悪いものが来ませんように

著者:芦沢央
出版社:角川
初版:2013年

あらすじ

子供ができないことに悩む紗英、親しい奈津子がメインに進むサスペンス。紗英の夫が殺害されたことが公となり取材に答える関係者証言が挟まれていく構成のため、読者は何が起きたのかをなんとなくは分かり、しかし核心には届かないといった距離感で読み進めていく。

印象に残ったセンテンスなど

全体を通した悪意ある(リアリティある)母子の表現。

巻末の解説など

藤田香織:どんでん返しのトリックに触れ、全体の流れを再び解説。紗英の抱く複雑なコンプレックス描写と、ラストシーンでの開放について述べる。

感想

本作はどんでん返しをフックにした小説であり、私も予想することができなかった。内容としては一貫して陰鬱であり、その雰囲気は語り手が犯罪に加担している焦燥感・おぞましいほどリアルに描かれる母子の屈折と周囲の偏見にある。章が変わるごとに事件発覚後の取材記事が挿入されるのだが、インタビュー文字起こしは現実的な悪意や嘲笑をそのまま伝えてくるため、実際であろう本文との乖離は紗英と奈津子への憐憫を呼び起こす。

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