
本だけでは飽き足らず、ウェブ上でいろいろ見ていたら、ALL REVIEWSという書評の取り組みや、そのALL REVIEWSで始めた共同書店PASSAGEの情報が目に入ってきました。もはや追っかけ状態。
PASSAGEというお店を始めるらしい。
それは私の大好きな神保町でやるらしい。
そんなお店が開けるような場所ってあったっけ?
クラウドファンディングに応じたら、返礼で鹿島さんによる神保町案内ツアーに参加できるらしい!
これは、行きたい!!!
ということで、2022年1月にクラウドファンディングに参加して、5月には、鹿島さん直々に神保町をご案内いただくことができました。
いつも行っている神保町に、私の知らない世界がありました。
大量に本を購入する鹿島さんに「買った本って全部読んでるんですか?」と無邪気に聞いて、「そんなわけないでしょ」と一蹴されたのは、とても愉快な経験でした。笑。
その後も、日比谷図書館で開催されていた「特別展鹿島茂コレクション2『稀書探訪』の旅 | 」を見に行ったり、
さらには、荒俣宏さんとの対談「天使はほほえみ、悪魔はささやく/終わりのない古書探しの旅 II」を拝聴してきました。
荒俣さんのお話はこれまで聴いたことがなかったですが、鹿島さんを追いかけていたおかげで、荒俣さんの魅力も知ることができました。2人とも相当にディープで変わっています。もちろん良い意味で。
そしてPASSAGEは2022年3月1日にオープン。
その後は、ただの一人の書店のファンとして時々お店に行っていました。
ふと、思いたつ
転換点は、今年初めのポッドキャスト収録だったと思います。
「独立後のリアル」という番組を、毎週、先輩コーチであり仕事仲間でもあるはっしーと2人で収録して、金曜21時に配信しています。こちらはもうすぐ3周年になります。
新年1本目の収録で「今年も何か新しいことしたいよね」という話をした帰り道、
「あ、PASSAGEに棚を持つのもありか・・・」というアイディアがふっと降りてきました。
1年前にPASSAGEができた時も、この考えはないわけではなかった。
でも、その時は、あまり具体的なビジョンが湧いてこなかった。
でも、世の中も、自分も、刻一刻と変わってる。
この1年の間にはこんなことが起きてました。
私は、人気ポッドキャストクリエイターのTOCINMASH(トッキンマッシュ)のSHIBUちゃんたちが始めた東中野の「雑談」という、ポッドキャスターとリスナーが集まるクラフトビールバーに出入りするようになって、「文化が生まれつつある場所」に当事者として居ることの面白味を感じるようになっていて。
一方、PASSAGEでは3階のPASSAGE bis!にコーヒーやアルコールが飲めるラウンジが開設されて。
何ができるかわからないけど、何かここでできるんじゃないか、という好奇心も湧いてきたりして。
棚主になると、1日店長などもできることも知って、本屋の店員さんが経験できるって面白そうだな、とか、
売れるか売れないかは関係なく、棚を持つことで何か始まることや生まれることもあるのかもしれない、とも思い始め、、、
まさに、PASSAGEのコンセプト「なら、自分で本屋になっちゃえばいいじゃん!」という鹿島さんの言葉が、ようやく自分ゴトとして聴こえてきた気がしました。
棚主募集〜抽選会
ということで、棚主に興味を持ってウェブで空き状況を見ても、もう空いてない。
一瞬空きができたように見えた時も、次に見るともう空いてない。
1年前の開店当初は、まだ棚主の方が少なくて絶賛大募集中だったので、その頃に今の発想に至っていなかった自分を悔いたりもしました。
これは一体どうしたら棚主になれるんだろうか、と思っていたところに、新しい情報を目にします。
3階のPASSAGE bis!にも棚を設置して、ラウンジ併設の本屋にすると。
この機会なら私にもチャンスがあるかもしれない。
そんなわけで、3月のPASSAGE bis!の第一次棚主募集に応募して、抽選を経て、棚を一つ確保できることになりました。
(なお、現在も、bisはまだ空きの棚はあって先着順で受け付けているようです。)
応募前には下見に行ったり、棚主の仕組みを聞きに行ったりもしました。
どこでも比較的のこのこと出かけていく私ですが、これはとっても勇気が要りました。
全く未経験な分野では、とってもawayに感じて気後れしてしまうものですね。
その弱気に負けずに、行ってみてよかったです。
正直なところ、1階のPASSAGEは人の出入りも多いのに対して、 bis!はエレベーターに乗らないと行けない場所なので、一体どれほどの人たちが訪れてくれるかな、というところです。
まだbis!自体の運営も手探りな感じもあります。
なのですが、何かをやるなら、まだ海のものとも山のものともわからない状況から関わっておくと面白い、というのが私が独立してから最も感じていること。
お店がどうなっていくのかはわからない中だからこそ、ここを一緒につくっていく、くらいのつもりでやってみようかなと思いました。
書店案内
ということで、「ここみち書店」開店です。
棚には全てフランスの通りの名前がついていて、私の棚はトゥールーズ・ロートレック通り5番地です。
名前は、2014年からマイペースに続けているブログ「ここみち読書録」から取りました。
ふと目に止まった本や、人からおすすめされた本を、ジャンル関係なく脈絡なく読んでいて、その感想や覚えておきたいことを書き留めているので、
「心の向くまま、導かれるまま出会った本の読書録」。
で、「ここみち」読書録です。
その他、棚に込めた思いなど、こちらの棚主紹介ページをご参照ください。
ここみち書店があるPASSAGE bis! は、PASSAGEと同じ建物の3階にあります。
一度PASSAGEの外に出ていただいて、お店に向かって右側にあるエレベーターで3階に上がってください。
ラウンジでは、神保町のカフェ・眞踏珈琲店のコーヒーや、マリアージュ・フレールの紅茶などをお楽しみいただけます。
本を仕入れるのも安くはなく、今のところ、どう見積もっても赤字しか見えないのですが(笑)、
せっかくの人生、大好きな街で、大好きな人のお店で、大好きな本だけを置くという贅沢もいいじゃないか、
といいますか、このせっかくの機会を逃したら、きっと後悔してしまうだろうということで、まずはやってみようと思います。
PASSAGE自体が素敵な空間ですので、覗いてみていただければと思います。
そしてそして、来たる4月15日(土)12:00〜19:00に1日店長をさせていただく予定です。初・本屋さん体験!
(私の本棚は3階ですが)1階でレジを担当している予定です。
ぜひ遊びに来てください!
<2023/4/7追記>
本日配信のポッドキャスト「独立後のリアル」でも、このことについて話しました。
#155 何者でもない人になる "銀行辞めてコーチになって本屋始めました”
<2023/7/5追記>
PASSAGE内のカフェで、イベントを行います。
書店に興味がある方、店主の本業であるコーチングに興味がある方、ぜひ来てください!
7/19(水)19時15分〜20時45分 「コーチングって何ですか?」@PASSAGEbis!
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ここみち読書録
ポッドキャスト・独立後のリアル
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