華氏451度 新訳版
著者:レイブラッドベリ 伊藤典夫訳
出版社:ハヤカワ
初版:1953年 新訳版は2014年
あらすじ
本が忌むべき禁制品となった未来を舞台に、焚書を生業とする昇火士モンターグを主人公として描くディストピア小説。本に出会ったモンターグはやがてシステムに疑問を抱き、監視社会からの逃亡を計画する。
印象に残ったセンテンスなど
作中では当然だが、妻はすっかりエンタメの虜になっており詩を理解しなかった。
上司が社会構造においてややメタ的な説教をするシーン。
終盤で旅の一行と合流したあと、慰めに詩の知識を披露し合うシーン。
巻末の解説など
訳者あとがき: 焚書は日本以外では身近なトピックとして扱われている。レイブラッドベリは当時のマッカーシズムが持つ反知性主義に怒り、この作品を作ったのではないか。
感想
主人公が何も考えられない子供のような状態から、偶然による本との出会いによって知性を獲得(奪還?)し最終的には読んだことのある詩を使って自らを奮い立たせるにまで変化していく。
知識人が蔑まれるまでに変貌した世界で、自ら少数派に向かっていく主人公に胸が熱くなる。
知識を愚直に渇望する愛おしさがある。