虐殺器官
著者:伊藤計劃
出版社:ハヤカワ
初版:2007年
あらすじ
近未来、先進諸国では徹底的な管理によってテロを一掃したが後進諸国で内戦や大規模虐殺が急増していた。主人公である米軍大尉クラヴィスシェパードはそれらの陰で暗躍するジョンポールを追う任務に就く。一体ジョンポールの目的はなんなのか、どうやって大虐殺を引き起こしているのか。近未来SF。
印象に残ったセンテンスなど
SFのミリタリー系を初めて読んだ。人工筋肉や感情鈍麻薬などダークなリアリティを詰めて描かれる近未来技術は魅力的だった。
巻末の解説など
大森望:本作品は世界水準の傑作として評価されている。表題の荒々しさに比べて、内容は非常に繊細。近未来sfを使って現在の問題を描くのはよくあることだが、この繊細さが本作品のユニークさを形作る。
感想
主人公が世界中を飛び回りながら謎の男を追う構成でワクワクした。時系列的にも大きなスケールで描かれる様子は、ジョンポールから逃れられないという恐怖感をもたらす。核心となる虐殺器官の発想は到底思いつかないものだが、その妙に整った作中の論理には説得力があった。