刺青・秘密
著者:谷崎潤一郎
出版社:新潮
初版:1969年
あらすじ
刺青の名士”清吉”には理想の女があって、それを下地に彫ることを長年の夢としていた。(刺青)
幼い時代、ひょんなことから良家の息子と仲良くなった私は彼の粗暴な裏面に惹かれる。(少年)
天性の道化でお座敷の太鼓持ちをする男の物語(幇間)
不思議な夢の中の風景に恋する男は女装して街を歩くことによる秘密の保持に熱中していた。ある時、昔捨てた女と再開するが彼女は素晴らしい魅力を纏っていた(秘密)
自身には芸術の天才があると信じながらも貧しい生まれに起因するであろう最悪の人格を持ち合わせ、あらゆる他者と摩擦しながら放蕩する男の物語(異端者の悲しみ)
生まれた時から俗世と隔離され寺で過ごした美少年2人。ある時年上の稚児が世間を見学するため町に降りてしまう(二人の稚児)
幼い少年が母の姿を求めて夜の田舎を歩き続ける情景(母を恋うる記)
印象に残ったセンテンスなど
全体を通して理想の女という概念やその周囲のフェティッシュ、マゾヒズムの描写が多かった。
巻末の解説など
河盛好蔵:各話の書かれた背景やその繋がりを解説。異端者の悲しみのラストで登場した文学作品が刺青。刺青自体は谷崎のデビュー作。母を恋うる記は母を亡くした後、父の病床に付き添いながら執筆。
感想
とてもいやらしいモチーフを美しい文章で描いている。少年において私が受ける折檻の描写がいい。