失はれる物語

著者:乙一
出版社:角川
初版:2006年

あらすじ

時間軸のずれた世界に電話を掛けられる力を得た私はある青年と知り合って友達になる(Calling You)。
事故で全身の感覚を失った私は外界との意思疎通ができなくなってしまった。ベッドの上でわかるのは右腕の皮膚感覚のみ、外に伝えられるのは指のわずかな震えだけ。妻はその右腕を鍵盤に見立てピアノを演奏する(失はれる物語)。
ケガを人から人に移す能力を持った優しく美しい少年と、問題児の僕の物語(傷)。
金策に窮した時計作家の私は旅館の壁に穴を開け、宝石を盗もうとする。しかし手を入れた先には知らない少女が居り、発覚を恐れる私は少女と手を握って交渉を始める(手を握る泥棒の物語)。
暗く鬱っぽい大学生の僕が引っ越した先には猫が住み着いていた。猫は何もない場所にすり寄ったり見つめたりしていたが、そのうちに家が勝手に掃除されていたりすることに気づく(しあわせは子猫のかたち)。
しゃべるブリーフ(ボクの賢いパンツくん)。
その美貌をつかって男を弄ぶ鳴海マリア。彼女はあるとき列車にはねられバラバラになってしまう。唯一見つからなかった指を探して彼女の友人たちは各々の目的のために奔走する(マリアの指)。
嘘の彼女を作り上げて自慢話をする僕と友人(ウソカノ)。

印象に残ったセンテンスなど

傷:少年同士の友情が美しい。
しあわせは子猫のかたち:温かい生活の描写

巻末の解説など

なし。あとがきに代えてウソカノ書き下ろし。

感想

たくさんの短編が集まっており、それでいてすべてが傑作。一貫してあたたかな物語が多い。

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